Point
1. 婦人靴売り場で商品の在庫検索や検品作業にICタグを利用

2. 同じフロアにある倉庫で在庫を確認する時間を,顧客1人当たり7分以上短縮

3. 類似商品検索機能の追加による性能劣化を,DBのチューニングで回復

図1●従来は在庫があるかどうかを,離れた場所にある倉庫まで確認にいく必要があった

図2●ICタグを利用した在庫管理システムの構成
入荷,販売といったイベントが起こるたびに,ICタグのIDを読み取ってデータベースに格納する

 三越は4月,東京・日本橋本店1階の婦人靴売り場でICタグを用いた在庫管理システムの稼働を始めた。このシステムは,婦人靴に付けたICタグを売り場に設置したリーダーで読み取ることにより,その場で他の色やサイズの在庫を確認できる。昨年同社が参加した経済産業省の委託事業「平成16年度電子タグ実証実験」で開発したシステムをそのまま実運用している。

ムダな移動をなくす

 これまで三越の婦人靴売り場では,在庫確認に時間がかかるという問題を抱えていた(図1[拡大表示])。婦人靴の総在庫6500足に対して,売り場に並べてあるのは1000足ほどしかない。そのため,顧客が求める色やサイズの婦人靴が売り場にないことも多く,販売員はそのたびに売り場から20メートルほど離れた倉庫まで行って在庫を確認する必要があった。しかし,倉庫に在庫がない場合も多く,売り場と倉庫を往復する時間のムダが大きかった。

 この問題を解決する手段として選んだのが,婦人靴にICタグを取り付けて在庫を管理することだった。婦人靴をリーダーにかざし,色やサイズを指定すれば,売り場にいながら商品の在庫がすぐに分かる。

 システムの導入によって,ムダな移動時間を顧客1人当たり7分27秒も削減できた。三越 商品本部 商品システム推進部 担当課長の伊藤卓生氏は,「顧客を待たせたあげく,在庫がないことを伝えるといった状況がなくなったこともメリットだ」と語る。ICタグの効果を実感した三越は,8月下旬に銀座店の婦人靴売り場にも同システムを導入する予定だ。

ICタグのデータを逐一記録

 ICタグを使った在庫管理は,卸売業者が婦人靴の箱にICタグを取り付けるところから始まる。このICタグは13.56MHzの周波数帯を利用するタイプで,大きさは横3.6×縦6センチだ。百貨店が使う値札と同じサイズに加工してある。靴を箱から出して陳列するときは,箱からICタグを取り外して,値札のように靴に付ける。

 このICタグにより,卸売業者が商品を出荷して,三越に入荷し,顧客に販売するまで,一貫して商品の移動やステータスを管理できる。出荷や入荷,販売といったイベントがあるたびにICタグに書き込まれた情報(ID)が読み込まれ,データベースの「タグ履歴管理テーブル」に格納される(図2[拡大表示])。商品が売れて使い終わったICタグは,リサイクルするために回収され,卸売業者に送られる。

 売り場では,このタグ履歴管理テーブルの中から商品を検索して在庫を確認している。このシステムは販売員だけでなく,顧客自身も使える。希望する商品の在庫を検索するだけでなく,商品の形や色が類似した別の商品を一括検索(類似商品検索)することもできる。

 システムを構築したNTTコムウェア RENAソリューション部ユビキタスソリューション テクニカル・エグゼクティブの苅田洋典(ひろのり)氏は,「システムでは商品を検索した回数も記録しているので,検索回数の多い商品の在庫を増やしたり,目立つ場所に陳列したりするなど,販売戦略にも生かせる」とさらなるメリットを語る。

(松浦 龍夫)