(Elliot King)

 データをアーカイブする作業は,企業のストレージ・インフラにとって大事な柱の1つである。各組織は自分たちが情報ライフサイクル管理をますます採用するにつれて,いつデータをより低コストで可用性の低いストレージへ移すべきか,そしてどんなデータを移すべきなのかを決めるポリシーを作っておかなければならなくなる。

法規制の影響を大きく受けるデータの保管期間
 データのライフサイクルの中で,今までほとんど問われなかった疑問は,いつデータがその寿命を迎えるのかということだった。いつになったら会社は,そのデータを保管するのを止め破棄してしまうべきなのか。こうした疑問を解決することは,大企業や法律の規制を受ける業態の会社では,緊急性の高いものだ。

 ニア・オンラインとアーカイブ版,ホット・バックアップ用など,現実にはデータ・ストレージは同じ情報の冗長なコピーを受け入れることを急速に求められ始めている。さらに法規制を受ける業種のデータ保管戦略は,経営者やシステム管理者が合理的によく考えた判断ではなく法律によって決められる。

 データ・ライフサイクルの問題に対する解決策は,以前のコラムで読者から指摘したように,小さな会社や強い法規制を受けない環境で運営されている会社では異なるように見えるはずだ。

 Belhumeur氏は米Durkee Brown Viveiros and Werenfels Architects(DBVW)のIT担当ディレクタである。1994年に設立されたDBVWは,Rhode IslandのProvidenceにある従業員25名ほどの建築設計事務所である。この事務所が手がける広い範囲の仕事には,商用や公共のビルの設計,歴史的建造物の再生と現状に合わせた再利用,取得可能な近隣住区の創成,個人住宅の設計などを含む。同社ではMicrosoft製品のみを採用している。2人だけのIT部門は,現在NASソリューションを導入している最中だ。

何もしないのが効率的
 Belhumeur氏の疑問は,アーカイブ処理をする目的で,データを物理的に一斉に移すことが自社のニーズに合うのかどうかということだ。DBVWのシナリオは次のようなものだ。同社は構造設計図の紙のファイルをまだ保管していて,定期的にそのデータをテープにバックアップしている。だが,ストレージ容量が増やしたことで,アーカイブのためにデータを削除する必要がなくなったのである。Belhumeur氏によれば電子文書の中に記録されたデータは,恐らく6年から7年は有効な寿命を持つという。

 データがその寿命の終わりを迎えたころには,ストレージの容量が何倍にも増えたので,何を保存すべきで,何を破棄すべきかを選択するのに時間を費やすのは有効な使い方ではない。あらゆるものを保存することにした方が,よっぽど効率的で,データは今あるその場所にそのまま置いておくだけで済む。また,そのようなデータは全ストレージ容量の5%にしかならないだろうと,Belhumeur氏は見積もっている。つまり,彼は同社のような企業は,基本的にはあらゆるデータを持ち続ければ,ほんの小さなコストを払うだけで済むだろうと言っているのだ。

 DBVWは独自のストレージ戦略を具体化したほか,いくつかの特徴を備えている。第1に同社は建設用に提出された通りの設計図画と仕様書や契約書を残すことだけに法的な責任を負っている。これらのほとんどは,いまだに紙で配布されるが,多くの会社はPDFの採用に動き始めている。DBVWは特定の契約書にかかわるすべての電子メールを残している。

ファイルを単独で保管しても役に立たない
 DBVWに電子的なCADファイルを残しておくことは,要求されていない。だが,会社側はそれらを残しておこうと思っている。それにもかかわらず,もう一度そのデータを使うために「シート」と呼ばれる古い電子ファイルを取り出すのが非常に難しい場合がよくある。それらのファイルの中には,互いに依存するものがたくさんあるからだ。シートは特定のプリンタ用に作られるもので,通常ほかのデータやアプリケーション,スタイル・シートなどにリンクされている。Belhumeur氏によると,古い電子文書を探し出して使おうとすると,Wordの文書内の壊れた外部リンクが100倍に増えるようなこともある。

 DBVWの例は,ストレージ容量を必要なだけ満たそうとする小規模な会社にとって,3つの重要な問題を提起する。第1に,ストレージの世界では,これをやるにもあれをやるにもすぐ無停止が要求される。だが,特異なことをしなくて済むのはよい戦略である。特にDBVWのように,よく理由を考えて何もしないことに決めている現場にとっては。

 第2に,ITがデータ保持戦略を確立する際には,そのデータが現実に役に立つように取り出せることを保証しなくてはならない。いろんなデータが複合した文書がより一般的になるにつれて,現実に役立つ形でデータを保持することは,より困難なことになりつつある。

 最後に,データを「永久に」ある場所に放り込んでおくために増やしたストレージの容量を利用するというアプローチにとっては,効率的な検索技術の導入・配備がこの戦略の成功に不可欠な要素になるはずだ。もし,データがあなたのシステムに保管されるのなら,だれかがそれを求める可能性がある。実際にそういうことが起きれば,データを簡単に見つけて役に立つ形で取り出せるようにしたいと思うだろう。