昔、こんなことがありました。同じ会社にいた後輩から連絡を受けて話をしていたときのことです。今はベンチャー企業の経営をしている彼と、その時点でもう8年ほど前にあった出来事のことで話が盛り上がりました。「新人のころは、小山さんにファイリングはこうすべきである、なんてことを教わりましたよ」。

 彼とは1年しか違わないから、そのころは僕もまだ2年目の若手だったはずで、それが「すべき」論を語るなんてまったく噴飯もの。過去の自分が恥ずかしく、当時の僕に代わって謝罪したい気分でした。

 ともあれ、その当時から「膨大な書類をいかにファイリングするか」ということを試行錯誤していました。これからご紹介するのは、8年の熟成を経たファイリング術です。前回は1分でしたが、今回はもう少し長く5分で行える書類整理術。前回よりもう少し時間をかけるだけで、さらに整理の達人になれます。それは「捨てる」という作業です。これは結構なストレス解消になりますので、お薦めです。前回同様、今回も「捨てる」ためのプライオリティ決めがポイントになります。

 前回、お話した「ドキュメントボックス」の中に一時避難させた書類の中で、まず捨てられるものはすべて捨てるというプロセスがあります。

 このときにちゅうちょしないことがポイント。たとえば、自分のパソコンやインターネット、会社のイントラネットなどで調べればでてくるものは、すべて処分する。「またプリントアウトするのがもったいない」という気持ちは捨ててください。すぐに参照するものであれば紙の書類で残しておいてもいいですが、基本的にはすべて捨てるようにします。

 というのも、捨てずに残した不必要な書類によって、重要な書類を埋もれさせてしまうからです。本当に重要な紙だけを残すことで、それらが簡単に探し出せるようにしておくわけです。

 そうして残した書類を、今度はファイリングしていきます。このファイリングが整理のキーポイントになります。8年かけて分かったことは、次の3つ。

・簡単にできて続けられる
・ルールがシンプル
・多少のあいまいさも許容できる

 ファイリングの基本は「継続」です。いくら精度の高い方法を採用したとしても、それを維持するのがたいへんであれば、本末転倒。ファイリングできずに書類の山を作るのがオチです。

 ルールもシンプルなほうがいい。ルールが複雑だと、その都度、微妙な間違いが発生して、全体として一貫性を失ってしまいます。間違えようのないほどシンプルなルールで運用しておけば、そうしたことも起こりません。よく例に出すのですが、意識しないでできる「車の運転」くらいシンプルな運用が目標です。

 そこで生み出したのが、「超整理法」を少し改良したファイリングシステムです。まず、色とりどりのクリアファイルを用意。そこにプロジェクトごとに分けて書類を入れていきます。そして、クリアファイルの右肩に「プロジェクト名+日付」を入れるだけです。

プロジェクト名と日付を記載。ラベルメーカーできれいに作ると、気分がいい。色のチョイスも重要です

 見出しに付ける日付けですが、以前は「2007/5/31」というように日も入れることで、見出しそのものを覚えられるようにしていました。ただ、見た目が少し煩雑に感じられるようになり、今は「2007/5」というように年と月まで記載しています。

 これを、書類棚に収納し、一番最近使用したものを手前に持ってくるようにします。そうすると、使用した順番に手前から奥へと並んでいくことになります。奥にいけばいくほど、最近使用していないファイルになるので、自然と不要な書類が奥にたまるようになります。気が向いたときに、奥の書類を捨てていけば棚の整理になるというあんばいです。

手前から検索すると最新の書類ほどすぐ見つかる

 重要なことは「ワンポケット原則」(第4回参照)を維持するということ。使ったファイルはかならず、同じ書類棚に戻します。複数の書類棚を使うのもNGです。たとえば、デスクの引き出しとオフィスの棚の二カ所で運用してしまうと、「どちらに入れたか?」が問題になってしまいます。探し物をするときに、二カ所探すよりも、一カ所のほうがずいぶん楽です。

 この8年熟成のファイリングシステムですが、実は脳の仕組みにとっても理にかなっていることが最近わかってきました。これについては、次回書いてみたいと思います。