劣化につれてPIエラーが増え、280に達すると規格上の寿命になる――深く考えると疑問がわく方もいるだろう。100や200のPIエラーなら問題ないのか。そもそもPIエラーとは何なのか。今回はこうした疑問を解消するため、DVDの技術的側面を基本から解説していこう。
ミクロン単位の一筆書き
DVDメディアの規格には1回のみ書き込み可能な-R、+Rと、複数回の書き換えができる-RW、+RW、-RAMがある(下表)。前者は記録材料に有機色素を使い、後者は相変化化合物という違いがあるが、基本的な仕組みは同じだ。
まず、物理的な記録方法と読み出し方法について、DVD-Rを例に解説しよう(下図)。DVDメディアの断面を見ると、積層構造になっている。ラベル面を下にすると、一番上にくるのは透明なポリカーボネイトの基板。その下に有機色素の記録層と銀の反射層がある。有機色素にはアゾやシアニンなどの物質が使われる。
データはメディアの内側から外側に向けて、渦巻き状の一筆書きで1ビットずつ記録されていく。メディアには最初から渦巻きに沿った溝があり、ラベル面を下にしたときの山をランド、谷をグルーブと呼ぶ。溝は細かく蛇行しており、ランド上にはランドプリピットという標識がある。この蛇行した溝と標識を頼りに、渦巻きに沿ってレーザーを照射して記録と読み取りを行う。溝と溝の間隔(トラックピッチ)は1ミクロン(100万分の1メートル)以下だ。
データはグルーブに記録する。グルーブに強いレーザーを当て、データの1と0に応じた記録マーク(ピット)を作る。DVD-Rの場合、強いレーザーが当たると熱で有機色素が分解され、その部分のレーザーに対する反射率が下がって記録マークとなる。データを読むときは有機色素が分解されないほどの弱いレーザーを当て、反射するレーザー光の強弱を測る(下図)。
-RWや+RW、-RAMなどの書き換え型メディアでは記録層に相変化化合物が使われている。銀、インジウム、アンチモン、テルルなどの金属化合物だ。相変化化合物の記録層は通常、分子が規則正しく並んだ結晶化状態となっている。ここに強いレーザーを当て、急に照射を停止すると、その部分は一気に冷える。このときに化合物は、分子構造がバラバラになったアモルファスと呼ばれる状態になる。アモルファス化された部分はレーザー光の反射率が下がり、DVD-Rと同様の記録マークになる。逆に、低い温度でゆっくり熱を与えると、アモルファスから結晶化状態に戻る。書き換えが可能なのはこのためだ。