図2●メインフレームとR/3とのファイル連携におけるジョブ管理
ジョブ管理ツールのA-AUTOやEAIツールのe*Gateの機能を組み合わせて,システム間連携部分のジョブも管理できるように作り込んだ。図の(A),(B),(C)の3つの方式を採用し,それぞれについてファイルの命名規則や,ファイルの作成処理プログラムの記述方式など標準化を徹底した
図3●2つの冗長化構成で信頼性と拡張性を確保
2台で構成するプライマリ機は,システム間連携に関するすべての処理を担う。セカンダリ機はフォーマット変換や,文字コード変換などのマッピング処理を行う。ピーク時の状況に応じて,通常は1台のセカンダリ機を2台使用できるようにしてある

開発標準を周知徹底する

 EAIツールの導入についてプロジェクト内では,「今まで1対1のFTPでOKだったのに,今回はなぜEAIツールなのか」という声があがった。各個人の作業内容で見れば生産性が上がるわけでもなく,工数も減らない。しかし,EAIツールの導入には,アドオン開発の総数自体を半分にまで減らせることや,運用・保守の拡張性を保てるというメリットがある。また,EAIツールにより,データのやり取りが共通化されるので,開発標準も徹底しやすくなる。こうしたメリットを具体的に理解してもらうため,STNetの久米氏は,プロジェクト・メンバー全員へEAIツールの導入目的や効果を周知徹底させることから始めた。

 プロジェクト・メンバーとしてグループ9社で100人前後が専任で従事していたが,全員が納得できるまで繰り返し説明会を実施した。EAIツールを利用するメリットを理解してもらった後,インタフェースの開発標準の策定や役割分担を明確化し,インタフェース1本ごとに外部設計を行う際の文書の書き方から統一した。プロジェクトの進ちょく管理も,インタフェース1本単位で行った。仕様を提示するのは四国電力側かグループ会社側のどちらが行うか,レビューは誰が召集するかなどまで細かく決めていった。

 例えば標準化で定めた中に,メインフレームとEAIツール,EAIツールとR/3それぞれの個所での連携に関するものがある。システム間連携のジョブ管理には,ビーエスピーのジョブ管理ツール「A-AUTO」を用いる。A-AUTOは従来から四国電力で使っていたジョブ管理ツールだったので,これまでの運用ノウハウを活かすために同じツールを使うことにしていた。ところが,そのままではEAIツールを用いたシステム間連携のジョブを管理することはできなかった。「同じフォーマットのデータだけなら作り込みは不要で,そのままで管理できるが,何種類ものファイルをそれぞれ利用するために作り込みが必要だった」(STNet 小手川拓氏)。そこで,e*Gateのポーリング機能やA-AUTOが備えるタイマー機能と連携させて,(1)トリガー・ファイル起動方式,(2)インプット待ち解除起動方式,(3)イベント・タイマー起動方式の3つの方式でジョブ管理を行えるようにした(図2[拡大表示])。

冗長化で信頼性と拡張性を確保

 EAIツールを稼働させるサーバー(EAIサーバー)機を,UNIXサーバーにするかPCサーバーにするかという点で最初は悩んだ。シービヨンド日本法人の担当者から「e*GateはCPUクロック数に比例して性能が上がる」と聞いていた。実際に,社内にあったデスクトップPCなどでテストした結果も同じで,シービヨンド以外のベンダーからも同様の性能検証報告があった。また,e*Gateのライセンス料はシステムの接続先の数で決まり,CPUの個数には依存しないことも分かった。そこで,当時の価格性能比を考えて,PCサーバーを選択した。

 ただし,1台のサーバー機に任せず,プライマリ機とセカンダリ機を準備した。負荷を分散させるとともに,それぞれ2台ずつ準備し,冗長化構成を採って信頼性と拡張性を確保した(図3[拡大表示])。また,データの入出力処理部分での信頼性を確保するために,IBMのハイエンド・ストレージ装置である「エンタープライズ・ストレージ・サーバー(ESS)」を採用した。

 2台のプライマリ機は,システム間連携で行う処理全般を担当する。セカンダリ機は,フォーマット変換や文字コード変換などの処理を行う。セカンダリ機の2台のうち1台は常時は稼働していないが,ピーク時の状況に応じてすぐ使用できるようにしてある。4月の月次処理を終えたが,「現状,CPUの使用率は50%に達しない程度で収まっている」(STNet 久米氏)。


(岡本 藍)