(注:記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

MySQLは,主要な商用DBMSにそん色ない処理性能を備え,多くの実績も持つ。ストアド・プロシージャ,トリガー,ビューは,開発中のバージョン5.0で対応予定だ。複数のデータストア・エンジンをテーブルごとに使い分けられるため,速度や信頼性など,優先する目的に応じ適切に選択することが活用のポイントになる。

表1●MySQLを採用したシステムの例
写真1●phpMyAdmin
WebブラウザからMySQLのテーブル作成や検索,データ登録などの管理作業を行うことができる。phpMyAdminのサイト(http://www.phpmyadmin.net/
phpMyAdmin/
)でデモを見ることができる
表2●MySQLの概要
 MySQLは,きわめて多数のアクセスが集中するサイトのバックエンドを支えている。

 海外においては,Yahoo! Financeを含む10を超える米Yahoo!のアプリケーション,米Google.comおよび米Infoseekでの検索以外の部分といった,主要ポータル・サイトのシステムに採用されている。

 Slashdot.org,Freshmeat.net,Linux.comなどオープンソース・コミュニティの中心となっているサイトもMySQLで動いている。また米Cisco Systems,スウェーデンEricsson,フィンランドNokiaなどもMySQLのユーザーである。

 もちろん日本においても多くの企業がMySQLを採用している。日経システム構築でも,多くのユーザー事例を掲載してきた(表1[拡大表示])。

 「LAMP」という言葉もある。すなわちLinux,Apache,MySQL,PHPがオープンソースの標準的プラットフォームとされているのである。

他の商用DBMSとそん色ない性能

 MySQLは,スピードと使いやすさを追求して開発されている。

 2002年2月に米国のeWEEKは,MySQL,Oracle9i,DB2,Microsoft SQL Server2000,Sybase Adaptive Serverを対象に,Web書店システムを想定したベンチマークを実施しているが「全体として,Oracle9iとMySQLは,最良のパフォーマンスおよびスケーラビリティを示した」と評価している。*1

 「ダウンロードしてすぐに使える」という使いやすさも,重要な開発方針のひとつだ。Webブラウザから使用できるphpMyAdminと呼ぶオープンソースの管理ツールもある(写真1[拡大表示])。

 バージョンアップも頻繁であり,最低でも毎月1回は新しいバージョンをリリースすることを目標としている。記事執筆時点(2003年5月下旬)の安定版のバージョンは4.0である。ただし,日本語版で最も安定しているのは3.23になる。4.1および5.0もすでにアルファ版が公開されている。

 また,MySQLは多数のOS上で稼働する。LinuxやSolaris,FreeBSDといったUNIX系OSはもちろんのこと,Windows 95/98/Me/NT/2000/2003でも広く使用されており,組み込みDBMSとして採用された実績もある。UNIX系OSではそのほかAIX,Mac OS X,HP-UX,AIX,QNX,NetWare,IRIXで稼働している。

 開発言語もC/C++,PHP,Java,Ruby,Perl,ODBC,.NET,Common Lisp,Lasso,Python,Pike,C++,TCL,Delphi,Guile,Rexx,Dylanなど多岐にわたる。

ストアド,トリガー,ビューが開発中

 一方,制限としては,他の主要なDBMSが持つ機能のうち,開発中のものもいくつかあるという点がある*2表2[拡大表示])。サブクエリー*3 は,現在アルファ版の4.1から使用できる。ストアド・プロシージャ*4,トリガー*5,ビュー*6,カーソル*7といった機能は,5.0でサポートされる予定である。

 これも実用性を重視するポリシーがあってのことだ。すなわち「すばらしい機能であっても,スピードを犠牲するのであれば採用しない」という方針のもとに開発を行っているのである。

 MySQLでサポートしているSQL構文の詳細はMySQL ABがインターネットで公開している*8ので,そちらを参照していただきたい。


立岡佐到士(たつおか・さとし)氏

株式会社ソフトエイジェンシー 代表取締役
同社の共同創業者でもある。MySQLの公認代理店として,MySQLを利用したシステムを多数構築。2003年3月より同社代表を務める。著書に『実例で身につける!MySQL×PHPによる本格Web‐DBシステム入門』(技術評論社),『MySQL活用ガイド』共著(秀和システム)など。


(次回に続く)