中国公安省と米連邦捜査局(FBI)は2007年7月24日、WindowsとOfficeの海賊盤を大量生産していた偽造団を摘発したと発表した。

 米中双方の捜査当局から成る捜査班が7月6日~16日に、中国広東省、上海、北京に点在する、ディスクの製造拠点、パッケージの包装拠点、出荷拠点など6カ所を強制捜査。広東省の製造拠点では、偽造の元になる正規盤22枚、Windows XP/Vista、Office 2007の偽造盤7万枚、偽のライセンス証書23万枚、説明書・外箱・ホログラム各6万枚などを押収した。併せて、偽造団の主要メンバー14人を逮捕したという。上海の拠点では、シマンテックのソフトウエアの見本品、光ディスクの表面印刷用のフィルム、作業用のパソコンなどを押収し、11人を逮捕した。

中国から欧米に密輸

 調べによると、偽造団は数十万枚にわたる海賊盤を製造し、1枚当たり数十元~数百元(1元は約16円)と正規価格の10分の1程度で海外に出荷していた疑い。密輸先は米国、英国、イスラエル、オーストラリアなどとみられ、これまでに分かっているだけで1000社以上の業者が海賊盤の流通に関与していた。偽造枚数は少なくとも数十万枚に上るという。

 偽造団のリーダー格とみられる容疑者は、かつて米国に在住していたが、2003年2月に海賊盤の販売行為で摘発を受けていた。同容疑者は逃亡後、改名して再び海賊盤の作成に手を染めていた。中国国内に多数の協力者を作り、インターネットで海賊盤の販売情報を流布。さらに米ロサンゼルスで、協力者とともに複数の会社を設立し、海賊盤の運送や郵送などを手掛けていたという。

 中国公安省では、2006年初頭に上海で海賊盤光ディスクを販売している不審者を発見し内偵を開始。この結果、偽造団が米国内の犯罪者グループと結びついて多国籍の密売システムを構築していることをつかんだ。

 この情報を基に中国公安省は、2006年6月にFBIに共同捜査を要請。FBIも2006年10月に、米国内の偽造団を調査した結果として広東省深セン市内で海賊盤が生産されていることを突き止め、摘発に向けた支援を中国側に要請した。これを受けて両者は2007年3月に捜査班を設置。証拠集めと摘発方法の検討を共同で進め、今回の摘発に至ったという。

洞窟や廃墟にライン置き密造

 FBIの北京駐在員であるSteven Hendershot氏は、海賊盤ソフトが出回る背景として「彼らにとって新しい製品を製造することは非常に困難だが、他人の物をコピーするのは非常にたやすい。利益率も非常に高く、85~90%に達する。海賊盤ソフトは海賊盤音楽CDなどと共に販売されているが、利益率では海賊盤音楽CDをさらに上回る」と説明している。

 公安省治安管理局副局長の徐瀘氏は、偽造団の一般的な特徴について「偽造団は主に欧州から生産設備を密輸入し、暗室や洞窟内、廃墟となった工場や民家など人目に付かないところに生産ラインを設置している。偽造団の主要メンバーは潜伏しており、しかも潜伏先が海外であるケースが多く、摘発を困難にする一因となっている」と説明する。

 また徐氏は、中国公安当局の取り組みとして、「我々は海賊盤の撲滅のため、海賊盤の生産ラインの摘発を積極的に進めている。1996年に最初の摘発をして以来、231本のラインと510人の容疑者を摘発してきた。これは年産2.2億枚相当の規模になる」と語った。