マイクロソフトは2006年9月4日、Windows Vistaのモバイルパソコン向けの特徴についての説明会を開催した。「米国では、モバイルパソコンは大きな成長分野。1年で20%と、デスクトップパソコンの3倍程度の伸び率を示している。日本でも、パソコン出荷台数の55%をノートパソコンが占めている」(Windows本部 ビジネスWindows製品部の飯島圭一シニアプロダクトマネージャ)。こうした背景があって、Vistaではモバイルパソコン向け機能を大幅に強化する。

 その代表的なものが、復帰の高速化。パソコンの利用を中断して別の場所に運び、また利用を再開する、といった動作を頻繁に繰り返すことが多いノートパソコンでは重要なテーマだ。Vista搭載のパソコンでは、「スタンバイ状態から2秒以内で復帰することが、ロゴ取得の条件」(Windows本部 パートナーマーケティング部の中里倫明シニアテクニカルエバンジェリスト)。

 そのためにVistaが導入する技術の1つが、フラッシュメモリーを搭載したハードディスク(HDD)を活用する「Windows ReadyDrive」。パソコンが休止状態に入る際、通常メモリーの内容はHDDに書き出される(これをハイバネーションと呼ぶ)が、Windows ReadyDriveではフラッシュメモリーに書き出しておく。電源復帰時、HDDからデータを読み出すのにかかる時間を削減できるため、これまでよりも高速に元の状態を復元できる。HDDへのアクセスが少なくなる分、消費電力も減らせるという。

 併せて、電源管理の方法も変更する。従来の「スタンバイ」と「休止状態」を組み合わせた、「スリープ」という状態を新たに導入するのだ。ノートパソコンでは、スリープ状態に入ると、まず従来のスタンバイと同じく、メモリーに給電を続けてメモリー内のデータを保持する状態になる。その後一定時間(初期設定では18時間)経過するか、バッテリーの残量が少なくなると、メモリーの内容を自動的にHDDに書き出し、従来の休止状態に入る。バッテリーが残っている状態なら常に高速な復帰が可能になるし、バッテリーが切れてもデータはHDDに保存されているため、作業中の状態をそのまま復元できる。なおデスクトップパソコンではスリープの動作が異なり、スタンバイと休止状態を同時に実行する。電源ケーブルを途中で引き抜かれても、データを失わないようにするための工夫だ。スリープはVistaにおける「電源オフ」の標準の状態に位置づけられており、スタートメニューの下に表示される電源ボタンをクリックすると、初期設定ではスリープ状態になる。

 電源管理も含め、ノートパソコンで必要な設定を1画面にまとめた「Windowsモビリティセンター」も新しい特徴だ。ディスプレイの明るさや音量、無線LAN接続などを1つの画面で設定できる。ノートパソコンでプレゼンテーションをする際に適した「プレゼンテーション設定」というメニューも用意されている。スクリーンセーバーをオフにする、デスクトップの壁紙をプレゼンテーション用の画像に切り替える、バッテリー残量低下などのシステムからの通知を無効にする、などの細かな設定が可能だ。

 これ以外には、外付けのフラッシュメモリーをキャッシュとして利用し、システムのパフォーマンスを向上させる「Windows ReadyBoost」や、サブディスプレイに重要な情報を表示して容易に確認できるようにする「Windows SideShow」などが紹介された(関連記事)。タブレット機能(関連記事)や、サーバーと自分のパソコンとの間でデータを同期する機能の強化、ノートパソコンの盗難などからデータを守るセキュリティ機能などについての説明もあった。

 なお日経パソコンの9月11日号では、「Vistaを支えるテクノロジー」と題して、Vistaに搭載される14の主要技術を解説する。新たな電源管理の仕組みや、Windows ReadyDrive、Windows ReadyBoostといったパフォーマンス向上技術、Windows SideShowなどここで登場した技術についても詳細に取り上げている。ぜひ、併せてご覧いただきたい。