(Karen Forster)

 米Microsoftによれば,過去1年にテープ・バックアップからリカバリしようとしたユーザーの42%が失敗したのだという。しかも「われわれが調査したユーザーの50%以上は,現在自分たちが使っているバックアップ・ソリューションに満足していない」。

 これは同社がリリース予定のバックアップ&リカバリ・サーバー製品「Data Protection Server(DPS)」を担当するBen Mathesonグループ・プロダクト・マネージャが私に語った内容だ。こうした統計に加えて,Gartner Groupが「バックアップ・ソフトウエア市場は25億ドル規模だ」というの推定をしており,併せて考えるとベンダー各社はこの分野で製品を売る好機と見ていることを示している。

 MicrosoftはDPSを投入することで,この機会をとらえようとしている。今回Windows Server Systemファミリに追加されたDSPは,現在ベータ版の段階であり,2005年後半に正式出荷される予定である(既報)。

 同社がが新市場に参入するときは,いつもその動きが物議をかもす。私は(米国の)読者に対して,この動きをどう考えるか,こういった製品に価値を感じるかどうか,それについてMicrosoftに聞きたいことは何かを調査した。以下はその調査結果を基にしたインタビューである。

まずはファイル・サーバーから始める
 MicrosoftのWebサイトでDPSの概要を読んだ後でさえ,読者はいったいこの製品がどのようにWindows Server 2003と関係するのかが分かりづらいだろう。例えば,こう聞いてみればはっきりする。「この機能は,Windows Server 2003向けにダウンロードして使う製品に見えるけど,そうでないとしたら,これはWindowsの新バージョンンなの?」と。

 私は,われわれの調査結果をBen Matheson氏に見せて,DPSとOSの関係について説明してほしいとお願いした。彼は「DPSはWindows Serverの特徴や機能ではありません。これはSQL ServerやExchange Serverのように,個別にライセンス販売されるサーバー・アプリケーションであり,Windows Server 2003上で稼働します」と答えた。

 では,どのようにDPSの最初のバージョンは,バックアップ&リカバリ用のインフラに組み込まれるのだろうか。Benはこう説明した。「Version 1では,DPSは最も普通に使われるファイル・サーバーにおいて,ディスク・ベースのバックアップを行います」。

 ファイル・サーバーのサポートから始めると決めたことは,われわれの調査結果に照らすと合理的に思える。われわれの調査では,485人の回答者のうち41%が何らかの形のディスク・ベースのバックアップを使っており,そのユーザーの34%はファイル・サーバーとプリント・サーバーをバックアップしている。次の対象は,データベースと電子メールだろう。ディスク・ベースのバックアップを使っている回答者のうち29%がこの2つを挙げていた。

 Benは次のように述べた。「あなたがたの調査は,企業がファイル・サーバーを保護するためにディスク・ベースのバックアップを最も一般的に採用していることを示しています。それはファイル・サーバーのバックアップが最大の業務だからです。ユーザーに大きな苦痛を強いる業務でもあるので,われわれはまずそれに焦点を合わせました。われわれのビジョンは,すべてのWindows Server Systemの処理量を保護するつもりです。将来のビジョンは,SQL ServerやExchange Serverをバックアップすることです。DPSは,SQL Serverのバックアップをすぐにはサポートしませんが,SQLダンプをすることでデータベースを保護する場合が多いことは気に留めておくべきです。そういうアプローチでは,データベースの中身をフラットなファイルに落として,それからバックアップすることになる。このシナリオでは,SQLダンプを保護するためにDPSが使えます」。

 ディスク・ベースのバックアップは,全体的なバックアップ・ソリューションにどう組み込まれるのだろうか。「われわれは,テープ・バックアップを補完するようにDPSを設計しました。われわれの考えでは,ユーザーはディスク・ツー・ディスク・ツー・テープのシナリオを採用するべきです。その理由は単純です。リカバリの90%は,あるファイルが削除されてから30日以内に起きるからです。つまりユーザーは,30日間だけディスクにスナップショットを置いておく価値があり,DPSは顧客がやらなければいけない全リカバリ作業の最低でも90%を処理するでしょう。そして,テープからリカバリでは数時間かかっていた作業が,ディスクからなら数分または数秒で完了します。これは大幅なコストの削減になります。一方,テープも3つの理由で重要だと考えています。第1に,テープは長い期間ずっと保存しておけます。第2に,テープをピックアップしてオフサイトに移動させるのはとても簡単です。第3に,様々な法的規制と法令順守の問題がオフサイトのテープの保護と長期間の保持を必要としています」。

 DPSの大きな特徴は,エンドユーザーがシステム管理者の手助けなしにファイルをリカバーできる点である。Windows Server 2003のVSS(ボリューム・シャドウ・コピー・サービス)のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)が,エンドユーザー自身によるリカバリーを可能にする。Benの説明によれば「DPSはハードウエア障害からの保護を提供し,さらにエンドユーザーのリカバリを可能にします。共有フォルダのシャドウ・コピーや全スナップショットが物理的に同じサーバー上に保持されます。もし,そのサーバーがクラッシュすると,すべてのオリジナル・データとともにシャドウ・コピーも失うことになる。DPSは,別々のハードウエア・メディアであり,第2の保護レイヤーです。だからもしサーバーが障害を起こしても,まだDPSサーバーからリカバーできます。これは不意に自分のファイルを削除したエンドユーザーだけでなく(いわゆる「おっと,リカバリ」),サーバー全体が落ちた場合に対する追加の保護レイヤーです。システム管理者は,全サーバー・ボリュームからリカバリできます」。

