ユーザーによっては「オープンソースのソフトエウエアはちょっと…」と敬遠する方もいる。その理由の一つに,インストールや設定の難しさがある。このような難しさを克服してこそ,そのソフトウエアを利用できるという意見もあるだろうが,オープンソース・ソフトウエアはプロの技術者が自分で使うために開発されたものが多く,確かに初心者に親切でないものもある。

写真1●Linux版MySQL Control Center
写真2●Windows版MySQL Control Center
写真3●テーブルの項目設定
写真4●テーブル作成画面
写真5●Query Window画面
写真6●ユーザー追加画面
写真7●SQL Debug(ユーザー削除時)
 このようなハードルを下げるため,MySQLの開発元であるMySQL ABは,GUIツール「MySQL Control Center」を開発中だ。データベースの作成からデータのエントリまで,GUIベースで簡単に操作できる。まだベータ版であり,現時点では不具合や問題点も抱えているが,MySQL“純正”のツールであることから,MySQLの重要なコンポーネントになっていくものと思われる。

インストールは簡単

 MySQL Control Centerは,MySQLと同様にMySQLの公式サイト(http://www.mysql.com)からダウンロードして利用できる。現時点で,Linux版とWindows版がバイナリで公開されている。また,ソースコードをダウンロードすることも可能である。Linux版はx86向けでglibc 2.2およびglibc2.3で動作する。Windows版はWindows 95/98/NT/2000/XPで稼働する。

 MySQL Control Centerは,バイナリとなっているので,インストールも非常に簡単である。Linuxでは,解凍してシンボリック・リンクを設定するだけである。Windowsでは解凍してSetup.exeを実行するだけでよい。

 インストールがすんだら早速MySQL Control Centerを実行してみよう。実行するとローカル・マシン内のMySQLに接続して内容を表示するようになっている(写真1[拡大表示])。外部のサーバーへのリモート接続も可能である。

 以下,MySQL Control Centerの利用者が多いと思われるWindows版で使用方法を解説しよう(写真2[拡大表示])。

 ウィンドウの左側は,データベースの情報が表示される。右側は,サーバーに関する設定項目がツリー上に整理されている。ツリーの[Databases]は,データベースおよびテーブルに展開が可能だ。テーブル内のRow設定まで参照することができる(写真3[拡大表示])。

 [Server Administration]は,サーバーのステータスが表示される。statusコマンドと同様の内容である。[User Administration]は,ユーザーが表示される。

データベース,テーブル,ユーザーの作成や変更が可能

 MySQL Control Centerでは,データベースやテーブルの作成が可能である。データベースの作成は,新たなデータベース名を入力するだけだ。

 テーブルの作成手順は以下のようになる。MySQL Control Centerで,新規テーブルの作成を実行すると「Create Table」ウィンドウが開く。上半分は,Filedを設定するためのエリアであり,下半分は,[Filed Properties][Indexes][Table Properties][Alter Table Options]タブによって,詳細な設定が可能である。

 写真4[拡大表示]では,テーブルの設定を行っている。プルダウン・メニューから,Table Typeを選択して設定する。

 テーブルのアイコンをダブル・クリックすると,「Query Window」ウィンドウが開く。テーブルに格納されているデータが表示されるので,挿入/更新/削除が可能だ。写真5[拡大表示]では,2行目のデータを入力している。ただし,日本語の入力には,2バイト文字の取り扱い(文字数のカウント)に問題があるので注意が必要だ。

 データベース・ソフトウエアの中でも最も煩雑なのが,セキュリティ管理である。MySQLでは,テーブルに対してユーザーの権限を設定することになる。SQLでは,GRANTステートメントを使用するわけだが,非常に長い内容になってしまう。MySQL Control Centerでは,「Add User」ウィンドウにより,簡単に設定が可能である。

 写真6[拡大表示]では,新規のユーザー「User1」を作成し,テーブル「memberlist」に権限を設定している。

 「MySQL Control Center」の処理内容は,SQL文としてメッセージ・ウィンドウに表示されている。そのため,設定作業を「MySQL Control Center」で行い,処理内容をSQLステートメントで保存することも可能だ(写真7[拡大表示])。ユーザー削除などは,複数のSQL文で行っており,効率的なSQL文を採取することができる。

 GUIツールは,その便利さゆえに技術者の成長を阻害する懸念もある。しかし,ユーザーのスキル・レベルには大きな隔たりがある。MySQL Control Centerが,その隔たりを解消する役割や新規利用を推進する役割を担うのは確かである。

 最後に,MySQLの事例を紹介する海外記事が出ていたので紹介しておこう。米Computerworldのサイトに10月15日に掲載された「MySQL Breaks Into the Data Center」と題する記事で,米Associated Press(AP通信)や大手ケーブルTV会社Cox Communicationsの事例が紹介されている。

 日本国内では,MySQLはパーソナルなイメージを持たれている。しかし,海外では,巨大なデータベース処理にも耐えられるデータベースとして採用されている。日本でも海外に負けない事例がある。電子商店大手である楽天がMySQLを採用している。IT Proオープンソースにもインタビュー記事が掲載されているので,ご一読いただきたい。

佐藤栄一(Satoh Eiichi)

■著者紹介 佐藤栄一(さとうえいいち)
ゼンド・オープンソースシステムズ株式会社 アーキテクト MySQL担当。ゼンド・オープンソースシステムズは,オープンソースによるシステム構築を提案し,情報化投資削減の実現を目指して平成14年12月に設立。PHPのコア技術者が設立したイスラエルZend Technologies社と提携関係にあり,Zend製品の販売,サポートおよびLAMPおよびLAPPによるシステム構築を推進している。平成15年8月より,MySQL AB社のリセーラとしてライセンス,サポート,コンサルティングの提供を行っている。