(注:記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
Linuxを代表とするオープンソース・ソフトウエアはコスト削減やセキュリティを重視するユーザーによる採用が広まってきた。基幹システムに必要な機能はLinuxに揃ってきたが大規模環境での性能や業種業務向けソフトの不足などが課題として挙げられる。
経済産業省や総務省が2003年度にオープンソース・ソフトウエアの検証に乗り出す。企業システムにおいても,景気後退にともなうコスト削減要求の高まりを受け,オープンソース・ソフトウエアを検討する企業が増えている。
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図1●IDC JapanによるサーバーOS市場予測(2003年3月発表) サーバーに搭載されて出荷されたOSおよび,ライセンスが販売されたOSの台数 |
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図2●インターネット上のサーバーのOS別シェア 調査会社英Netcraftによる2000年7月発表の調査結果(http://www.netcraft.com/survey/ index-200007.html)に基づく |
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表1●Linuxを採用したシステムの例 |
既に,Linuxはインターネット・サーバーの定番として定着してきた。オープンソースのRDBMSであるPostgreSQLやMySQLも,コスト削減の切り札のとして採用が広がりつつある。オープンソースのWebアプリケーション開発言語PHPで構築されたサイトも増えてきた。
Javaによる開発ではWeb開発フレームワークのStrutsやサーブレット・コンテナのTomcat,単体テスト・ツールのJUnitなどのオープンソース・ソフトウエアは今や欠かせない存在になりつつある。
この連載では,これらのオープンソース・ソフトウエアでどこまでできるのか,その特徴は何か,そして,その限界はどこか――を解説していく。
第1回である今回は,OSであるLinuxを中心に,オープンソース・ソフトウエアの現状,強さと弱みについて俯瞰してみることにしよう。
Linuxはどこまで普及したか
まず,現在Linuxはどこまで普及してきたのだろうか。販売されたOSのシェアについては,調査会社がレポートを発表している(図1[拡大表示])。IDC Japanの調査結果によれば,2002年のサーバーOS市場での台数シェアは7.2%である。
ただし,これらは,サーバーの出荷時にインストールされていたOSおよび,パッケージやライセンスの形で販売された数に基づいたものだ。Linuxが無償で使用された場合までは把握できていない。そのため,実際にはこの値より多くのLinuxサーバーが使用されていると考えられる。
企業や組織内で使用されているサーバーの把握は困難だが,インターネットに存在するサーバーについては,サーバーの応答からOSの種類を集計した調査がある。調査会社の英Netcraftが2000年7月に公表したもので,それによると,動作している約800万サーバーのうちLinuxが最も多く約227万台で29.99%を占めていた(図2[拡大表示])。
今後の伸び率については,IDG Japanのリサーチでは,UNIXやWindowsに比べて高い成長率が見込まれており,2007年には15.9%のシェアを占めると予測している。
本誌にも,Linuxによる多くのシステム構築事例が紹介されてきた。表1[拡大表示]に示したように,ECサイト,ポータル・サイト,経理システムや販売管理システム,SCM,ASP(Application Service Provider)など,基幹システムを含む様々な用途で採用されている。変わったところでは,製鉄所で高炉制御に採用されている例もある。
Linux,オープンソース・ソフトウエアが普及した理由としては,まず無償で使用できるという点が挙げられる*1。だが,それだけではない。ソース・コードが公開されており,欠陥を誰でも検証できるためセキュリティが高い。すべての情報がオープンになっており,技術力さえあれば誰でも修正,改良が可能であり,特定のベンダーに縛られにくいという利点もある。政府や自治体で評価されているのは,こういった観点も大きい。
太田俊哉(おおた・としや)氏日本Sambaユーザー会 代表幹事 |