ヤフーと日本音楽著作権協会(JASRAC)は2007年7月25日、動画投稿サイトにおける音楽著作物の二次利用について合意したと発表した。ヤフーが同日本格運用を始めた動画投稿サイト「Yahoo!ビデオキャスト」において、JASRACが管理する音楽著作物を使用した動画をユーザーがアップロード可能にした。

 一般に動画投稿サイトでは、権利者に無断で音楽や映像を使用した動画がアップロードされるケースが後を絶たない。今回の合意により、Yahoo!ビデオキャストでは、ユーザーが合法的にJASRAC管理曲を使用可能になる。また、音楽著作物の二次利用には音楽著作権使用料が発生するが、この費用はヤフーが負担し、ユーザーが支払う必要はない。

 ヤフーは2007年初頭から動画投稿サイトの準備を進めており、当初から著作権や著作隣接権に最大限配慮する姿勢を示している。音楽著作権の扱いについても、準備の早い段階でJASRACに対しガイドラインの作成を要望していた。

 これを受けてJASRACは、2007年6月に「動画投稿(共有)サービスにおける利用許諾条件について」と題する文書をまとめ、動画投稿サイトを運営する約40社に通知していた。「その後、大手の動画投稿サイト数社から問い合わせがあり、動画投稿サイトでの合法的な音楽の使用について協議している。ヤフーからは『許諾条件に完全に準拠する』との申し出をいち早く受けたため、許諾も最初に出すに至った。今後、他の大手動画投稿サイトに対しても、早晩同様の許諾を出すことになるだろう」(JASRAC 広報部)とする。

 ヤフーではユーザーに対し、動画に採用された音楽を特定するため、使用した音楽などをタグ形式で記載しておくよう求める。また、将来的には楽曲のメロディを解析して曲名を検索する技術を実装することで、JASRACへの許諾申請作業の負荷を軽減することを狙う。動画投稿サイトの音楽使用料はストリーム形式の音楽配信に準じ、音楽の場合 は広告料等収入の2.8%、音楽以外の一般娯楽は同2%を原則としている。ただ し、個人が制作・投稿する作品についてはこれと別の規定を設ける方針で、JA SRACで検討を進めている。

 なお、今回のサービスで現在可能な利用形態は、音楽を自分で演奏したり歌ったりすること、家族を映したホームビデオで子供が歌っているところを撮影したもの、などである。音楽CDなどの音源をそのまま動画のBGMとして用いることはできず、これを実行するとヤフーにより直ちに削除される。これは、JASRACが管理しているのは著作権本体だけであり、原盤権や実演権といった著作隣接権は元々JASRACの管理外であるためだ。今後、日本レコード協会など著作隣接権の関連団体との交渉がまとまれば、音楽CDなどの使用も可能になる可能性があるが、現段階では未定である。

■変更履歴
第5段落において、「将来的には歌を解析してテキスト化する技術を開発する ことで」とあるのは、「将来的には楽曲のメロディを解析して曲名を検索する 技術を実装することで」の誤りです。音楽使用料の料率を「音楽の場合は広告 料等収入の2.8%、音楽以外の一般娯楽は同2%である」と記載しておりました が、個人が制作・投稿する作品についてはこの規定は適用されず、現在検討中 の新料率を適用することになります。以上、お詫びして訂正致します。 [2007/07/26 12:00]