サーバー増強ではコストに限界

 これらの増強策を実施しても,3月2日のアクセス数を考えると不十分である。しかし,WebLogic Serverを追加するのはコストがかかる。クラスタ機能を備えたバージョンになると高価になり,4台追加するとなると約2000万円程度かかる。通常時であれば4台で十分処理できるにもかかわらず,バースト的なアクセスに備えてシステムを倍増するのは無駄が多い。

 そこで注目したのが画像ファイルのキャッシュである。サイト全体のファイル数を調査してみると,画像ファイルとHTMLファイルの割合がほぼ半分ずつになっていた。キャッシュ・サーバーで画像ファイルを処理するようにすれば,APサーバーの処理量を増やせると考えた。

 ただ,キャッシュ・サーバーとして検討した製品は300万~400万円の導入コストがかかり,保守料金もかかる。無償のキャッシュ・サーバー・ソフト「Squid」を利用する方法もあるが,パフォーマンスが出るか,ベンダーの保守なしで構築,運用していけるか,などを考えると荷が重かった。またキャッシュ・サーバーを導入すると,データセンターのラックを増やす必要があり,1ラック(43U)の追加で月額14万円などの費用がかかる。

コンテンツ配信サービスを採用

 キャッシュ・サーバーの代替案として検討したのが,CDNソリューションズが提供する米Akamai Technologiesのコンテンツ配信サービス「Free Flow」である。「何百万ものトラフィックをさばくためのサービスというイメージがあったが,駄目元で問い合わせた」(丸氏)。

 Free Flowは,アクセス頻度の高いHTMLファイルや画像ファイルなどを,インターネット上に分散配置されたサーバーから配信するサービス。インターネット上に設置されたキャッシュ・サーバーを借りるようなイメージで利用できる。導入も簡単で,キャッシュしたいコンテンツのURLを,Akamai経由でアクセスするように変更するだけである。

図3●コンテンツ配信サービスも導入
サーバーの増強とは別に,Web/APサーバーの負荷を軽減させる対策も考えた。当初はキャッシュ・サーバーの導入を検討したが,最終的に米Akamai Technologiesのコンテンツ配信サービス「Free Flow」を利用することにした

 月額料金はトラフィック量に応じて決まり,1Mbps以下で月額18万5800円。キャッシュ・サーバーの導入コストと保守料金,データセンターのラックの追加などを考えると,こちらの方が得策と考えた。キャッシュの効果が出てトラフィックが減れば,データセンターの月額回線料金も節約できる。

 実際,4月末に導入したところ,如実に効果が出た(図3[拡大表示])。訪問者数は増えているにもかかわらず,データセンターのトラフィックが大幅に減った。Free Flow導入前のデータセンターのトラフィックは2Mbps以下。Free Flowを導入していなければ2Mbpsを超えていた。2Mbpsと3Mbpsでは月額15万円の差が出るので,この違いは大きい。

 その一方で誤算もあった。Free Flowは当初,1Mbps以下の契約で十分と考えていたが,検索エンジンなどのアクセスが増えると,トラフィックが1Mbpsを超えてしまうことがある。Free Flowでは,事前に契約したトラフィックを超えると,その分だけ超過料金が発生する。月額料金は2倍の37万1600円になってしまうが,現在は2Mbps以下で契約している。

(榊原 康=sakakiba@nikkeibp.co.jp)