カヤックを立ち上げる前、2年ほどサラリーマンをしていました。

 今から思うとその当時の僕は、本当に世間知らずで、生意気で、視野が狭く、客観性も乏しい人間でした。

 そんな僕が、企画会議に自分の考えた企画をかけるわけですが、かけてもかけても社長や上司に却下されます。ガッツはそこそこあるので、とにかく数は出し続けるのですが、ことごとく否定されます。でも、本人としては何がいけないのかわからないので、反対されても反対されても引き下がりません。

 そして、そのしつこさにあきれて、とうとう社長も上司も怒ってしまうわけです(今思えば、通るはずがないような企画を一生懸命プレゼンしているので滑稽極まりないのですが)。

 みんなの前で怒られる僕。

 そういうときに、大丈夫?といって声をかけてくれる人には2パターンあります。

 1つ目のパターンは、「僕が悪い」といってくれる人。
 2つ目のパターンは、「僕は悪くない」といってくれる人。

 この後者がクセモノなのです。

 実は、この2つ目のパターンで近寄ってくる人は、得てしてその社長や上司をよく思っていない人だったりします。自分がよく思ってないので、仲間を増やそうと寄ってきます。無意識にだとは思いますが。

 そして、「大丈夫かい?」と声をかけてくれます。そのときにそっちのサイドに入ってしまうと大変です。どんどん閉じた世界に行ってしまいます。

 ですが、当時僕は、社長や上司に怒られても、そもそもそんなにめげてはいなかったのです。

 なぜかというと、表面的に怒られてはいるが、それほど自分が否定されているとは思えない。根っこの部分で、社長や上司に「僕は期待されているぞ」と、自分にとって都合のよい解釈をしていたからです。なので、怒られてもへっちゃらだったので、そこで心配される方がむしろありがた迷惑だったのです。

 こういったことが人間関係全般にはよくあります。

 何か悩んでいることを誰かに相談する。その相談者が同情し、親身になって聞いてくれているのに、実際にはその人の話を聞けば聞くほど、ネガティブな気持ちになったり、心配になったり、周囲との関係が一向によくならなかったり、ということがあります。

 例えば、誰か気にいらない人がいて、その人との人間関係で悩んでいたとします。その人のことについて誰かに相談したときに、相談を受けた人が、その人の悪口を一緒になって言ったらどうでしょうか。ますますその人を嫌いになるという、悪循環に陥ってしまいます。これじゃぁ悩みは解決しない。一緒になって悪口を言う人は、味方のようでいて敵なのです。そういうときに、その人との人間関係をよくしてやろうと思って、「あいつもいいところあるぜ。お前がこういうところを直した方がいいぜ」って言ってくれる人間が、真の味方なのです。

[そして最高の友や師とは:次ページへ]