(Elliot King)

 大企業からホーム・ユーザーまで,ストレージを使う人々が「自分たちは目まぐるしく変化する渦の中にいるようだ」と話したとしても,決して大げさな表現ではない。企業レベルでは,実質的に毎週新しいストレージ・プロトコルや技術標準に関する発表がある。そればかりか,ストレージ・インフラは様々なレベルで大規模な再編成をしているからだ。

NAS,SAN,ニア・オンラインとキーワードは続く
 各社はDAS(直結型ストレージ)からNAS(ネットワーク・アタッチト・ストレージ),SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)に,一定の加速度で移行しつつある。そして企業がストレージ・インフラを再設計する場合,彼らはバックアップやリストア,ディザスタ・リカバリ(災害復旧)に対するアプローチも再検討している。

 ディスク技術は,ストレージ階層の中でニア・オンライン・ストレージという新しい層を目指している。例えば最近,データが高価なディスク・ドライブからテープにアーカイブされる前段階で,もっと安価なディスク・ドライブに移されることが多くなっている。

 ストレージは,デスクトップPCの分野でも静かに大きく変化しつつある。古くからこの業界にいる人は,多分ハードディスクとフロッピ・ディスクがデスクトップPCに標準装備されたときのことを覚えているだろう。そのころ人々は従順にデータを保存していた。ハードディスクの容量が増えてくると,一番大事なファイルをフロッピ・ディスクにバックアップしていたはずだ。思慮深いユーザーたちの中には,バックアップ用にローエンドのテープ・ドライブを追加する人もいた。

IomegaのREVドライブ, Spectra LogicのRXT技術に脚光当たる
 もちろん,そういう日々はもう昔のことだ。今や大抵の家庭用PCは少なくとも40Gバイトのストレージを装備しており,さらに書き換え可能な光メディアも備えている。ホーム・コンピューティングのバックアップ用メディアとして,テープの利用は後退してしまった。

 企業と一般家庭でストレージの変化を起こした技術は,低コストかつ大容量のハードディスクだった。ここ数週間で,この技術をバックアップ用に使う道筋が見えてきた。4月半ばに米Iomegaは「REVドライブ」と呼ぶリムーバル・ハードディスク装置を出荷し始めた。そのすぐ後に,米Spectra LogicはRAID Exchangeable TeraPack(RXT)ポータブル・ディスク技術と呼ぶものを明らかにした。これはシリアルATA(SATA)ディスクをテープ・ライブラリ内のリムーバル・メディアとして使うためにパッケージ化するものだ。

両極端だが,設計思想は同じ
 IomegaとSpectra Logicの商品は市場の両極端を狙っている。RXT技術が企業のテープ・ライブラリで使うことを想定しているのに対し,IomegaのREVドライブはホーム/スモール・ビジネスを想定している。しかし,背後にある設計思想は同じである。固定されたディスクからメディアだけを引き抜く替わりに,ドライブ全体を抜き挿しできるようにした点だ。

 「RXTはディスクとテープを兼ねたものだ。データ・バックアップ用の最初のリムーバル・ハードディスク・ドライブだ」と以前はソニーの重役で,現在はSpectra Logicの顧問であるJohn Woelbern氏は話す。RXTはディスクの高性能さと交換可能なテープの特徴を統合したものだ,と彼は付け加えた。

 Spectra Logicはまず自社のテープ・ライブラリに最初のRXT製品を使うつもりだ。今年後半にスタンドアロン版をリリースする計画を立てている。RXTメディア・パックは2004年第3四半期に入手できるようになるが,テープ・エミュレーション・モードで動作するはずだ。テープ・ライブラリはRXTメディア・パックと昔からあるテープ・カートリッジを混在させて利用できるようになる。ディスク・ドライブもテープも別の場所での保管用に取り外すことができる。RXTはストレージ・インフラに変更を加えることなく,バックアップ/リストアの仕組みを柔軟に組み立てられるようにする。

SOHO市場狙いのREVドライブ
 対照的に,IomegaはREVドライブの狙いをホーム/スモール・ビジネスの分野に定めている。自宅で作業する人が何百万人もいるほか,米調査会社IDCの推定では米国内の790万社の従業員は100人以下で,9万3000社の従業員数は100人から999人だという。Iomegaによれば,そうした個人と企業の多くは,単純に自分たちのデータをテープにバックアップしないと考えている。なぜなら,テープは遅すぎるし,高価で使いにくいからである。

 圧縮時容量90GバイトのREVドライブは,テープ・ドライブ市場のローエンドと競合するように設計されており,その範囲には「Digital Data Storage 4(DDS-4)」「DAT 72」「AIT-1」「DLT VS80」などが含まれる。IDCはこの市場での製品出荷数を今年約100万ユニットに達すると予測している。

 35GバイトのREVディスクは59.99ドルで販売される。ユニット全体(ディスク+ドライブ)の価格は399.99ドルである。こうしたディスク・ドライブの価格の安さが,Spectra LogicとIomegaの取り組みを後押しする。各ドライブの品質とドライブのメカニカル部分の品質も向上した。「MTBF(平均故障間隔)は非常に優れているので,取り外しが必要な用途でも十分に実用的だ」とWoelbern氏はRXTに関して述べた。実際にこうした新製品がメーカーの言う通りのものなら,リムーバルなSATAディスクはホーム・ユーザーから大企業まで,皆が使える新しいバックアップ技術として大きく浮上してくるはずだ。