マイクロソフトは2006年11月2日、Webブラウザー「Internet Explorer(IE) 7」日本語版の提供を開始した。同社のWebサイトより無償でダウンロードできる(図1)。現時点で公開しているのは「Windows XP Service Pack 2」「Windows XP Professional x64 Edition」「Windows Server 2003 Service Pack 1」「Windows Server 2003 x64 Edition」「Windows Server 2003 ia64 Edition」向けのIE 7。2006年11月から順次発売する予定の次世代OS、「Windows Vista」はIE 7を標準で搭載する。以下、公開されたIE 7正式版の画像を交えつつ、主な特徴を紹介する。

使い勝手、操作性は大きく変化

 まず、デザイン面。従来のIE 6に比べ、メニューバーやツールバーの配置が大きく変わっている(図2)。IE 6は画面の上からメニューバー、ツールバー、アドレスバーの順で表示していた。IE 7ではアドレスバーが画面の最も上に移動し、ツールバーボタンは全体に小さくなって、配置が変わっている。例えば「戻る」「進む」ボタンはアドレスバーの左隣、「更新」「中止」ボタンはアドレスバーの右隣に移動した。

 アドレスバーの下には「お気に入りセンター」と「お気に入りに追加」のボタンが置かれ、その右隣に展開中のWebページがタブの形で一覧表示される(タブ機能については後述)。タブ一覧の右隣には「ホーム」「メールを読む」「フィード」「印刷」「ページ」「ツール」「ヘルプ」の各種ボタンがある。

 IE 7はメニューやボタンを統廃合したり、配置を変更するなど、よりシンプルに、より使いやすくするための工夫が随所にみられる。例えば「お気に入り」の場合、以前のIE 6では初期設定で「お気に入り」ボタンと「お気に入り」メニューの2つが表示され、機能的に重複している部分があった。IE 7では最初は「お気に入りセンター」ボタンしか表示されない。メニューバーは、[Alt]キーを押すまで非表示になっている。さらに、IE 6では独立したボタンだった「履歴」も、IE 7では「お気に入りセンター」ボタンから開くことになる。ただ、以前のIEに親しんだユーザーは慣れるまで戸惑うだろう。特に、使用頻度の高い「戻る」「進む」「お気に入り」「ホーム」の各種ボタンに関しては、ついうっかりマウスで以前あった場所をクリックしてしまう。

 表示機能では「ページズーム」が追加された。Webページのテキストだけでなく、画像も含めて画面を拡大表示するため、CSS(※1)でフォントサイズを固定している場合にも拡大できるようになった(図3)。

 タブブラウジング機能も大きな特徴だ。この機能を使うと、複数のWebページを1つの画面内に表示して、タブで切り替えながら閲覧できる。「Firefox」「Opera」など、ほかのWebブラウザーには以前から備わっていた機能だ。IE 6では、「MSN サーチ ツールバー with Windows デスクトップ サーチ」を組み込まないとタブ機能が使えなかったが、IE 7でようやく標準搭載となった。ドラッグ・アンド・ドロップでタブの位置を変えるなど、MSN サーチ ツールバーで追加されるタブ機能ではできなかった操作がIE 7では可能になっている。

 展開中のタブはアドレスバーの下に横一列に表示される。新しいタブを開くには、タブ一覧の右端にある空白のタブをクリックするか、Webページのハイパーリンク上で右クリックし、現れたメニューで「新しいタブで開く」を選択する。

 タブ一覧の左端にある「クイックタブ」ボタンを押すと、展開中のタブをサムネイルのように表示してくれる。サムネイルをクリックすれば当該のWebページを表示する(図4)。

 「お気に入り」欄でフォルダー名の右端に出てくる矢印のアイコンをクリックすると、フォルダー内のWebページをタブで一斉に開くこともできる(図5)。タブ機能を生かして、複数のWebページを起動時に表示する「ホーム ページ」として登録することも可能となった。

Webサイトを見たままに印刷

 ウインドウ右上には新しく、検索ボックスが配置されている。検索サイトを開かなくても、この欄からいつでもインターネット検索が可能だ。マイクロソフトのMSNのほか、Yahoo!、Googleなどさまざまな検索サイトをこの欄に登録しておき、ドロップダウンリストから随時切り替えて使える(図6)。

 使い勝手の点で画期的なのは、ブラウザーに表示されたWebページを見たままに印刷できる点だ。従来のIE 6では、Webページの作り次第で画面の端が切れて印刷される不具合が起きる場合があった。IE 7では、初期状態でWebページを1ページの幅にぴったり収めて印刷する設定になっている(図7)。

