(Elliot King)

 IT投資は2003年全面的に増加し,ストレージ・ソフトウエア市場も爆発的に成長した。米調査会社IDCの「Worldwide Quarterly Storage Software Tracker」によれば,世界のストレージ・ソフトウエア市場全体の収益は,2003年第4四半期に対前年同期比で17.7%増加した。年間ではストレージ・ソフトウエアの収益は,約63億ドルに達し,8%増えた。

好調を支える合併のトレンド
 IDCのレポートは,この市場で進行中の重要なトレンドをいくつか明らかにしている。一番目に付くのはベンダーの合併だ。大手ストレージ・ソフトウエア・ベンダーの米EMCが米LEGATO Systems(現在はLEGATO Software)を買収して一層巨大化したため,競合他社には小さなパイしか残らなくなった。上位5社の市場占有率(シェア)は2002年の72.5%から,2003年には77.8%にまで増えた。2003年第4四半期の構図では,上位5社が市場全体のほぼ80%を握っていることを示す。

 市場をリードするEMCのシェアは当該年度内に27.6%から30.7%に上昇した。IDCによれば,EMCが2003年の第4四半期には市場の31.7%のシェアを獲得した。米VERITAS Softwareと米HPもシェアを増やしたが,IBMは横ばいだった。旧Compaqからの収益を含めると,HPは28%にも上る収益を得て,上位プレーヤーの中でも最も早い成長を遂げた。EMC,VERITASに次いで3位を占める米Computer Associatesは,2003年にシェアを0.5ポイント落とした。

 しかし,合併は物語の一部に過ぎない。その後1年を経て,各社はその関心と資金を,バックアップ/アーカイブ処理技術に振り向け始めた。ストレージ・リソース管理(SRM:Storage Resource Management)ソフトウエアとストレージ複製ソフトウエアは,2003年前半に最高の実績をあげた。第4四半期において,SRMソフトウエアの売り上げは16.2%上昇し,ストレージ複製ソフトウエアは14.7%増加した。一方,同時期にバックアップ/アーカイブ処理ソフトの収益は,対前年比17.6%にも達した。2003年全体では,SRMは11.3%増という最高の業績をあげ,ストレージ複製ソフトウエアは9.5%増でその後に続いた。

レポートが触れていないトレンド
データ・ライフサイクル管理と法規制順守

 だがIDCのレポートは,ストレージ・ソフトウエアの世界で,進行中の一番大事なトレンドを明らかにしていない。その大事な話とは,ストレージ管理とデータ管理(データ保護を含む)の境界線があいまいになってきたことだ。大容量のデータを低コストで記録することは,意欲的なストレージ管理者が今直面していることの一部に過ぎない。データ保護とこれに伴う法規制の順守が,同じくらい重要になっているのだ。過去2週間にあった2つの大きな発表が,このトレンドを裏付けている。

 第1に,3月末にVERITASは「Data Lifecycle Manager 5.0」の出荷を発表した。この製品はすべてのストレージ・メディアに対して,データの生成から破棄に至るまでの法的な管理要件を満たせるように支援するものだ。ストレージ・ソフトウエア製品はデータ・ライフサイクル管理で中心的役割を果たす。VERITASは「データ・ライフサイクル管理フレームワーク」に協力ベンダーの製品を統合できるよう,APIと開発者向けキットも公開した。12の企業がそのプログラムに参加している。参加企業の英Autonomyは,電子メールや添付ファイルをコンセプト・ベースで検索する先進的なパターン認識ソフトウエアを提供している。また,米Princeton Softechは,データベースのアクティブ・アーカイブ機能を提供する。

 第2に,最近IBMは法規制順守の保証を狙った3つの新製品を発表した。データの保存を求められる法規制順守は,2004年で最も大きなIT投資の対象になるとIDCは報じており,米AMR Researchは法規制順守に関連する活動とIT製品の購入には今年だけでも50億ドル以上費やされると予測している。

 こうしたすべての動きは何を意味しているのだろうか。ストレージ・ソリューションのマーケティングをしている米BrightStorのAnders Lofgren氏が次のように語っている。「データの移動やアーカイブを行うツールにとって,完璧なストレージ管理戦略を提供することは,本来の範囲を超えている。法規制順守とライフサイクル管理に対応することだけでは十分でない。その代わりにストレージ戦略は,セキュリティ,資産管理,アプリケーション管理などを含む広範囲なITの挑戦に対処しなければならない」というのだ。

 Lofgren氏は正しい。ストレージ・インフラを効率的に使うことは依然として重要な課題ではある。しかし,ストレージ管理者は,今やITパズルのすべてのピースを組み合わせることに深くかかわらなければならない。データ・ライフサイクル管理と法規制順守のためのソリューションは,大企業向けに提供されている。しかし,大企業に限らずあらゆる企業が,ミッションクリティカルなデータを適切に管理する計画を立案するべきだろう。それは,近い将来ストレージ・ソフトウエア・ソリューションの健全な成長を促すに違いない。