Oracle Enterprise Manager 10g Grid Control

写真1●Grid Controlのコンソール画面のホームページ
写真1●Grid Controlのコンソール画面のホームページ
OEMが管理するシステムの概要や状況が表示される

 Grid Controlは,企業のリソースを管理し,グリッド全体のパフォーマンスを分析するための機能を提供する(写真1[拡大表示])。Grid Controlは,グリッド上にある各Oracleソフトウエア(Oracle Application Server 10gおよびOracle Database 10g),ホスト,記憶デバイスおよびサーバー・ロード・バランサによるアプリケーション全体など,全グリッド環境の監視や管理ができる(写真2[拡大表示])。

 Grid Controlは,Oracle Enterprise Manager 10gのAPM(Application Performance Management)ツールを用いて,グリッド全体の可用性およびパフォーマンスを把握するように設計されている。APMツールはシステム監視と,収集したデータに基づき,グリッド全体のパフォーマンスや可用性を診断していく(写真3[拡大表示])。

 DBAは,ハードウエア,データベース,アプリケーション・サーバーを単一の論理グループにまとめ,グリッド全体を1つの単位として管理できるようになる。DBAはGrid Controlを利用して,グリッド全体の複数のデータベースを監視,診断,変更そしてチューニングを行う。また,DBAは,様々な時間間隔で複数のシステム上のタスクをスケジュールし,他の管理者とタスクを共有し,関連するサービスをまとめてグループ化した管理が可能となる。結果的に,Grid Contorlを用いることで,DBAの作業効率は向上し,1人のDBAの作業範囲を拡大できる。

写真2●Grid Controlのホスト表示
写真2●Grid Controlのホスト表示
管理対象のシステムについて,パフォーマンスと監視項目が一覧できる
写真3●アプリケーションのパフォーマンス表示
写真3●アプリケーションのパフォーマンス表示
各システムのリソースの使用率や応答時間,負荷状況の相関関係を示す

ウイザードで新しいノードへソフトを複製

 Grid Controlは,ソフトウエア・クローニング機能を搭載する。Oracle Enterprise Manager 10gの新しいソフトウエア・クローニング機能の使用により,完全なOracleソフトウエアの新規インストールを数分で作成し,グリッド環境におけるシステム展開を迅速,かつ容易に行うことができる。

 ソフトウエア・クローニング機能は,Oracleソフトウエアのインストールをホスト間で複製(クローニング)するための機能である。直感的なウイザードに従って,ユーザーは複製元のシステム上にあるOracleソフトウエアを指定し,そのソフトウエアの複製先となるホストを1つまたは複数選択するだけで,Oracle DatabaseやOracle Application ServerをインストールするORACLE_HOMEがあるディレクトリが自動的に複製される。

 Oracle Enterprise Manager 10gのマルチキャスト機能を利用すると,1回の操作で複数のターゲット・ホスト上に新規クローンを作成できるようになる。ソフトウエア・クローニング機能を利用する唯一の条件は,関係するすべてのシステムにOracle Enterprise Manager 10gのOracle Management Agentが必要となること。また,ユーザーはマスター・インストール・ライブラリを作成でき,このライブラリに保存されているインストール・ファイルはクローニング操作に繰り返し使用できる。

 ORACLE_HOMEのクローニングでは必要な設定も自動的に行ってくれる。例えば,ホスト名,IPアドレス,リスナー設定といった環境依存のプロパティはクローニング・プロセス中に自動的に調整される。

 さらに,クローニング・プロセスの一部として,システム上のすべてのOracleインストールを追跡記録するOracle Universal Installer(OUI)インベントリが自動的に更新されるため,OUI上でインストール履歴が確認できる。クローニング操作はOracle Enterprise Manager 10gの作業としてスケジューリングできる。ネットワークの負荷を最小化するために,システムのオフ時間に実行することも可能である。

Oracleソフトへのパッチ適用を一括で管理

写真4●パッチ管理画面
写真4●パッチ管理画面
利用中のOracle製品に関するパッチ情報を問い合わせる。必要なパッチが見つかった場合,ダウンロードし適用すべきサーバーへ配布する

 Oracle Enterprise Manager 10gは,Oracleソフトウエアのパッチ適用を自動化する機能を新たに提供する。パッチは米Oracleのサポート・サービスが提供しているMetaLink Webサイトからダウンロードされる。Oracle Enterprise Manager 10gから現在のシステム構成で適用されているパッチの状況を確認したり,手動でパッチをダウンロードしたりできる(写真4[拡大表示])。この機能は日本オラクルでも準備中である。

 DBAはOracle Enterprise Manager 10gパッチ・ウイザードを呼び出し,任意のOracle Database 10gまたはOracle Application Server 10gのインストール後に適用可能なパッチを調べる。同時に,パッチ・ウイザードでパッチを選択し,そのパッチが必要なシステムを調べることも可能である。また直接,Oracle Enterprise Manager 10gからパッチの詳細を調べたり,パッチのREADMEファイルを参照したりもできる。Oracle Enterprise Manager 10gでは,重要なセキュリティ・パッチなどの新しい重要なパッチについてユーザーに警告し,そのパッチが必要なすべてのシステムに印を付ける機能があり,セキュリティの向上に役立てることもできる。

MetaLinkと連動したパッチ適用

 このパッチ適用機能を利用するために,次のような初期セットアップが必要となる。

(1)米OracleのMetaLink Webサイトにアクセスする際に使用するユーザー名とパスワードを指定する。
(2)必要に応じて,ダウンロードしたパッチを保存するリポジトリ・キャッシュのサイズ(デフォルトは300Mバイト)を調整する。
(3)MetaLinkからのパッチの選択条件を更新する(随時)。

 Oracle Enterprise Manager 10gの出荷時には,MetaLinkから最新のパッチを選択するための条件がリポジトリに含まれている。時間が経過し,新しいパッチが提供されるようになると,パッチの選択条件を設定することができる。リポジトリの定期的な更新とMetaLinkで利用可能なパッチの条件と同期を必ずとらなければならない。

 Oracle Enterprise Manager 10gパッチ・ウイザードで暫定的なパッチを選択し,MetaLinkからOracle Enterprise Manager 10gパッチ・キャッシュにダウンロードする。DBAは適切なパッチをダウンロード先のシステム上にステージングし,後から手動で適用することも可能だ。さらにパッチ・プロセスを自動化するため,ユーザーがカスタマイズ可能なパッチ適用スクリプトを与えることもできる。このスクリプトは,常駐するOracle Management Agentによって,ユーザーが指定した時間に対象のシステム上で実行される。パッチがシステムに適用されると,インベントリが自動的に更新され,システムの正確なパッチ・レベルが記録される。

 このように自動化すれば常に最新の状態でパッチが適用されることになるが,DBAの判断を必要とする運用方法をとるような考えであれば,ダウンロードのみを自動的に実行し,後でDBAの判断でパッチを適用できるようなことも可能である。このパッチの適用はGrid Controlの機能であり,管理対象のすべてのシステムで利用可能である。