エクセルの「ふりがな」機能は、セルに入力した漢字のふりがなを表示するもの。セルを選択して「書式」メニューの「ふりがな」→「表示/非表示」を選ぶと、漢字のふりがなが表示されるはずだ。これは、セルに漢字を入力したときに行った“かな漢字変換”の情報を記録する形で実現されている。「たなか」と入力して「田中」に変換すると、この「たなか」がふりがなとして記録される仕組みだ。


 しかし考えてみると、こうした「ふりがな」機能は、日本語版にしか必要のない機能と言える。実際に英語版エクセルを見てみると、「ふりがな」に相当するメニューはない[注1]。つまり日本語版エクセルは、英語版エクセルを単に翻訳したものではなく、“日本仕様”に作り替えられているわけだ。

[注1]英語版に「ふりがな」はない
英語版エクセルでも、“日本語環境を整えたパソコン”にインストールした場合は、ふりがな機能が利用できる状態になる


 とは言え、100パーセント日本向けに改良されているかと言うと、実はそうでもない。エクセルの標準機能はあくまで“米国仕様”。日本ではそのまま使用できない機能も少なからず存在する。

完全な“日本仕様”ではない、減価償却の計算には要注意

 一例を挙げよう。エクセルには、「減価償却」の計算に使う「DB」という関数がある。ところがこのDB関数は、日本の税法には正しく対応していないのだ。

 そもそも減価償却とは、自動車など高額な資産を購入したときに、支払った金額を何年かに分割し、費用として計上する方法。簡単に言うと、100万円の資産を購入したときに、10万円ずつ10年に分けて計上する(償却する)といった考え方だ。分割する年数や償却する額は、資産の種類によって定められた「耐用年数」が基準となる。耐用年数に応じて決められた「償却率」を、未償却の金額に掛けて、毎年の減価償却費を計算するからだ。例えば、購入した金額(取得価額)が100万円、耐用年数が24年と定められた資産を「定率法」[注2]で償却する場合、償却率は税法上「0.092」と決められている。そこで、1年目の償却費は、100万円×0.092=9万2000円と計算できる。

[注2]定率法
毎年同じ率で費用を計上する償却方法。年ごとに償却費は減少する。このほか、毎年同じ額を償却する「定額法」などがある

[償却率の算定方式に落とし穴がある:次のページへ]