■米Microsoftは4月4日,Windows XP Tablet PC Edition 2005向けのアドオン・パック「Experience Pack for Tablet PC」を公開した(既報)。これは,個人ユーザーにとって魅力に乏しかったTablet PCをより楽しくするものだ。
■アドオン・パックには,合計6つの新しいユーティリティが入っており,Tablet PCを愉快でエキサイティングなものにしてくれる。それぞれを画面を見ながら紹介していこう。

(Paul Thurrott)


 「Windows XP Tablet PC Edition 2005」向けのアドオン・パック「Experience Pack for Tablet PC」は,MicrosoftのWebサイトから無償でダウンロードできる(該当サイト)。

 MicrosoftとPCメーカーが,斬新なTablet PCを2002年10月にリリースしてから,その販売実績はあまり芳しいものではなかった。登場してから2年間の販売数は,100万台程度だった。この販売の伸び悩みにはいくつかの要因があった。

高価で性能が低かった初代Tablet PC
 第1に,初代Tablet PCはあまりにも高かった。同等性能のノートPCよりも高額だったのだ。第2に,初代Tablet PCのハードウエア仕様は貧弱であった。モバイル向けの強力なCPU「Pentium M」とチップ・セット「Centrino」が登場する前だったので,初期のTablet PCはパワー不足のPentium IIIを採用していた。また,バッテリによる駆動時間も短いものだった。第3に,初代Tablet PCは携帯用途向けのモバイル市場しか対象にしていなかった。より強化されたパワフルなマシンを求めていたユーザーにとっては,運が悪かったということだ。最後に,Microsoftのハードウエア・パートナが,うまくTablet PCの宣伝をしなかった。

 2004年に登場した新型のTablet PCでは,まず価格の問題が解消された。購入条件として重要な1000ドル台の価格を実現した。Pentium MとCentrinoテクノロジを採用した第2世代のTablet PCでは,ハード・メーカーの努力によりパフォーマンスとバッテリ寿命の問題が解消された。

 さらに,高解像度ディスプレイを搭載した高性能マシンなど,多様な形態のTablet PCが入手可能になった。Microsoftのハードウエア・パートナは,ニッチ市場ではなく個人ユーザーやビジネス・ユーザーを狙って,新しいTablet PCでメインストリーム市場を攻めていこうとしている。これは革命的と言えるかもしれない。

ソフトが高価なこと以外は素晴らしい
 興味深いことに,Tablet PCプラットフォームにおいて,いままで何も問題のなかったのはソフトウエアだけである(私はMicrosoftのソフトウエアに対する不名誉な評判を重々理解したうえでこれを書いている)。MicrosoftのTablet PC用OS,特に最新版となる「Windows XP Tablet PC Edition 2005」は,初期リリース版から素晴らしいものだったのだ。Tablet PCに関連する短所のほとんどが,Microsoftではなく,同社のパートナによってもたらされているのだと,私は思っている。

 「ほとんど」という言葉を使ったが,Microsoftに全く非がないと言っているわけではない。米Acerの幹部は,MicrosoftがこのOSをPCメーカーに対してあまりにも高く売りつけていた,これによりTablet PC本体の価格は高くなり,新しいマーケットへのより迅速な浸透が阻害されたと語った。

 ところが,それに変化が見られた。2004年半ば出荷された「Windows XP Media Center Edition 2005」では,ソフトウエアの値段を引き下げることで成功した。安くなった新バージョンのOS,そしてTablet PCの新機種群によって,この市場へより深い浸透するものと考えられる。

 しかし,まだ足りないものがある。Microsoftもパートナと同じように,エンドユーザーに対してTablet PCの利点をもっと宣伝する必要がある。するべきことは,メインストリームのユーザーに対して,Tablet PCをもっと魅力あるものにするとことだ。

 ビジネス・ユーザーに対しては,既に「OneNote」と呼ばれるTablet PC対応のOffice 2003アプリケーションをリリースしている。このソフトには,タブレットのペンとデジタル・インク機能が組み込まれている。また,XP Tablet PC Edition自体も,Windows XP Professionalの全機能を包含するスーパー・セットとなっている。おおむね,企業向けの対応は完了している。

 一方,不足しているのはホーム・ユーザーへの対応である。そこでMicrosoftは,XP Tablet PC Edition 2005に,ユーザーが手軽に使用できる遊び心のある無料アドオンをTablet PCユーザーに提供しているところだ。「Experience Pack for Tablet PC」と呼ばれる13.8Mバイトのダウンロード・ファイルは,いろいろな意味でホーム・ユーザーを直接のターゲットとした「Plus! パック」である。私が数日間,試用してみたところ,このパックはTablet PCユーザーならみんなが試したくなるものだということが分かった。

