ここからは、バッテリーの寿命を少しでも延ばすための実践的な活用法を紹介していこう。バッテリーの劣化は、充電の過程で発生した電気を通さない物質が負極に付着することと、電解液の分解が大きな要因だった。現実的には劣化を完全に防ぐことはできない。

 ただし、次の2つの原則を意識して活用すれば、劣化の速度を遅らせることは可能だ。2つの原則とは「満充電を避ける」「高温を避ける」の2つだ。満充電はバッテリーの容量いっぱいまで充電することを指す。覚えておきたいのは、満充電や高温状態での充電や放電は、バッテリーの劣化速度が最も速くなるということだ。仮に充電や放電を止めても、バッテリーにはゆるやかながら自然に放電を続ける「自己放電」という特性があるため、やはり劣化は進む。バッテリーの劣化を遅らせるためには、少しでも満充電や高温になっている時間を短くすることが大切だ。

極意は寸止め充電

 まずは満充電状態を避けるための具体的なテクニックから紹介していこう。1つは「充電は約80%までで止める」だ。すでに述べたとおり、容量いっぱいまで充電した状態はバッテリーを著しく劣化させてしまう。かといってほとんど充電しない状態では、パソコンを持ち出して使用したときにすぐにバッテリー切れになる。確実にバッテリーの寿命を延ばすことができ、かつ実用になるだけの駆動時間を確保するのに最適な水準が80%というわけだ。

満充電はバッテリーの容量いっぱいまで充電した状態を指す。バッテリーを使わなくても劣化は進むが、満充電の状態は最も速く劣化するので要注意

 では、実際に80%の時点で充電を止めることは可能なのか。1番簡単なのは、パソコン自身に充電量を調節できる機能が備わっている場合だ。レノボ・ジャパンのThinkPadシリーズは独自のバッテリー管理ソフトを搭載しており、何%まで充電するかを自分で設定することができる。松下電器産業のLet'snoteシリーズも、約80%までしか充電しないエコノミーモードを搭載している。ソニーのVAIOの場合、85%を超えた時点で充電ランプが消える。

ThinkPadシリーズは、一定の容量になるとそこで充電を止める機能を持つ。実使用時間のことも考えると、80%程度に設定しておくのが適切だ

 上記のような機能を持たない製品の場合、カタログに記載されている充電時間から逆算するといった方法がある。下のグラフにあるとおり、充電が進む速度は必ずしも一定ではない。充電し始めから80%程度までは勢いよく進み、満充電に近づくほど勢いが落ちるため余計に時間がかかる。もちろん個々のバッテリーの特性には個体差があるが、おおよその目安としては、カタログに記載されている充電時間の7割程度が過ぎた時点でほぼ充電完了とみなせる。

カタログやWebサイトなどのスペック欄を見れば、自分が使っているパソコンの大まかな充電時間を確認できる
充電の進み具合を示したグラフ。充電し始めから80%辺りまでが勢いよく進む。それ以降は勢いが落ち、満充電に到達するにはかなり時間がかかる

 仮に100%まで充電してしまった場合は、できるだけ早くパソコンを使おう。こうすれば満充電の状態を少しでも短くできる。満充電のままいつまでも放置しておくのは厳禁だ。もちろん、80%程度であっても満充電に近い状態には変わらないので、放置したままだと劣化を速める。できれば使う直前に充電するのが理想。

 次ページで詳しく解説するが、AC電源との付き合い方も重要だ。