Windows Vista上のInternet Explorer 7(IE7)では、日本語入力ソフト「IME」が正常に動かない。登録したはずの単語なのにうまく変換できない、という現象が発生する。

 原因は、Vista用のIE7が導入した「保護モード」にある。セキュリティの向上を目的に、IE7を一般のアプリケーションソフトよりも低い権限で動かすモードだ。保護モードでは動作が大幅に制限され、例えばIE7からは、インターネット一時ファイルを保存する「Temporary Internet Files\Low」など一部の場所にしかデータを書き込めない。こうして、悪意あるソフトウエアがインストールされてしまう危険を回避する。

 これが、IMEの動作に影響を与える。登録した単語が正しく変換できないのは、IE7ではユーザー辞書にアクセスできないためだ(参考情報)。ユーザーによっては、これはストレスの種になりそうだ。例えばインターネットサービスへの申し込み時には氏名や住所、メールアドレスの入力が求められる。珍しい氏名を持つため自分の名前を登録していたり、住所やメールアドレスの入力を省力化するためにこれらを単語登録していたりしても、IE7上では入力できない。大量の文字を入力することになるWebメールの利用時などはなおさら不便を感じるだろう。

「メモ帳」では単語登録した通りに変換できるが、「IE7」では変換できない

 入力だけでなく、登録機能もIE7では無効になる。IE7上で文字入力をしている時には、IMEの「単語登録」「プロパティ」「辞書ツール」は利用できない。実行しようとすると、「スタンダードユーザー権限を持つアプリケーションから起動してご利用下さい」とのメッセージが表示される。

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Vista上のIE7から単語登録を実行しようとすると、このようなメッセージが表示される

 マイクロソフトが公開している対応策は、日本語入力をしたいサイトを「信頼済みサイト」に登録する、というもの。信頼済みサイトの閲覧時には通常のユーザー権限が適用されるため、登録済みの単語は正しく変換できるし、単語登録機能なども利用可能だ。IE7の「ツール」-「インターネットオプション」で「セキュリティ」タブを開き、「信頼済みサイト」を選んで「サイト」をクリックし、目的のサイトを登録すればよい。ただし登録時は、本当に信頼できるサイトかどうかをよく吟味しよう。また手間はかかるが、メモ帳など他のアプリケーションで一度文字を入力したうえでIEに貼り付ける、という方法もある。

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「インターネットオプション」で「信頼済みサイト」に登録すれば問題は起こらなくなる。登録はくれぐれも、安全なサイトかどうかを確認してからにしよう

 なお、マイクロソフトが公開している情報を読むと、正確にはIE7ではユーザー辞書にアクセスしないのではなく、保護モード専用のユーザー辞書を利用していることが分かる。一般的に、IMEのユーザー辞書は「C:\Users\(ユーザー名)\AppData\Roaming\Microsoft\IMJP10\imjp10u.dic」だが、探してみると「C:\Users\(ユーザー名)\AppData\LocalLow\Microsoft」にも同じ名前のファイルがある。「LocalLow」は保護モードでも書き込みが許されている数少ないフォルダーなので、これが保護モード用のユーザー辞書である可能性が高い。試しにこの辞書をIMEの辞書ツールで読み込み、単語登録してみたら、IE7上で正しく変換できた。

 また、ジャストシステムの「ATOK 2007」では、IE7上でも単語登録ができる。ジャストシステムに問い合わせたところ、単語登録の実行時には通常のアプリケーションと同等の権限の別プロセスを起動させることで、ユーザー辞書への書き込みを可能にしているという。ただしATOKでも、確定の履歴などは引き継がれない。このため、IE7上で確定した漢字が、他のアプリケーションでの利用時に第一候補に表示されるとは限らない(参考情報)。