(David Chernicoff)

 ストレージ管理のソフトウエアを発売することが,大きなビジネスになりつつある。特に小さな新興企業にとっては——。最近,米Cisco Systems,米EMC,米IBM,米Network Applianceなどの大手ストレージ・ベンダーが,小さい企業を繰り返し買収している。競合他社との差別化をはかるために,各社はそうした買収を通じて得た製品で自社のラインアップを強化している。

大手ストレージ・ベンダーによる買収が相次ぐ
 最近,このことを示すいくつかの発表があった。IBMは,新しい統合ソフトウエア「WebSphere Data Integration Suite」を出荷開始した。これは,2004年末に買収した米Ascential Softwareのソフトウエアをベースにしたものだ。このスイート製品は,ある組織が自分で(1)ビジネス・インテリジェンス・システム,(2)データ・ウエアハウス,(3)適正規模のエンタープライズ・アプリケーション——をその組織に見合った形で構築できるようにするものだ。

 WebSphere Data Integration Suiteの能力は,データベース管理者にメタデータとソース・データの双方を使って作業させる。しかも必要があればデータを操作し,アプリケーションの開発と導入に,必要なデータの変換をしても無傷なまま維持することにフォーカスしている。

 SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)向けのスイッチ装置メーカーの米Brocade Communications Systemsは最近,最大規模な投資をした。まず米Tacit Networksの広域ファイル・サービスの製品開発をサポートするため,同社へ750万ドルを注入した。この製品は,サーバーとクライアントがユニークなコンビネーションをするリモート・オフィス向けのストレージ・アプライアンスだ。この製品により,WAN(広域ネットワーク)リンクを介してデータ・ソースの統合と分散を実現する。

 2004年半ばにCisco Systemsが米Actona Technologiesを買収したことで広域ファイル・サービス市場に参入したのと同じように,今回の投資は将来Tacitを買収する予兆を示している。そうでなければ,Brocadeの投資と市場の支援は,Brocadeや他のストレージ管理市場の競合会社に買収されてしまう。

 同社はさらに,ソフトウエア管理製品の新興企業である米Therion Softwareを930万ドルで買収した。Tacitとの関係に似ていて,BrocadeはTherionと1年ほどサーバー管理・構成用ソフトの開発で協業したあと,この小さな会社を完全に買収したのである。

専業ベンダーと総合ベンダーの違い
 私が受けた印象としては,ストレージ市場の複数のセグメントに参入した大手のプレーヤたちは,自分たちの中核の支持者から遠く離れるような過ちを犯さずに,お客に提供する自社製品のポートフォリオを拡大したいと考えているようだ。例えば,Brocadeはネットワーク・スイッチ・ベンダーとしての側面が,一番に知られているように。

 IBMや米Hewlett-Packard(HP)のような自社の基本の事業体が既に広い範囲の製品を提供しているベンダーは,この点で少し有利である。BrocadeやCisco Systems,米McDataのようなもっと限られた範囲の技術で知られているベンダー各社は,自分たちのコアの技術から各市場へ手を伸ばすために,役立つ先端技術を持つプレーヤを買収して利用する。