IEEE802.11nとは、100Mbpsを超える実効速度を目指した無線LANの新規格です。現在、IEEE(電気・電子技術の標準化団体)が規格の策定を進めており、2008年以降に正式規格が登場するといわれています。

 IEEE802.11nの高速化を実現するための土台となるのが、複数のアンテナを利用して通信を高速化する「MIMO(マイモ、multiple input multiple output)」技術です。

バッファローやNECアクセステクニカなどの無線LAN機器メーカーが、ドラフト11nに対応した製品を投入している。3本のアンテナで複数のデータの流れを送信し、高速化する

 例えば「2×3」という方式では、送信側は2本のアンテナから別々のデータを同時に送信し、受信側では3本のアンテナで受け取ります。3本のアンテナで受け取った信号を、受信側で計算処理することで元のデータを取り出します。つまり、同時に2つのデータの流れを作ることで、大幅な高速化を実現したのです。

 通信に使う電波の帯域幅も拡大します。従来の11a/b/gでは通信に使う電波の帯域幅は20MHzでした。11nでは40MHzに拡大できるので、単純に考えると通信速度を2倍にできるのです。従来、国内では電波の規定で20MHz幅の通信だけが認められていましたが、2007年6月、電波法施行規則が改正され、40MHz幅が使えるようになりました。

 複数のアンテナを使った通信と帯域幅の拡大という2つの改良により、11nの理論上の通信速度は最大600Mbpsといいます。ただし、当初は40MHz幅で最大300Mbps、20MHz幅では最大150Mbps程度の製品が登場することになりそうです。

ドラフト11nは要注意

 これまでにも「ドラフト11n」に対応した製品が登場しています。ドラフトとはIEEE802.11n規格の草案のこと。最近では2007年3月に提案されたドラフトバージョン2.0に沿った製品が増えつつあります。例えばバッファローの「WZR-AMPG 300NH/P」の通信速度は理論値で最大300Mbpsとしています。

 注意しておきたいのは「ドラフト11n」の製品は正式な11n製品と互換性が保証されていないこと。現在、IEEEではドラフト11nの技術的な問題や変更すべき点について検討を進めています。通信方式に大きな変更が加わった場合、例えば、ドラフト11nのルーターと正式規格11nに対応したノートパソコンの間で高速な通信ができない可能性もあります。

 そこで、無線LANの業界団体Wi-Fiアライアンスはドラフト2.0に準拠した製品の認証テストをすると公表しました。テストにパスした製品には相互接続性に問題がないことを示すロゴが添付されます。正式な11n規格の登場は2008年もしくは2009年にずれ込む、という見方もあります。もしそうなれば正式版11nの登場は1年以上も先。現状ですぐに高速な無線LANが欲しいという人は、ドラフト11n製品を選択する手もあるでしょう。

無線LANの主な規格には上記の4種類がある。2007年以降に策定される予定の11nは100Mbps以上の通信速度を目指した規格。現状の11a/b/gと比べて、大幅に高速化するとみられている。この11n規格を先取りしたのが「ドラフト11n」対応製品だ