 RSS(※2)に対応したのも特徴の一つだ。IE 7でRSSが配信されているWebサイトにアクセスすると、専用の「フィード」ボタンがオレンジ色に変わる。このボタンから、好みのRSSフィードを「お気に入りセンター」の「フィード」欄に登録できる(図8-図9)。「インターネット オプション」の「コンテンツ」タブにある「フィード」欄で「設定」ボタンを押すと、購読中のフィードの更新スケジュールや、「フィードが見つかった際に音を鳴らす」などの通知機能を設定することもできる。

セキュリティ機能も大幅強化

 IE 7には多数のセキュリティ対策機能が追加されている。代表的なのは、フィッシング詐欺(※3)対策機能だ。IE 7のフィッシング詐欺対策機能は、ユーザーが正当なWebサイトと報告したアドレスのリストと、アクセスを試みたWebサイトのアドレスを比較し、アクセスを試みたWebサイトに対して、フィッシング詐欺にありがちな特徴があるかどうか調べ、特徴が見つかればサイトのアドレスをマイクロソフトに送信。既知のフィッシング詐欺サイトのリストと照合する。

 以上の分析結果から、「疑わしいWebサイト」と判断した場合は黄色い警告画面が出現。明らかにフィッシング詐欺サイトと判定すればアドレスバーが赤くなり、アクセスをブロックする(図10)。ユーザーがフィッシング詐欺を発見した場合の報告機能も備えている。

 また、偽のサイトと見分けやすくするために、以前はブラウザーの右下に小さく表示していたSSL(※4)対応サイトの鍵アイコンを、目立つようにアドレスバーの横に表示するようになった。鍵アイコンをクリックすると、SSLの証明書の情報が表示される(図11)。

 プライバシーにかかわる情報を表示・設定する画面も改良された。従来はインターネット一時ファイル/Cookie/Webサイトの閲覧履歴を消す画面と、フォームに入力したパスワードとデータの履歴(オートコンプリート)を消す画面が別々で分かりにくかった。IE 7では、これらプライバシーにかかわる情報を1つの画面に集め、1つのボタンで消すことができるようになった(図12)。

 Windows XP SP 2から搭載した「アドオンの管理」機能も強化されている。後から組み込んで機能を追加するためのアドオンソフトの有効/無効が設定できるだけでなく、ActiveX コントロールに関しては削除が可能となった。

 さらに、IE 7のセキュリティ設定が推奨以下の状態になっていると警告を発する機能が追加された。例えば「ツール」→「インターネットオプション」→「セキュリティ」タブで「レベルのカスタマイズ」ボタンを押すと、詳細なセキュリティ設定項目が現れるのはIE 6でもおなじみだ。ここに、チェックすると表示が赤く変化する「(セキュリティで保護されていない)」という項目がある。この項目を有効にすると警告のダイアログボックスが出現し、その後、情報バーに常に警告が出るようになる。情報バーをクリックすれば、安全な設定に自動で戻してくれる(図13)。

 IE 6とIE 7を共存させることはできない。ただし、IE 6で登録していた「お気に入り」は、IE 7のインストール時に自動的に移行される。一度インストールしたIE 7を削除してIE 6に戻すことも可能だ。「コントロールパネル」にある「プログラムの追加と削除」に「Windows Internet Explorer 7」という項目が出現するので、それを選択して「削除」ボタンを押せばいい。

 なお、マイクロソフトはWindowsの「自動更新」機能によるIE 7の配布を正式版の公開から6カ月後に開始するとしている。つまり2007年5月2日以降に自動更新が有効になっていると、IE7が「優先度の高い更新プログラム」としてバックグラウンドで自動的にダウンロードされる。同社のダウンロードセンターでは自動更新によるIE 7配布を無効にするツール「Blocker Toolkit」も提供されている。



※1 CSS(Cascading Style Sheets)

HTMLで書かれたWebページのレイアウトやデザインなどを設定するための規格

※2 RSS(Rich Site Summary)

Webページのアドレス、見出し、要約、更新時刻などを記述したフォーマットのこと。最近ではこの仕組みを使って、新しく更新されたニュースの見出しや、新着コンテンツのお知らせをユーザーに配信するWebサイトが増えている。なお、「RSSフィード」とはWebサイトがRSS形式のデータを提供することや、提供されるRSSデータそのものを指す

※3 フィッシング詐欺

著名な企業を装ったメールを送付して、ユーザーを偽のWebサイトに誘導し、個人情報の入力を促して盗み取ろうとするインターネット詐欺のこと

※4 SSL(Secure Sockets Layer)

WebブラウザーとWebサーバー間の通信を暗号化して安全にデータをやり取りするためのプロトコル(通信時の取り決め)。Internet ExplorerやFirefoxなどの主なWebブラウザーはSSLに対応しており、個人情報の入力が必要なWebサイトなどで広く利用されている

■注記
この記事は5月9日に掲載した「5年ぶりに大変身したInternet Explorer 7 公開された日本語ベータ版を速攻レビュー」を基に、製品版での評価を加え、新たに書き起こしたものです。