 われわれの調査では,10%強の数少ない読者しかシャドウ・コピー機能を使っていない。Benはこの状況に洞察を与えてくれた。「昔は,いくつかのサード・パーティのシャドウ・コピー製品は,スナップショットを取るときに,アプリケーションを静かにさせるように設計されておらず,クリーンなスナップショットを取れる保証がありませんでした。VSSまたは共有フォルダのシャドウ・コピーでは,VSS APIのおかげでクリーンなスナップショットが取れることを保証します」。

MS参入の賛否,そして価格が下がる
 私が見つけた面白いと思ったことがある。それは調査の回答者の大多数がこの市場へのMicrosoftの参入をポジティブにとらえていることだ。39%の回答者が「きっとDPSを評価するだろう」と答え,37%が「多分評価する」と答えた。21%より少ない人が「まだ保留」していて,回答者の3.3%は「DPSを評価しないだろう」と答えた。

 多くの人々は次のようにコメントした。「(Microsoftの参入は)良いことだ。これは競争を生み,古くからのバックアップ/ストレージ製品のベンダーに新しい製品を開発することを強いるだろう」と。ほかのいくつかの発言は「完ぺきなOSは,信頼性のあるバックアップ&リカバリ・アプリケーションを提供するべきだ」,あるいは「NTbackupよりも出来がいいならば,素晴らしい!」という趣旨のものだ。もちろん何人かの人々は,それほどポジティブではなく,「(同社の参入は)良くない。企業が必要とするすべてのソリューションをMicrosoftが全部提供しようとしている。そこまでMicrosoftのファンではない。今回のケースでは,Microsoftは自社のISVパートナたちと競合しているように見える」とか,「この分野で仕事をしているほかのもっと質の高いベンダーに任せておけ」とコメントしてきた。

 Benは,他社の類似製品についてこう語った。「われわれはユーザーから,市場にあるディスク・ベースのバックアップ製品は高過ぎる,難し過ぎる――と聞いています。独自仕様のディスク・ベースのバックアップ用アプライアンスは,1Tバイトのハードウエアとソフトウエアのソリューションが,5万~6万ドルで販売されています。パートナと業界標準のハードウエアとソフトウエアからなる広大な“エコシステム”で動作することによって,DPSはわずかなコストで非常に強力かつ使いやすいソリューションを提供できます」。しかし,私がDPSのコストがどのくらいかを彼に聞いたところ,Benはこう答えた。「現時点では価格体系に関して話すのは少し時期尚早なので,その点は後日まで控えさせてください。われわれのゴールは,非常に費用対効果が高いものにすることです」と。

Microsoftへの疑問
 読者からDPSがらみで一番よく聞かれる質問は,「信頼性のあるリカバリと利用や管理のしやすさ,そして異機種が混在する環境のサポート」に関するものである。Benはこう述べた。「あなたがたの読者調査の結果は,われわれが提供する3つの主な利点とビジネス上の価値と同じものを示しています」。

 第1に,「われわれは信頼性のあるリカバリを現在のテープで数時間かかるのではなく分単位を可能にします。われわれは,レプリケーション機能を使うので,DPS自体が巨大なファイル・サーバーのように見えます。あるPowerPointのファイルがあなたの作業用のサーバー上にあるとすると,DPS上でもPowerPointとして保存されます。これは,リカバリの作業がとても早くなるということです。あなたは,自分のソース・サーバーから特定のファイル・フォーマットのものをコピーし直すだけでいいのですから」と述べた。

 第2に,Benは信頼性を強調した。「われわれが一番注力していることはリカバリの信頼性です。さらにバックアップ自体の信頼性です。ユーザーが自分たちの毎日のバックアップ作業の10%ないし15%,または20%は失敗するということは珍しくありません。われわれはリカバリとバックアップの両方の信頼性に力を入れています」。

 第3に,「継続性があり効果的な保護が特徴です。通常ユーザーは1日1回,ファイル・サーバーをバックアップしていますが,DPSがあれば継続的にあなたのサーバーをバックアップできます。最も費用対効果の高いソリューションを提供するために,最終的にはわれわれは業界標準のハードウエアとソフトウエアを利用します」。

 DPSが異機種の混在する環境をバックアップできるかどうか,という読者の質問に対しては,Benはこう答えた。「今すぐにはわれわれは異なるアプリケーション(つまりOracle DatabaseやIBM Lotus NotesなどのMicrosoft以外のアプリケーション)やOSをサポートする計画はありません。だが,ユーザーからのフィードバックに耳を傾けて,そういう道を進むかもしれません。ストレージ・ハードウエアに限ると,DPSは業界標準のコンポーネント(Windows Server 2003製品のどれかで稼働するストレージとIntel製CPU搭載のサーバー)を使います。われわれは様々なSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)製品の組み合わせにも取り組んでいます」。

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 恐らくDPSは,まだそう広く導入されないので,“マーケティング言葉”でない,具体的な情報を得るのは難しい。しかしBenと話した結果,Microsoftはみなさんがお望みの特徴と機能に狙いをつけているようだ。その狙いが的を射るかどうかを判断するためには,その製品が現場で動くのを見るまで待たなければならないだろう。