エクスペリエンスを強化する3つの機能
 Experience Packに含まれる機能のいくつかは,基本的にTablet PCのエクスペリエンスを強化し,ある意味では楽しく使い勝手のよいものにするという意味で,「Tablet Input Panel(TIP)」と似ている。これらの機能はスタンドアロン・アプリケーションのように起動させたりするものではないことから,私はこれらの追加機能がシステム向けのものだと思っている。


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Energy Blueテーマ:2005年10月に「Windows XP Media Center Edition 2005」が披露された際,「Energy Blue」テーマのユーザー・インターフェース(図1)は,そのすっきりとしたプロっぽい見た目と刺激的な色使いが絶賛された。Microsoftは以前,Tablet PCユーザーにこのテーマを個別ダウンロード・アイテムとして提供していた。まだ手元になければ,これはお薦めだ。個人的には,デフォルトのXPスタイルより,このビジュアル・スタイルのほうがモダンですっきりしていると思う。すべてのXPユーザーに提供されることを願っているくらいである。

Ink Desktop:「Ink Desktop」は,XPデスクトップ上にメモや絵を書き込んだりできるバーチャルな紙を提供する(図2)。小さなポップアップ・ボタンを押すと[Pen(ペン,色の選択だけでスタイルは選べない)][Eraser(消しゴム)][Delete All(すべて削除)][Copy(コピー)][Settings(設定)][Close(閉じる)]といったオプションが備わったツールバーが表示される(図3)。[設定]オプションを選ぶとダイアログ・ボックス[Ink Desktop Settings]が表示され,Ink Desktopの外観(トランスペアレント,フェード,テンプレート使用のスタイル――など,デフォルトはメモ)や表示が設定できる。

 いくつかのテンプレートはかなり使い勝手がある。Ink Desktopの表示形態を,日めくりや月別の[Calendar(カレンダ)][Grid(グリッド)][TO DOリスト]などに設定できる(図4)。Ink Desktopをトランスペアレント表示に設定した場合,Active Desktopのウインドウではなく,まるでデスクトップそのものにいろいろなものを書き込んでいるように見える。

 総合的に見てInk Desktopの完成度は高いが,まだいろいろと改善の余地がある。例えば,カレンダとTO DOリストがあるなら,それをOutlookと同期させてほしいものだ。デスクトップ上のカレンダを直接タップしてカレンダ・アイテムを追加する,というのがよいのではないだろうか。

Snipping Tool 2.0:オリジナルの「Snipping Tool」は,元々Tablet PC用「PowerToy」としてリリースされた。画面のどの場所でも丸で囲んでクリップボードにコピーできるもので,ユーザーに大好評だった。他にも,コピーしたイメージは,電子メールのメッセージやWord文書またその他の文書に張り付けたり,手書きのメモで注釈を付けたり――といった利点があった。

 新版では,さらに強化され,円形の拡張式ユーザー・インターフェース要素をデフォルトで画面下部に表示するという全く新しいユーザー・インターフェースが搭載されている(図5)。デフォルト設定では,Snipping Tool 2.0は以前のバージョンと同じように動作する。機能を有効にして,画面の一部を囲み(例えば,表示中のWebページのIE画面の一部など),選択した画面エリアをクリップボードにコピーする。

 これにとどまらず,新バージョンではさらなる機能性を提供してくれる。円形UI要素の[Snip]アイコンの上をうろうろしていると,そのUI要素に追加の選択肢を提供する新しい円形部分が表示される(図6)。デフォルトのクリップスタイルは,以前と同じく自由曲線となっている。また,よりすっきりと見せるために,長方形のエリア,全ウインドウ,また全画面などもクリップできる。なかなかのものだ。

 一度クリップしたものには,多様なペン,ハイライト・マーカー,消しゴムなどを提供するSnipping Toolの「Mark Upツール」を使って注釈を付けられる(図7)。それから便利な[Send(送る)]オプションを使って,クリップしたものを電子メール,クリップボード,ファイル,編集ウインドウなどに転送できる(図8)。編集ウインドウはなかなか面白い。Snipping Toolには,クリップしたものを転送前や保存前に編集できるTablet PC向けツールを搭載した専用のエディタが付属する。また以前と同様に,Webページからクリップしたものに関しては,電子メールやその他の張り付け先でクリップ元のURLとともに表示される。

 Ink Desktopと同じように,Snipping Toolにも動作を設定できる[Option(オプション)]ダイアログが含まれる。全体を見て,これはTablet PC独自の機能性を際立たせる素晴らしいツールだ。
(次のページへ続く)