図1●システム構築費用の概算
ソフト保守費用は別。開発期間は3週間,要員は7人で,作業は内製した
図2●今回開発した「eクルマさがし」のシステム構成
既存の中古車の売買仲介サイト「カーステーション」で利用していたDBサーバーやスキーマをそのまま流用した。ソフトの種類/バージョンをそろえることでメンテナンスの手間も軽減した
 収益計画を読みにくい消費者向けWebサイトには,構築や運用のコストをかけにくい。カーコンビニ倶楽部を運営する翼システムは,新車購入を検討する人向けのポータル・サイト「eクルマさがし」(http://ekuruma.carstation.co.jp/)を構築するに当たり,既存システムをフル活用して,出費を抑えた。

 eクルマさがしの主な機能は,車種や価格,ジャンルなどをキーにした新車検索である。利用者が目的の車種を見つけたら,提携している新車購入支援サイト「オートバイテル」にアクセスを受け渡す。2003年6月のサービス開始時点で,国産10メーカー,輸入車23メーカーの375車種(カタログは約500)が登録されている。

 翼システムがこれに投資したコストは,PCサーバー4台分の320万円,高速化ツールZend Performance Suite(ZPS)5本分(うち1本は評価・開発用)の200万円,合計で520万円。これに,20人月強の人件費を加えたものが,正味の開発コストである(図1[拡大表示])。

 その他の部分は,WebサーバーがApache,アプリケーション実行環境がPHP,OSがRed Hat Linux(無償ダウンロード版)と,オープンソースで固めた。

 稼働後にはZPSの保守費用がかかるものの,既存システムと製品やバージョンを揃えることで,運用作業の効率化も図った。

既存システムと同じソフト/DB

 利用した既存資産は,中古車の売買仲介サイト「カーステーション」のシステム。Red Hat Linux上にOracleを搭載したDBサーバー1台と,同じくRed Hat Linux上にPHPとApacheを搭載したWeb/APサーバー2台で稼働させている。

 eクルマさがしは,これに専用のWeb/APサーバー4台を追加する形で構築した(図2[拡大表示])。新車も中古車も車種の情報は共通なので,DBサーバーはデータを含めてそのまま流用できる。両システムに対するアクセスは,それまでも使っていた負荷分散装置WSD(Web Server Director)1台でまとめて受け付け,URLごとに振り分ける。各システム内は,ラウンドロビンで負荷を分散させる。

 これなら追加投資がWeb/APサーバーに限定される。既存システムとソフトのバージョンを揃えることでパッチ適用などの運用管理も楽になる。

DBがボトルネックに

 もっとも,単純にWeb/APサーバーを追加するだけだとDBサーバーがボトルネックになることが目に見えていた。eクルマさがしが想定するアクセス数は,月間2000万ページ・ビュー(PV)とかなり多い。カーステーションは現在,月間約3万PVに過ぎず,これほどけた違いの負荷に耐えられるようにはDBを設計していない。

 しかも,eクルマさがしは検索条件が比較的複雑である。カーステーションの方は主に自動車販売業者が対象なので,型式類別という車種固有のコードで検索するが,消費者向けのeクルマさがしでは検索キーを増やさざるを得ない。特に詳細条件検索では,メーカー,価格,ジャンル,定員,サイズ,排気量,駆動形式,トランスミッション,燃費,安全装備といった複数の項目を検索のキーとする。

 さらに,eクルマさがしは,ほとんどのページでDBアクセスが発生する作りになっている。例えば,「メーカー検索」「詳細条件検索」はメーカー・マスター(約100レコード)から,「新型車一覧」「車種一覧」は車種モデル・マスター(約3000レコード)から,「車種概要」「スペック徹底比較」はグレード比較マスター(約7000レコード)から,「閲覧ランキング」はアクセス数トランザクション・テーブルからデータを取得して動的にHTMLを生成する。


(次回に続く)