図3●経験したトラブルの概要
Samba環境での利用時(トラブル1),Samba環境からActive Directory環境への移行時(トラブル2),Active Directory環境での利用時(トラブル3)にトラブルを経験。トラブル2の原因はスナップショットの特性によるもので,過去に保存したファイルをリカバリするとほかのファイルが読めなくなった

NASの周辺環境がトラブル原因

 安定運用するまではトラブルの連続だった。主なトラブルは,(1)Sambaソフトの特性,(2)Samba環境とActive Directory環境の違い,(3)ネットワークやサーバーの内部時計――などが原因になった。

 2003年3月,Samba環境を構築。この環境では,クライアントPCからはWindows形式のファイルでアクセスできるが,保存ファイルはUNIX形式のファイルになる。Sambaがファイル形式の変換を行う。システム課の約50人でテストをはじめたところ,「オフィス・ソフトのファイルが開かない」という現象になった(図3[拡大表示]のトラブル1)。Sambaを稼働させているLinuxサーバーのメモリー不足が原因で,ファイル・アクセスに時間がかかっていた。調査した結果,Sambaは初期状態で90Mバイトのメモリーを必要とするほか,クライアントとのセッションを確立するごとに2.1Mバイトのメモリーを消費することが分かった。Sambaサーバーのメモリーを増設し,この課題を解決した。当初のSambaサーバーのメモリーは256Mバイトだったが,それを1.5Gバイトに増設。さらに負荷分散のために後からLinuxサーバーを1台増やし,そちらには1.25Gバイトのメモリーを搭載した。

スナップショットが災い

 2003年8月にActive Directoryの導入が完了し,2003年9月に統合ファイル・サーバーを全面的にリリースした。Active Directory環境下ではWindows形式のファイルで保存されるため,Samba環境のときに作成したファイルをWindows形式に変換しなければならない。この作業にはファイルのアクセス権限などを再設定する必要があり,予想以上に手間がかかった。

 さらに,困ったことが起きた。バックアップとして取っていたスナップショットのデータをWindowsのファイル形式に変換できなかった。スナップショット・データはファイルのコピーではなく,スナップショット作成時点のデータ・ブロックの集合である。データ・ブロックとは,OSがディスク上のデータを読み書きする単位。

 Active Directoryの環境下で,UNIX形式のスナップショット・データからリカバリすると,UNIX形式とWindows形式のデータ・ブロックが混在してしまう。試験的にリカバリしてみると,Windows形式のファイルが見えなくなるという症状になった(図3のトラブル2)。この問題の根本的な解決策は見つけられなかった。金沢氏は,ファイルをWindows形式に変換した直後にフルバックアップを取得し,最悪でもファイル変換直後の状態には戻れるようにした。こうした対策を採っていても,ファイル変換より前の時点に戻したい場合は,UNIX形式のスナップショット・データからリカバリしなければならない。幸いにもそのような事態は起きず,利用者に迷惑をかけることはなかった。

 そのほか,NAS装置以外に起因するトラブルを経験した(図3のトラブル3)。「オフィス・ソフトのファイルが読み取り専用でしか開けなくなった」というトラブルは,ネットワーク機器での遅延が原因だった。

 2003年11月18日には,すべてのクライアントから統合ファイル・サーバーにアクセスできなくなるというトラブルを経験した。原因は,Active Directoryのサーバー(ドメインコントローラ)とETERNUS NR1000Fの内部時計の時間のずれ。「ドメインコントローラとNASの時間差が5分以上になり,すべてのアクセスがエラーになった」(金沢氏)。社内にあるタイム・サーバーを参照する仕組みを構築し,このエラーは起きなくなった。

(松山 貴之=matsuyam@nikkeibp.co.jp)