中国語漢字を入力する

 では、中国語の入力方法から説明しよう。

 中国語のキーボードサービスを追加しても、通常は日本語を入力するモードとなっているので、言語バーの「JP」ボタンをクリックして「中国語(中国)」を選択する(図3上)。すると、入力言語が中国語に切り替わって、キーボードの入力が中国語の読みを表すようになる。中国語の読みをローマ字表記したものを「ピンイン*5」と呼び、パソコンではこれを用いて漢字を入力する。

 図3では、飾り文字列を作成するWordの「ワードアート」機能を用いて、「トイレ」を表す中国語を入力してみた。「」は「かわや」を意味する「厠」字の簡体字だ。この単語の発音を表すピンイン「cesuo」をキー入力する*6と、自動的に先頭文字だけが変換されて「册suo」と表示される(図3右上)。その後に[スペース]キーを押すと、「cesuo」というピンインに相当する単語に変換されるはず(図3右)。日本語でかなを漢字に変換するときと同じ要領だ。

図3 中国語を入力するには、まず、言語バーの「JP」ボタンを左クリックして、言語を中国語に切り替える(上)。その後、読みを表すピンインをキー入力し(右上)、[スペース]キーを押して中国語の漢字に変換する(右)

 なお、Wordでは入力言語を「中国語(中国)」に切り替えると簡体字フォントが、「中国語(台湾)」に切り替えると簡体字フォントが自動的に設定される仕組みとなっている。しかし、入力したあとでフォントの種類を変更する際には注意が必要となる。前述の通り、中国本土では簡体字が使われているが、台湾や香港では伝統的な字体の漢字である「繁体字」が使われており、両者の違いは大きい。例えば、「中華」の「華」を見ると、繁体字の「」をわずかに簡略化したのが日本の「華」だし、もっと大胆に簡略にしたのが簡体字の「」と見て取れる。どれも歴史的には同じ起源を持つが、簡体字の「」は文字の形が大きく違っていることから、Unicodeでは別の漢字として異なる番号が割り振られている。一方、「骨」の字も繁体字と簡体字、日本の漢字の間で形が異なっているが、「華」に比べれば差は小さい。そのせいか、「骨」はUnicodeでは同じ文字として扱われている。

図4 Windows XPには、中国語のフォントとして、2種類の簡体字フォントと1種類の繁体字フォントが添付されている。「中華」の「華」は簡体字と繁体字で別の漢字として収録されている。一方、同じ漢字だが、微妙に字体の異なる「骨」のような漢字もある

 漢字というと、日本、台湾、中国などの極東圏で共通に使われている文字という認識が一般的だが、実際には字体や形の異なる漢字も少なくない。しかも、文字コードの世界で同じ字とみなす漢字もあれば、異なる字とみなす漢字もある。字体の混乱を防ぐには、日本語の漢字は日本語のフォント、中国本土の漢字は簡体字のフォント、台湾や香港の漢字は繁体字のフォントというように、きちんと言語別にフォントを使い分けるようにしたい。

*5 ピンイン
漢字の学習を容易にする目的で導入されたものだが、将来は漢字を廃してピンインに統一することを目指していたとも言われている。ラテン文字で発音を表し、母音の上に「声調符号」と呼ばれるアクセント記号を付けて、「声調」すなわち音の高さの変化を表す。

*6 「cesuo」をキー入力する
中国語には音の高低のパターン(声調)が「第一声」から「第四声」まで4種類存在する。中国語を入力する際にも、「ce4suo3」というように声調を数字で指定すると、候補となる単語を絞り込めるので、より効率的に入力することができる。