(Elliot King)

 SCSI Trade Association(STA)は2005年4月末,ニューハンプシャー大学のインターオペラビリティ研究所で「プラグフェスト(Plugfest)」(相互接続性の検証大会)を実施した。事実上Serial Attached SCSI(SAS)ドライブが商用化のスタートを切ったことを示した。ケーブル,拡張器,ホスト・バス・アダプタ,ドライブとあらゆるものを提供しているベンダー18社が,SASシステムを物理的にテストするために集まった。

接続検証大会を重ねて実用化へ前進
「私たちはこの技術の成熟度からして,良いテスト・ポイントだったと思う」とSTAの代表で,米LSI Logicの産業マーケティング担当ディレクタであるHarry Mason氏は語った。「今度私たちが一緒にプラグフェストに集まるときは実際のラックとエンクロージャがある」。

 STAはこの3年間で4回のプラグフェストを開催し,20歳を迎えたパラレルSCSIのハードディスク技術を一新する標準技術を開発してきた。プラグフェストは,作業の進み具合を示す便利な指標に役立ってきた。1つ目の目的は,論理的なSCSIの互換性,信頼性,性能として管理しやすさを提供しながらSerial ATA(SATA)ドライブに普遍的な相互接続性を提供すること。そして,2番目の目的は,今後20年も性能の向上を可能にするための基礎を確立することにあった。そして3番目の目的は,ストレージへの新しい需要に対応することだった。つまり,形状(フォームファクタ)をより小さくすることと,可用性をさらに向上するためのデュアル・ポート・デバイス化である。

 ケーブル群が最初のプラグフェストを埋め尽くした。小さなラックが2回目で登場しはじめ,3回目のプラグフェストのころは,限られた数の大きなラックがその場にあった。今回の最新のプラグフェストは,Mason氏が見たところ,かなり広い範囲の供給元が,ラックのいい見本をたくさん置かれていた。その中には,複数のホストや拡張器に,複数のハードディスクと通信可能なアダプタを組み合わせた110台のドライブを実装できるシステムも含まれる。そしてマイナーな問題はやはり出てきた。しかし,おおむね各システムは予想通りに動いた。

2005年夏に初登場,2006年前半に普及へ
 多くのストレージ・ベンダーにとって次のステップは,SASを市場に出すことだ。Mason氏によれば,OEM各社は自社のサーバーのオプションとして,今夏にSASテクノロジを提供するという。そして彼は今後数カ月にわたってその市場にかなりの数のSASオプションが出ることを期待している。しかし,何社かのOEMは,次世代のIntelチップ・セットのリリースにあわせてSASをリリースしようとしている。そのチップ・セットは2006年前半に出ると思われる。SAS製品はメインフレームと同じ間接販売チャネル経由で,つまりシステム・インテグレータやリセラー経由で販売されるに違いない。

 もし,SASテクノロジが期待通りに進歩を遂げ,予想通りに動けば,その将来は明るいようだ。米Gartnerの調査部門担当副社長のJohn Monroe氏によると,ファイバ・チャネルとSATAテクノロジの優位にもかかわらず,SASはきっと2007年までには最も流行しているマルチボリュームのハードディスクになるという。彼の予想では2009年までには市場の約40%を占めるに違いないという。

 SASの登場にはいくつかの見方がある。1つのレベルでは,それはエンタープライズ・レベルのDAS(直接接続ストレージ)技術の若返りを表す。SASは明らかに昔SCSIドライブが使われていた場所に何とか入り込んでいくだろう。

 NAS(ネットワーク接続ストレージ)の成長はストレージのコミュニティがこれまで数年間にわたって注目してきた。しかし,今でもDASは多くの場合,ベストの選択肢だ。問題は今までのパラレルSCSI技術が明らかに時代遅れになってきており,管理するのが難しくなっているのに,同時に一方ではSATAの堅牢性がずっと疑問視されていたことだ。

階層化ストレージ・モデルを低コストで実現
 SASはストレージ・ベンダーとエンドユーザーの双方にも新しい選択肢を与えるだろう。「ベンダー各社は彼らの製品のあるパーセンテージがSATAドライブをサポートする必要があり,あるパーセンテージはエンタープライズ級のドライブをサポートする必要があると分かっている」とMason氏は言う。「SASのインフラを持てば,全くの新製品を開発することなく,自社の顧客のニーズに合わせて自社の製品を供給できるようになる」と。Mason氏は,SASがSATA中心のシステムの中にあっても,インフラとして使われるだろうと予測する。

 エンドユーザーにとって,SASは階層化ストレージ・モデルを現状よりも低コストで実現するものになる。単一のインターフェースがディスクやテープを集めた「データ・タブ」(すなわち低コストなストレージからなる大規模なプール)用のSATAをサポートするだろう。非常に高性能なトランザクション・データ環境向けのSASと同様に。米Adaptecのストラテジック・マーケティング・ディレクタであり,STAのエグゼクティブ・オフィサでもあるLinus Wong氏は「SASにより,階層化ストレージ・モデルで動作できる単一のインフラを持つことになる。これは非常に費用対効果が高い」語った。

 SASの進歩にもかかわらず,その技術の開発と教育の過程はあまり進んではいない。例えば,SASはSATAとの互換性を考慮してはいるが,保証はしていない。システム・インテグレータも,エンドユーザーもシステムを統合する際には相当な注意を払わなければいけなくなるだろう。それにもかかわらず,結論としてSASテクノロジは流行する準備ができている。複数のコンポーネントが出番を待っているのだ。「そのインフラは成熟した。エンドユーザーに買ってもらうには,後はそれをシステムに組み込むだけだ」とWong氏は語った。