「面白法人カヤックのいきかた」も2006年5月の連載開始から1年以上が過ぎました。遅ればせながら連載開始1周年を記念して、本コラム筆者である面白法人カヤック代表の柳澤大輔氏が以前から是非、会いたいと話していた糸井重里氏に「面白さの基準って何だろう」というテーマでインタビューを申し込みました。

 そこから浮かび上がってきたものとは?糸井さんのお話の中から飛び出したキーワードと合わせ、前編・後編の二部構成でお届けします。(編集部)

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 ●ほぼ日的企画論
「価値観を共有していると思うけど・・・それは幻想だとも思う」


柳澤 今回のテーマは「面白さって何だろう」というところにおいてみようかということでよろしくお願いします。一応カヤックの紹介なども持ってきましたので。

糸井 ブログ拝見させていただきました。

柳澤 あ、ありがとうございます。では一応ざっとだけ。(資料をベースにカヤックを紹介)

 では早速ですが、ほぼ日刊イトイ新聞の企画というのは、非常にユニークで面白いですよね。これはどういうプロセスで決まっていくんですか。

糸井 基本的に全部僕の目を通っていますね。いや、通っていることになっているといいますか。時には「アレ?」ということもあったりはするんですが(笑)。

 今、「ほぼ日の就職論」(注1)という企画の一環で実施された「ザ・グレート・フリー座談会」というコンテンツがありまして。僕は当初、「ほぼ日の就職論」自体で何か驚くような目新しさとかを求めたわけではなくて、ごく普通に相対的にでも価値があることをやればいいと思っていたんですが、そこにグレート・フリー座談会。これは僕が知らないうちに紛れ込んでいたんです(笑)。

 参加者は板尾創路さん、ピエール瀧さん、天久聖一さん、浜野謙太さんというメンバー。グレート・フリーって僕らそのものなわけじゃないですか?直球過ぎるといいますか。集まってくれた学生たちに、就職なんてしなくていいと思われてしまうかなとも思ったわけです。でも、実際に実施してみたら、今の時代、フリーというのも十分ありうる選択肢なんですよね。「就職」について考えるなら、就職の真逆に当たることも当然やるべきだったんです。これには反省させられましたね、僕自身、無意識のうちに考え方に柔軟さが欠けていた部分があったかなと。自分たちが得意なことをしっかりと伸ばしていくということも重要なんですよね。

柳澤 糸井さんが企画をすべて見ていくというのは、実際にやるとなるとかなり大変なんじゃないですか?

糸井 そんなことはないです。うちはちっちゃい屋台みたいなものですから。

 僕自身、コピーを考えていた頃からそうなんですが、とにかく数を打つみたいなのはイヤなんですよ。よくありますよね。「考え出した1000本の中からこれに選びました」みたいなの。人は皆、どうしても努力に対してお金を払いたがるものだから、受け手側もその努力を数字で示そうとしがちなんだけれど、実際には、打ち合わせの段階やコンセプトのプレゼンテーションを聞いているときに浮かんだものがすべてだったりするわけで。

柳澤 ほぼ日のスタッフの間で、コンセプトというか、価値観を共有できていないと通用しないですよね。

糸井 そうですね。価値観は共有していると思いますけれど。。。それは幻想だとも思いますね。ただ、皆、腰は軽いですよ。僕自身、ほぼ日スタッフには責任は持たなくていいと明言していますし。

注0 ほぼ日刊イトイ新聞 http://www.1101.com/
注1 ほぼ日の就職論 http://www.1101.com/job_study/