「フォントを使って将棋を楽しもう(後)」では、将棋の駒フォントを使って、フォントに収録されている文字ごとにすべて文字コードと呼ばれる番号が振られていることを説明した。将棋の駒のような記号フォントは特殊な例なので、今回は漢字や英数字を収録している日本語フォントを取り上げよう。WordやExcelなどのアプリケーションで、フォントの種類を変えると、ゴシック体だった文字の書体*1が明朝体や行書体に変わるが、指定したフォントに変わらず戸惑った経験はないだろうか?

 例えば、Wordで「MSゴシック」で文章を作成した後に、文章全体を選択して「HG行書体*2」を指定すると、「你」や「圳」など、一部の漢字だけが行書体に変わらず、ゴシック体のままとなる(図1)。今回のテーマはその謎解きだ。

図1 Wordなどで、かな漢字変換できない漢字を入力するにはMS-IMEの「手書き」機能が便利だ(上)。ところが、例えばWordの場合、入力した文章全体を選択して「HG楷書体」を指定したのに、なぜか、一部の文字は書体が変わらず「MSゴシック」のままという現象が起きる(右)

文字コードを理解する

 一部の漢字だけが指定したフォントに変わらなかった原因を探るために、作成した文書をテキスト形式で保存してみよう。「ファイル」メニューから「名前を付けて保存」を選択し、その「ファイルの種類」欄で「書式なし(*.txt)」を選択してから適当な名前を付けて保存を実行する(図2上)。すると、どの種類の文字コードで保存するかなどを指定する「ファイルの変換」ダイアログが現れる。その「プレビュー」欄には編集していた文書のテキストが表示されるが、先ほど、書体が変わらなかった漢字だけが赤字で表示されていて、右上に「赤で示されたテキストは指定されたエンコードでは正しく保存されません」という警告*3が出ているハズだ(図2左下)。「OK」を選択すると、さらに「選択されたエンコード方法で変換すると、文字列の内容が失われる可能性があります。……保存を継続しますか?」といった警告ダイアログが現れる。「はい」を選択すると、ようやくテキスト形式での保存が実行される。

*1 書体
書体はもともと書道の世界で、隷書や草書といった書風に対して使われていた言葉だ。フォントの世界ではゴシック体や明朝体、行書体など、文字の線の端や点の書き方など、一定のデザインコンセプトに基づいて作成されたひとそろいの字形を指すのに使われることが多い。

*2 HG行書体
「HG行書体」はWindowsに標準添付しているフォントではないが、Officeをインストールすると同時にインストールされるので、割と一般的な日本語フォントだ。同様のフォントには「HG 正楷書体-PRO」「HG 丸ゴシック」「HG 創英角ポップ体」などがある。