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柳澤大輔「面白法人カヤックのいきかた」

41:「受託開発と自社開発の両立」

41

柳澤大輔=面白法人カヤック代表 2007/03/12 日経パソコン

 面白法人カヤックの関連会社にクーピーという会社があります。2007年2月現在、2社あわせた人数は50人程度。50人の内訳は、というと、ほとんどが、ディレクター、プログラマー、デザイナーの3職種のいずれかに属します。一応管理系の人間も数人いますが、管理系であっても、ディレクターなど他業務を兼任しているというのが弊社の特徴です。例えば、弊社の総務担当も自社サービス「総務の森」のディレクターを兼任しています。2社ともインターネット関連の開発を中心に行っている会社ですので、外からは似たようなことをやっているように見えるようです。

受託と自社で会社をなぜ分けたか

 ですが、社内的には業務内容によって2社の棲み分けを行っています。カヤックが自社サービスをメインとしている(レベニューシェアモデルのサービス含む)のに対して、クーピーは純粋に受託案件だけを扱っています。

 もともと、カヤック創業時は受託の仕事がメインでした。いわゆるホームページ制作という仕事です。そしてちょうど創業から1年近く経った頃に、自社サービスを立ち上げました。その後、全社員が自社サービスと受託案件を兼任するという状態を続けました。
しかしながら、兼任しているとどうしても受託案件に追われて、自社サービスが手薄になってしまいます。また、自社サービスに使う頭と、受託サービスに使う頭は若干異なります。さらにもっと言うのなら、自社サービスと受託開発とでは、人材の評価軸や、ワークスタイルなども若干異なります。そういった理由から、別会社化しました。

 僕個人としては、クーピーはあくまでカヤックの一部署だという認識をしているので、今となっては会社を分けなくてもよかったかもと思います。ただ、2社あることで何かと便利なこともあるので、現状はそのままです。今では、クーピー在籍社員の中では、カヤックよりもクーピーに愛着をもっている人が結構出てきてたり、2社の間でも社風に違いが生まれたりしています。2社あることで切磋琢磨する形になるのも悪くありません。

 この自社サービスと受託開発の両方に関われる立場は、恵まれていることのようです。一般的にはこれを両立するのはなかなか難しいそうです。同じような規模で受託開発だけをしている同業他社の方々には、どこか自社サービスをやりたいという欲求があるようで、この状態をうらやましがられます。

 受託開発を行っている会社の中には、「とりあえず起業はしたが、本当は自社サービスがやりたくて、受託はあくまで当座の資金稼ぎ」と公言してはばからない人も少なくありません。上場直前の企業が、とりあえずの数字合わせのために、受託の仕事で数字を手っ取り早く積み上げて、その後、上場した後、受託を止めるというのも実際身近で何度も聞いた話です。

とりあえず、の落とし穴に落ちないために

 しかしながら、その「当座の資金稼ぎ」という考え方は、実は結構落とし穴でして、それをこなしていくうちに受託体質から抜けられなくなってしまうことがあります。

 「編集王」という漫画の中にも、こんな台詞があります。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 「手垢のついてないオリジナルゲームを作るには
  最低でも1年以上はかかるんだよ」

 「当座の会社の資金繰りのために、
  クソゲーを引き受けてこなしているうちに・・・」

 「クソゲーしか作れなくなっちまったわけさ」
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 僕らは、受託に対してどのように考えているのでしょうか。起業した当時は、根拠のない自信に満ちあふれていましたので、まずは受託でスタートして、いずれは自社サービスメインで・・・と思っておりました。でも今は違います。受託もメインでやっていくことにしています。

 受託には受託の良さがあります。すなわち僕らだけではできないようなことができる。そもそもカヤックという名でリリースしても誰も気がつかないようなものでも、他社の名前でリリースすれば影響力の大きいプロジェクトになることがありますし、僕らにはもってないリソースをつかって何か面白いことができる。それは非常にエキサイティングなことです。

 ただ一方で、受託ばかりをやっていると、やったことが自分にモロに跳ね返ってくる自社サービスをやりたくなる。何も他社のブランド力を利用しなくても、唯一無二の面白いものをつくれば正当な評価を受けるのがインターネットのいいところでもあるからです。だから面白そうなアイデアを思いつくと、自分たちでやってみたくなる。

 そして思いつきと勢いだけで、とりあえず自社サービスを立ち上げてしまうのですが、でも実際立ち上げただけでうまくいくなんて話は稀で、立ち上げ後、地道にサービスを伸ばす努力が実は一番大切だったりします。ところが、その地道な作業をしていると、また新しいものがつくりたくなってくる。その結果、カヤックではつくったものを売却してしまったり、放置プレイしてしまい結局死んでしまったりするサービスが多々あります。

作り手の思いが循環する

 つまり、つくったはいいけどハズレの連続。打率も低い低いわけです。
そうしてはずし続けていると、また受託でいい仕事がしたくなってくる。

 ・・・とこのように思いは受託と自社の仕事を循環していくわけです。そういう人間がカヤックには多いのです。

 「両方できて、いいですねー」なんてうらやましがられることもありますが、上記で説明したように実はうらやましくもなんともなくて、「単にそういうふうにしか生きていけない」のであり、さらにもっと言うなら、両方続けることが、カヤックの経営理念の「つくりつづける」という使命を達成するために必要不可欠だと思うから、そうしているだけなのです。

 でも、せっかくなのでもっともらしく解説します。

 自社サービスと受託開発の両方をしていると、たとえば自社サービスで実験したことを受託に提案することもできるし、その逆も可能なのです。その無駄のなさが最大の良さで我々の強みでもあります!

 もっともらしいというより、実際その通りだったりもします。

 ここまで出たとこ勝負で、書いてきて、ふと思ったのですが、カヤックの場合、自社サービスの売却も積極的に行っています。そもそも売却するという行為は、勝手に自分達で先走って作ったものを、後でそれを最も有効活用してくれるところに譲渡するという風にも言えますね。そういう意味では僕らの行っている自社サービスというのは、受託の一種といるかもしれません。

 結論としては、受託も自社も線引きなんてものはないってことなんですね。

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