《A》聞く力
 「聞く力」は、コミュニケーションを円滑に進めるために必要な「作法」のようなものといえる。次の5つのポイントを実践してヒアリング時の「聞く力」を強化しよう。

(1)話を遮らない
 相手の話しの流れを尊重して、きりの良いところまで話を遮らないようにしよう。
 ただし、明らかに間違っている場合はその限りではない。早めに中断させて、正しい情報を提供するようにすること。根本的に間違っていることを、最後まで話させてから指摘するのは、相手に恥をかかせようとする意図を感じさせてしまうことがある。

(2)話し易い“空気”をつくる
 相づちを打ったり、感嘆を表明して話しやすい状態にするように心掛けよう。
 ただし、取って付けたような相づちは禁物。あくまで自然な反応であることが原則だ。

(3)メモを取り話の要点を掴む
 人は、自分自身が気になった点や印象に残った点は良く覚えているが、話の隅々まで覚えておくことはまずできない。また、勘違いや話の取り違いなどもよく起きる。
 従って、ビジネス上の大切なやり取りにおいては、発言のキーワード、話の要旨を書きとめておくことが大切である。

(4)あいまいを放置しない
 よく横文字を多様して話をする人がいる。言葉には、複数の意味を持つものが多く、聞く側がそう思って聞いていても話した本人はより広い意味(逆に非常に狭い意味)で使っている場合がよくある。また、新しい人と出会うと難しい単語や言い回しに直面することが時々ある。各自の経験や身を置いた世界の違いによって日常の言語体系も違ってくるからだ。
 自分にとって不確かな言葉や解らない単語、言い回しに出会ったら、そのまま放置せず確認するように心掛けよう。

(5)論点を確認する
 話が長くなったりいろいろな観点から話が出てくると、論点がぼやけてしまうことがよくある。賛成なのか反対なのか、容認しているのか受け入れ難いのかなど、話の大切が部分が掴めない場合には、話の切れ目に、必要に応じて直前の論点を相手に確認することが重要だ。


《B》聞き出す力
 「聞く力」で述べたポイントが話しを聞く「作法」だとすると、「聞き出す力」は、相手の考えや思いを引き出す「技術」と言える。ヒアリングでは、「カウンセリング」などの技法を応用することで、案件に対してさらに踏み込んだ情報を「聞き出す」ことが可能となる。以下は、様々なカウンセリング技法からヒアリングの場面で活用できるものをアレンジしたテクニックである。

(1)会話の促進
 しっかり聴いていることを態度で伝え、相手の言葉を言い換えたりして会話全体の流れを促進する。

(2)感情の重ね合わせ
 話している相手の感情を的確につかみ、自分自身に重ね合わせて受け入れたことを表明する。
 例)感動したこと/憤慨したこと/夢・希望・憧れる気持ち/情熱など

(3)会話の要約
 話の重要な部分はこちらが繰り返したり、明確になるように、具体的になるように要約する。

(4)積極的に関わる
 ◇相手の話を受けて、論理的に帰結する点を表明したり、解釈を試みる。
 ◇話題に関連する自分自身の経験・見聞などを開示する。
 ◇話題に関連して助言を与えたり、情報提供や教訓などを教示する。

(5)矛盾の指摘
 相手の話で矛盾や不一致、混乱している点があれば指摘する。

(6)話を方向付ける
 対象者の話を方向づけて誘導する。焦点を当てる。

(7)質問する
 ◇閉ざされた質問(内に向かう質問)
 例)なぜそれを思いついたと思われますか?
 ◇開かれた質問(外に向かう質問)
 例)その考えを他の場面にも持ち込めないでしょうか?

(8)意味の探求
 話題に含まれる本質的な意味を探求する。
 例)会社にとって、部門にとって、顧客にとっての意味。