「自分の体は自分がよく知っている」と豪語する人は、病気になったとたんに弱気になることが多い。対処方法が全く分からないからだ。一方、体の仕組みを知ったうえで健康状態に気を配っている人は、病気になっても冷静に対処できる。

 この話はパソコンとは無関係に思えるかもしれないが、実はそうでもない。「パソコンの仕組みなんて知らなくても、きちんと使える」。こう言い続けていると、突然ハードウエアのトラブルに遭遇したとき、何が原因なのか突き止められない。さらに、新技術にも、基本が分からず理解に苦しむことになる。パソコンユーザーである以上、一度はパソコンの中身について勉強しておきたい。

 「パソコンの仕組み」というテーマで丁寧に細かく解説していくと、おそらく数冊の本が出来上がってしまう。難しい言葉だけでなく、複雑な数式や図解がずらりと並ぶだろう。けれども本特集の目的は、さらりと読めて役に立つこと。そこで今回は、単純化した図を用いながら、パソコンを構成する要素別に動作方法や役割、そして最新技術を分かりやすく解説することにした。

基本の構成要素を把握

 パソコンは複数の構成要素から成り立っている(下図)。主なパーツを紹介していこう。まずはパソコンの頭脳に相当するCPUだ。演算処理を担当し、性能が高いほど処理スピードが速い。Webサイトの閲覧やメールの読み書きでは、その速度はあまり体感できないが、動画の編集や変換処理などではCPU性能が物を言う。パソコンのカタログにも登場する「デュアルコア」といった話題のキーワードは覚えておこう(→70ページ)。

 CPUと密接な関係にあって、データの一時預かりや受け渡しをするのはメモリーだ。2007年初頭に出荷予定の次期OS「Windows Vista」では、快適に動作するメモリー容量の目安が1GBにも達している。こうなると、メモリーがパソコンの性能に及ぼす影響が気になってくる(→72ページ)。メモリーと同様に、グラフィックス機能も重要性を増している。高度な画面処理や3次元表示を利用するVistaでは、高性能なグラフィックス機能が要求されるからだ。(→73ページ)。

 ハードディスク(HDD)は大容量化がとどまるところを知らない。特に最近は、デジタル放送の録画で大容量製品の需要が高まっている。なぜ壊れやすいかといった素朴な疑問も、仕組みを知れば納得するだろう(→74ページ)。

次世代DVDとは?

 光学ドライブはパソコンの動作に必須のパーツではないが、CD/DVDの再生や、データのバックアップには欠かせない機器だ。次世代DVDの話題に付いていくためにも、基本のDVDからおさらいしておくとよい(→78ページ)。

 液晶ディスプレイはパソコンとユーザーとの間をつなぐ大事な機器だ。最近の製品は動画再生性能が向上しており、古い機種からの買い換えを検討している人もいるだろう。そんなときに知っておきたいポイントをまとめた(→80ページ)。

 キーボードやマウスは、毎日触れる機器なだけに自分に合った製品を選びたい。キーボードは内部構造によって押しやすさが変わる。一方、マウスではレーザー方式の人気が高まっている(→82ページ)。

 そして、ハードウエア全般を制御する基本ソフトウエア、OSも大事だ。Windows Vistaが登場する前に、OSの役割を改めて見直してみよう(76ページ)。

 各パーツは、チップセットと呼ばれる集積回路を通して連携して動く。そのチップセットはマザーボードという基板に搭載されている(下図)。本来であれば、このチップセットやマザーボード、電源、CPUファン、各種インタフェースも重要なのだが、本特集では基本の8項目を順に見ていく。

パソコンの大まかな構成。これら主要なパーツが連携して動作する。パーツ間のデータの受け渡しをしているのは、チップセットと呼ばれる集積回路。CPU、メモリー、グラフィックス、各種の外部機器との間を取り持つ