1カ月の間、パソコンの電源をつけておけば最高で1000円程度の収入になる。こんなうまい話があるはずがないと思うかもしれないが、実はホントの話。あなたの知らない間に、パソコンが内職をしてくれる。そんなサービスを西日本電信電話(NTT西日本)が始めた。

月に約1000円の収入も

 ネットワーク経由で何台ものパソコンを束ねてスーパーコンピューター並の処理能力を実現する技術を「グリッドコンピューティング」と呼ぶ。今回、NTT西日本が始めたのは商用の「グリッドサービス」だ。企業や研究所などからデータの計算や処理を請け負う(下図)。

【NTT西日本グリッドサービスの仕組み】

ユニークなのは、グリッドコンピューティングを実現するのに、NTT西日本の光ファイバーを利用しているユーザーのパソコンを使うこと。「企業ではパソコンを朝から晩まで使っているが、家庭ではまだそれほどではない。これを何かに利用できるのはないかと考えた」とサービスを開発したNTT西日本BBアプリケーションサービス部新ビジネス部の因幡英明担当課長は語る。

 ユーザーのパソコンを借りるため、使用料も支払う。料金は1時間2円だが、1 カ月利用すると1000円程度の収入となる。このようにユーザーに対価を支払うグリNTT西がユーザー参加のグリッドサービス自宅にあるパソコンの余剰パワーを提供し、利用料をGET ッドサービスは他に例がなく「おそらく世界初」(因幡氏)という。

 企業や研究所にとってもスーパーコンピューターを自前で持つよりもコスト面でのメリットは大きい。費用はパソコン100台で130万円(1カ月利用の場合)から(*1)。処理能力は100台で0.5T~1Tフロップス程度。単純には比較できないが、1000台使えば世界のスーパーコンピューターの処理能力ランキングで100位以内に入る程度の処理能力は発揮できることになる。

光ユーザーのパソコンを活用

【動作状況はタスクバーに表示】

 ユーザーのパソコンはそれほど高い処理性能を要求されているわけではない。OSはWindows XP、動作周波数500 MHz以上のCPUなど、現在のパソコンからすれば低い部類に入る。

 むしろ、利用している回線の条件のほうが厳しい。グリッドサービスに応募できるのは、NTT西日本のフレッツ・ユーザーの中でもIPv6のサービスを利用している「フレッツ・光プレミアム」か「フレッツ・v6アプリ」を使っているユーザーのみ。これは、「通常のインターネット回線に比べセキュリティが高く、回線の品質も高いため」(BBアプリケーションサービス部新ビジネス部の三ツ谷智晴氏)。

【支払い状況はWebで確認】

 サービスに参加するには、Webサイトで登録し、専用のアプリケーションをダウンロードして実行する。ソフトを起動すると、定期的にサーバーと通信して、サーバーに処理が必要なデータがあれば、ダウンロードして計算を開始する。ソフトを起動さえしておけば、これらの作業は自動的に行われる。また計算しながら表計算やワープロ、インターネットなどほかの作業も実行できる。


 処理能力の高いパソコンをもてあましているユーザーも多く、ニーズは高いという。またNTT西日本にとっても光回線の活用という課題をうまく見つけた形だ。ただ同社では、このサービスを単なる計算代行業とはとらえていない。IPv6というネットワークを生かせば、パソコンだけでなくネットワークの先には、センサーやネット家電なども接続するなど、先を見据えたサービスも考えられる。

 ユーザーに参加する意欲を持たせるこのようなサービスは今後、新たな形のネット利用を実現する原動力になるかもしれない。