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フォントにまつわるエトセトラ

漢字の字体がしっくりこないのはなぜ?(前)

清水 哲郎=ライター 2008/05/09 日経パソコン
出典:日経パソコン 2007年2月26日号
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

 筆者の元には、パソコンを使っている人から「使いたい漢字が出てこない」という不満がよく届けられる。どういうことか、よくよく聞いてみると、2種類の不満に分けられる。1つ目はいつも使う日本語フォントにそもそもその漢字が収録されていないという不満。これについては、以前、「MS明朝」や「MSゴシック」に収録されている補助漢字を入力する方法、さらに人名などに多い異体字を入力するために「文字鏡」フォントを利用する方法を紹介した(参考記事:「もっとたくさんの漢字を使いたい!!(前)」「同(後)」)。

 もう一方は「変換は一応されるのだが、本に載っている漢字とは微妙に形が違う」といった不満。この漢字の形すなわち「字体」とパソコンとの関係について解き明かしてみよう。実は、字体に関連して、先日発売されたばかりのWindows Vistaでは大問題(?)が起きているのだ。

一般的な漢字と形が違う

 漢字の字体をめぐっては、かつてNECのPC-9801シリーズが全盛だったころ、森鴎外の「鴎」が画面上では「鷗」なのに、他社のパソコンでデータを開いたり、NEC以外のメーカーのプリンターで印刷*1したりすると、「鴎」で表示・印刷されてしまったことを覚えている向きもあるだろう。これは、1978年に最初のバージョンが規定されたJIS漢字が1983年に改定された際に、「鷗」を含む多くの漢字が簡略化された字体で例示されたことに起因する。これに伴い、1978年版に準拠したPC-9801で作成したデータを1983年版に準拠したプリンターやパソコンで表示・印刷したため、字体が変わってしまったのだ。

 当時、このことは新聞でも取り上げられて大きな問題となった*2が、その後に普及したWindowsでは、「鴎」のフォントが標準添付されたこともあって、次第に沈静化した。

 しかし、この漢字の字体をめぐる問題がすべて解決したわけではない。例えば、東京の下町にある葛飾区に行ってみると、区役所の看板や地名の掲示板に始まり、区が発行する広報の類に至るまで、左下が「人」形の「」ばかりを目にする。葛飾区役所のホームページでも、画像で作成したロゴには「飾区」と表記しており、「葛飾区」ではない(次ページの図1上)。同区では「飾」を正式な区名としているのだ。しかし、パソコンで「かつしかく」と入力して変換しても、変換候補に現れるのは「葛飾区」だけで、「飾区」の方は現れない。「晦」と「」、「祇」と「」など、印刷物などで使われているのと字体が異なる漢字は意外と多く、気になる人にとってはこれも「使いたい漢字が出てこない」問題だったのだ。

*1 NEC以外の……で印刷
現在は、パソコン本体にインストールしてあるフォントを用いて印刷する方式が主流だが、当時はプリンターに内蔵されているフォントを用いる方式が主流だったため、ディスプレイ上で表示されている漢字とプリンターで印刷した漢字で字体が異なるという現象が発生した。

*2 大きな問題となった
1983年の改定では、4つの漢字が簡略化された代わりに従来の字体の漢字が追加されたり、字体の異なる22組の漢字が第一水準と第二水準の間で入れ替えられたりしたほか、多くの漢字の字体が変更されて、混乱をもたらした。当時、「新JIS問題」などと呼ばれた。

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