(Elliot King)

 大企業向けストレージ分野は,安定傾向を続けている。調査会社の米IDCによる最近のレポート2通が,それを示している。米EMCは成長を続ける外部ストレージ市場とストレージ・ソフトウエアの世界で,リーダーの座を守り続けている。米Dellはハードウエアの世界で最も急速な成長を遂げている最中である。米Hewlett-Packard(HP)はハードウエア市場全体,つまり外部/内部のストレージ・システムを含むハードウエア市場全体では,1位の座にある。

Dellのハードウエアが前年比30%増
 IDCによれば,売り上げで見た世界全体の外部ストレージ市場は,2005年第1四半期が前年同期比6.7%増の238億ドルに達した。これで18四半期,連続してプラス成長している。内蔵ストレージを含むディスク・ストレージ市場全体は,6.0%成長した。同時に,これまで出荷されたストレージ容量の合計は,売り上げの伸びをはるかに上回り続けている。出荷分のP(ペタ)バイト当たりで見ると,外部ディスクの容量は前年比で58.6%急成長して409Pバイトというすごい数字になった。これはたくさんのデータがあることを示すものだ。

 特定のプレーヤが成長を続けていた市場では,市場のリーダーや成長率にはほとんど変化がなかった。EMCは外部ディスク市場のリーダーのままであり,この市場の売り上げの21.4%を占め,それにHP,米IBM,日立製作所,そしてDellが続いている。Dellは第1四半期の売り上げの前年比で最も高率な29.2%もの急成長を記録し,素晴らしい成績を収め続けている。EMCも12.2%売り上げを伸ばすという強さを見せた。

EMCとNetAppが競うNAS市場
 ネットワーク・ストレージの分野でも話はそう変わらない。この分野は(1)NAS(ネットワーク接続ストレージ),(2)異なるベンダーの製品が混在するファイバー・チャネルを利用する「Open SAN」,(3)iSCSI SAN——を含んでいる。EMCがまたまたこの分野のトップで売り上げの29.0%を占め,HP,Dell,そして米Network Appliance(NetApp)が後に続く。DellとNetAppは最大級の成長を記録している。Dellの売り上げは47.1%増え,NetAppの成長は29.7%増だった。

 EMCは一方で,Open SANとiSCSI SAN市場ではっきりしたリーダーになった。同社は26.7%のシェアを獲得し,23.9%のシェアを占めたHPよりわずかに先んじた。この分野は16.6%成長して19億ドルに達するという,市場全体よりはるかに高い成長率を記録した。 iSCSI SANの分野も単独で22%と元気に成長したが,2位のEMCの28.6%に対してNetAppが市場の43.3%を占めた。算定方法を一部改めたおかげで,EMCはNAS市場で長年後塵を拝していたNetAppに追いついた。IDCは今回,EMCの市場シェアを37.9%,対するNetAppを34.2%と推定した。

 最後に,内蔵型と外部接続型のシステムの両方を含むハードウエア全体に関しては,HPが22.5%の市場シェアを獲得して首位を守り,IBM,EMC,Dellがこれに続いた。Dellはこの分野でも最大級の成長を記録し,売り上げは26.2%も跳ね上がった。EMCは2けた成長で,過去2番目という好調な業績を残した。

NetAppのソフト部門が前年比60%の急成長
 ソフトウエアでも,市場は同じように定着した傾向に沿って動いた,とIDCは言う。市場全体は14.9%増で21億ドルに達した。ストレージ・ソフトウエアが前年同期比で2けた成長を続けたのが,6四半期も連続したことになる。

 ストレージ・ハードウエアの分野と同じように,ストレージ・ソフトウエア全体でもEMCがトップの座にあり,市場の30%を握っている。それに売り上げで21.4%のシェアを持つVeritas Softwareが続いている。IBM,NetApp,そしてHPがその後の3つの座を占める。NetAppのソフトウエアの売り上げは,61.1%と目を見張るような成長ぶりだった。EMCは第1四半期で前年比17.9%増であり,VERITASは11.4%のプラスという好調を経験した。

 ストレージ・リソース管理とバックアップ/アーカイブ処理は相変わらずストレージ・ソフトウエアで最も収益の高い2大分野である。それぞれが市場のほぼ3分の1を占める。ストレージ・レプリケーション市場は第1四半期で20%近く成長し,一方ファイル・システム・ソフトウエアは前年比で25%以上も伸びた。

EMCの首位は揺るがず
 つまり長期的な傾向ははっきりしている。これまでの間しばらく続いたように,ストレージ・ソフトウエアが生み出す利益は,ストレージ・ハードウエアが生み出す利益よりも急速に増加し続ける。ハードウエアの世界では,ストレージのテラバイト当たりのコストは下落するが,出荷されるストレージの容量の急成長よりは遅いペースである。ネットワーク・ストレージに関しては,iSCSI SAN技術の利用が急速に成長している。そして最後に(これが肝心なことだが),変化があるかもしれないという予測が出始めたにも関わらず,EMCはダイナミックなネットワーク・ストレージ・ハードウエアと,ストレージ・ソフトウエアの全分野の両方で,市場の首位の座にとどまり続けるだろう。そしてその地位を同社がすぐに譲るような兆しは全く見えない。