YouTube人気により、ここ1年ほどで一気に市民権を得た動画投稿サイト。一方でYouTubeには、市販のDVDや放映直後のテレビ番組、映画などが権利者に無断で多数投稿され、各国の権利者団体などから批判や訴訟を受けている。最大手の無法ぶりからグレーなイメージが染みついてしまった動画投稿サイトだが、権利者団体と二人三脚で法を重んじる動画投稿サイトを立ち上げる動きがある。仕掛けているのはヤフーだ。

JASRACのお墨付き

 ヤフーが6月25日に本格オープンさせた動画投稿サイト「Yahoo!ビデオキャスト」には、アマチュアバンドのライブやピアノの発表会、野球の応援歌の合唱など、楽曲を含んだ動画が投稿されている。実はこれらの動画、すべて日本音楽著作権協会(JASRAC)の“お墨付き”だ。

 一般に、インターネット上で他人の楽曲を利用する際は、権利者またはJASRACなどの許諾が必須だ。CDの曲はもちろん、自分で演奏してもダメ。自前演奏でもダメなのは、日本の著作権法が自分の著作物をインターネット上で公開する権利である「送信可能化権」を権利者に認めているためだ。自作の動画の中で勝手に他人の楽曲を使うと、権利者が持つ送信可能化権の侵害となり著作権法違反となる。むろん許諾を得れば良いのだが、実際に一般消費者が直接 JASRACへ許諾申請するのは手間がかかり、現実的ではない。「5年以上前、個人のWebサイトから申請を受けて許諾したことはあるが、近年はそうしたケースはまれ」(JASRAC 送信部長の小島芳夫氏)なのが実態だ。

 そこでヤフーは、JASRACとの間で楽曲の送信可能化権に関する包括許諾を結んだ(下図)。ユーザーは投稿先がYahoo!ビデオキャストであれば、自前で演奏した楽曲を含む動画を合法的に投稿できる。JASRACへの許諾申請と使用料支払いはヤフーが代行してくれる。

 ヤフーは包括許諾を得た狙いを、「動画投稿サイト全般に著作権の問題があることは分かっていた。だが投稿動画はブログと同じく、みんなに見せたいもの。『みんなに見せたい動画』の話題として音楽が挙がるのはごく自然。それを禁止してはユーザーの共感を得られない」(ヤフー ソーシャルネット事業部企画部 プロデューサーの佐藤正憲氏)と明かす。

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