(David Chernicoff)

 私はストレージの仮想化技術に関してたくさんコラムを書いたし,読者からも好意的なフィードバックをいつももらっていた。しかし,この話題に関した議論はすべて,大規模ストレージを扱うIT関係者向けだった。つまり,テラバイト単位のストレージ需要があり,既に所有する高価なストレージ・ネットワークから1ドルでも可能な限り引き出したいと思う人々に向けられていた。

 だがPromise TechnologyDataCore Softwareが,ストレージ仮想化技術を,新しく中小企業向けに提供するという。これまで仮想化製品はこうしたユーザーにとって手の届かない価格だった。それが変わるのである。

簡易版仮想化ソフトがアダプタにバンドル
 具体的には,両社は,DataCoreのストレージ仮想化ソフトウエアの簡易版とPromiseのストレージ・アダプタを組み合わせて出荷することで合意したという。つまり,Promiseが毎月出荷している何千ものストレージ・アダプタに1つ残らず仮想化ストレージ・システム機能が提供される。これによって,エンタープライズ・クラスのストレージ仮想化製品をはるかに下回るコストで実現できるようになる。

 Promiseが提供するストレージ・アダプタは,シンプルなATA(ATアタッチメント)接続用から,ハイエンドのシリアルATA(SATA)RAID用までに幅広い。こうしたカードが今後すべてDataCoreの「SANmelody Lite」という仮想化ソフトウエアとともに出荷される。SANmelody LiteはIPネットワークを通して,ほかのコンピュータ上にあるストレージをOSの記憶領域として追加する。つまり,別のコンピュータのストレージ空間がローカル・コンピュータ上で追加されたハードディスクとして現れるようになる。SANmelody Liteでは4つの物理ドライブ,1つのイーサネットまたはiSCSI接続,そして1システム当たり128Mバイトまでのキャッシュ・メモリーが利用できる。ソフトウエア単体の価格は199ドルだ。

1Tバイト以上のサーバーを2000ドル以下で構築
 すぐ予測が付くことだと思うが,DataCoreの戦略はSANmelody Liteを使ってお客のふところに入り込むことだ。Liteという簡易版の製品でできることを知った上で,SANmelodyの完全版へアップグレードしてくれることを期待している。完全版のSANmelodyの価格は,1178ドルから最大で1システム当たり120台の物理ドライブと16のネットワークまたはSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)接続を利用できる。

 SANmelody LiteとPromiseのストレージ・アダプタを使うと,1Tバイト以上のミラーリングされたストレージを提供するストレージ・サーバーが2000ドルを十分下回るコストで構築できる。この価格は,現在の中小企業向けNAS(ネットワーク接続ストレージ)のほとんどを相手に有利に戦える水準だ。大容量のストレージ需要がある中小企業は,SANmelodyが提案する単純化されたストレージ仮想化能力よりも優れたソリューションを見出すのが難しいだろう。

 もちろんSANmelodyを入手するためにわざわざPromiseのストレージ・アダプタを買う必要はない。DataCoreのWebサイトに直接行けば,フル・バージョンのSANmelodyの試用版をダウンロードできるし,SANmelody Liteを単体で買うこともできる。アダプタに仮想化ソフトをバンドルするという今回の合意の重要な点は,なじみがなかったユーザーが,DataCoreとPromiseが提供するものを通じて初めてストレージ仮想化技術を知る,ということだ。ストレージ仮想化技術をコストだけで除外していた企業は,いまやそれを試してみて自分の組織にどう役立つかを調べるチャンスを得るのだ。