Linuxディストリビューション最大手の米Red Hatは,開発体制を大幅に変更し,無償での利用が可能な製品系列Red Hat Linuxの開発を,ボランティアによるFedora Projectへ移管した。また2002年末に発表したサポート・ポリシーに基づき,Red Hat Linux7.1から8.0までのパッチ提供を2003年12月31日に終了する。

図1●Red Hat Linuxの系統
表1●Red Hat Linuxのパッチ提供終了時期
 Red Hatの提供するディストリビューションは,2つの系列に分かれている。企業向けのRed Hat Enterprise Linuxと,個人向けおよび無償版(雑誌付録やダウンロード配布など)のRed Hat Linuxだ。同じRed Hatが開発しているディストリビューションだが,カーネルなど主要ソフトウエアのバージョンが異なり,事実上別のディストリビューションだった。

 Fedora Projectは,Red Hat Linuxのパッケージ管理の改善などを行ってきたFedora Linux Project(http://www.fedora.us/)を母体とする。

  移管を発表したのは2003年9月。11月6日には,Fedora ProjectによるディストリビューションFedora Core 1がリリースされた。今後,開発の主体はコミュニティになり,Red Hat Linuxという名称も使用しない。「ただし,Red Hatは完全に無関係になるわけではなく,Fedora Projectにサーバー(http://fedora.redhat.com/)を提供するなどの支援を行っている。メーリング・リストの議論などにも,米Red Hatの技術者が参加している」(レッドハット マーケティングマネージャ 関川 誠氏)。

 今回の開発体制変更により,Red Hatは,2系列のディストリビューションを開発するコストを削減し,企業向けにリソースを集中する。

Red Hat9は2004年4月まで

 無償での利用が可能なRed Hat Linuxは,バージョン7.1から8.0までが,2003年12月31日に,Red Hatによるパッチ提供が終了する(表1[拡大表示])。

 これは,2002年末にRed Hatが発表したサポート・ポリシーに基づくものだ。このポリシーによればRed Hat Linuxは米国での出荷後1年間でパッチ提供を終了する。現在提供中のRed Hat Linux 9.0も,2004年4月にパッチ提供が終了する。以前から予定されていたことだが,Red Hat Linux系列がコミュニティ・ベースに移管されたことから,移行先に悩むユーザーも出てきている。

 企業向けには,10月末,新版のRed Hat Enterprise Linux 3がリリースされた。

 サポート付きの有償版であるRed Hat Linux Advanced Server 2.1と,その後継であるRed Hat Enterprise Linux 3は,米国での出荷後5年間,パッチ提供を行う。大規模サーバー向けのRed Hat Enterprise Linux ASは19万8000円。エントリー/ワークグループ・サーバー向けのRed Hat Enterprise Linux ESが9万9800円である。

パッチ提供サービスも

 移行せずに,サードパーティが提供するパッチ提供サービスを利用する方法もある。テンアートニは2003年4月から,セキュリティ上の重要なパッチを提供するサービスを提供しており,「すでに数十社のユーザーがいる」(テンアートニ 第二事業部長 小山裕司氏)。価格は1サーバー1年間6万円から。バイナリは有償だが,ソースコードのパッケージ(SRPM)は無償で提供してコミュニティに還元している。

(高橋 信頼=nob@nikkeibp.co.jp)