GPSモジュールを内蔵した携帯電話が、来春以降一挙に広がりを見せそうだ。きっかけは、第3世代(3G)携帯電話へのGPS搭載の義務付けだ。

【緊急通報の規則の改正概要】
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 総務省は事業用電気通信設備規則を2006年1月に改正・公布し、2007年4月に施行する。改正の大きな柱の一つが、携帯電話からの緊急通報機能を充実させる、通称「日本版e911」だ。施行後に発売される3G端末は、原則としてGPSモジュールの内蔵が義務付けられる。対応端末から110番/118番/119番へ緊急通報した際に、通報者の位置情報をGPSで測位し、警察・消防・海上保安本部に自動通知する仕組みを構築する。

 携帯電話の普及に伴い、携帯電話からの緊急通報も増加の一途。一方、見知らぬ土地での事故などで、通報者が現在地を説明できないという問題が顕在化した。位置情報の自動送信により、接続後数秒~数十秒で通報位置を特定し、出動の迅速化を図る。警察・消防なども順次指令台を改修し、携帯電話の位置を地図上に表示するシステムを導入する。「施行当初は東京、神奈川、愛知、大阪、奈良と、北海道の一部で運用を始める。2008年春には、全国に52カ所ある110番通報の受信拠点のうち、半数への導入を目指す」(警察庁通信施設課)。

先行するau、追うドコモ

 通信事業者のGPSへの取り組みは事業者ごとに温度差があったが、施行を機にGPS搭載機が一挙に増える。

 取り組みが早いのはKDDI(au)だ。2001年12月にGPS内蔵端末を出して以来、累計出荷台数は2000万台を超えた。施行を前に、ほぼ全機種にGPSを内蔵している。サービスとしては、ナビタイムジャパンと共同で提供している歩行者向けナビゲーション「EZナビウォーク」が好調。有料メニューの利用者数が2006年9月に200万人に達した。「日本版e911を契機に、GPSの認知度も高まるだろう。メニュー画面の配置見直しやキャンペーンを通じ、携帯電話で精度の高い地図を見られることを訴求していく」(KDDI)。

 NTTドコモも追い上げを図る。同社の現行製品では、GPS対応端末は3機種と少ない。開発コストの要因から、施行当初は3G全機種がGPS内蔵とはならず、例外として一部機種は基地局からの電波による測位で代替する方向で準備している。だが、2006年3月に発売した子供向けGPS内蔵機「キッズケータイ SA800i」と、子供の居場所を保護者が確認できるサービス「イマドコサーチ」は、ともに20万人超のユーザーを獲得。外出中の子供の安全を確保する手段として好評を得ている。また、コンテンツ事業者にはGPSによる測位機能を順次提供し始めており、「例えば現在地の周辺にある店を近い順に表示するといったサービスを、近い将来提供可能にする」(NTTドコモ)という。

【GPS携帯で、通報者の居場所を通知】
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