■2005年1月6~10日まで米国ラスベガスで「International 2005 Consumer Electronics Show(CES)」が開催された。基調講演はMicrosoftのBill Gates会長。最新のデジタル・エンタテインメントを紹介した。
■携帯電話やフラット・ディスプレイ,MP3プレーヤ,ゲーム機など,2005年の最新のデジタル・グッズが数多く出品されていた。80点以上の写真で会場の雰囲気を紹介する。

(Paul Thurrott,Keith Furman)




 米Microsoftの会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトであるBill Gates氏の「International 2005 Consumer Electronics Show(CES)」での基調講演は,90分間いつもと変わらぬ口調の無駄話で,みんな眠たくなってしまった。一方,Microsoftは深夜TVのトーク番組のホストをしているコメディアンのConan O'Brien氏に基調講演をアドリブで「ホスト」させ,適当なときにGatesにセリフを促していた。

 O'Brienは目立って陽気だったし,観衆が床を転げまわるほど受けた。それをうまく再現できないが,いくつか選んで紹介するとその雰囲気は分かるかもしれない。

 「今年のテーマは,もうオタク向けだけのものではないってことだ。今(この部屋を)見回してみれば分かるけど,ダサくてウザい奴ら向けでもあるみたい」。さらに「ちょうどこのシヨウをチェックしていたんだけど,今回の展示会は全く女性向けじゃないね。Elton Johnの独身最後のパーティのときは,もっといっぱい女の子を見たと思うよ」

(訳注:英国のナイトの称号を持つElton Johnは以前からゲイであることを公表していたが,2004年12月23日に長年交際していたカナダ人のボーイフレンドと "結婚"した。挙式の場所はなんとDavid Beckham宅の敷地内にあるプライベート・チャペルだったとか。ちなみに英国では2004年11月に同性同士のカップルに異性同士の場合と同じ法的権利を認める法律「Civil Partnership Act 2004」が成立しており,2005年から施行された)

 いうまでもなくGatesの登場は,ユーモアとおかしさのレベルをひと目盛り,あるいは一桁は下げてくれた。Gatesはいつも通りきまじめで,O'Brienがアドリブを投げ続けるたびに,Gatesは調子を取り戻そうと努力していた。ふう。

Gatesの基調講演:「悪くなる可能性があるものは悪くなる」
 Gatesの基調講演の中身といったら,おやおやおや,というものだった。いくつかの技術的な障害があったおかげで,デモが動かず,いったいMicrosoftはこのイベントの準備をしていたのかと,観衆に思わせた。

 インターネットにつながらないためデモがダメになり,Media Centerの写真のスライド・シヨウも起動しない,Xboxゲームはクラッシュしてわけの分からないテキストのデバッグ・スクリーンを表示した――というように,3つが別々に起きた。Xboxの症状は,明らかにプログラマが使う特別なXboxマシンに特有のものだ。同社にとっては,すべてが情けなくするのに十分効果を発揮した。

 その翌日,私が人と議論したところでは,問題はむしろ家電製品が壊れないことのほうだということになった。あなたのDVDプレーヤが起動しなくなったのはいつだった?しかし,こういう技術的な障害の不思議な点は,それらのどれ1つとして,Microsoftのソフトウエアの問題と関係がないということである。写真のスライド・シヨウの問題は,照明の干渉によるもので,その照明は何回ものリハーサル・セッションの間には,フルに点灯されたことがなかったのに,本番でGatesのリモコンを誤動作させた。さらにインターネット接続が切れたのは,講演者が別の話に入るために,デモを終えた瞬間に始まったのである。そういうわけでMicrosoftの人たちは,基調講演の中の技術的問題と,それらに対する観衆の受け止め方について神経質になっていた。

Gatesの基調講演:本当の問題は,技術用語の乱発
 一方われわれは,Microsoft信者が完全に的を外していたと思った。技術的な問題よりも,講演内容で問題だったのは,いまだに家電とPCを分けようとしていることにある。特にGates氏と同じ講演者のSean Alexander氏は,様々な複雑な技術用語をそれらが何か説明せずに不用意に使った。  「Plays For Sure」「Windows Media Connect」「IPTV」――こうした用語は,みんながデジタルなライフ・スタイルに漬かって暮らしているMicrosoft本社のあるレドモンドでは当たり前なのかもしれない。例えば,開発者向けのシヨウのように,もっと技術中心のイベントでは受け入れられるかもしれない。しかし,外の広い世界は,Microsoftのおかしな技術用語が通じないことを,同社は理解する必要がある。Microsoftよ,レベルを下げてもらいたい。CESは現実の生活者向けであり,君たちは参加者を混乱させている。

CES 2005はかつてないほど大規模に
 では全体としてはどうなったのか? われわれがCESに参加した過去5年間にこのシヨウはだんだん大きくなっていったのだが,今年のイベントには開いた口がふさがらない。

 単に何十万人という観客が,ネバダ州ラスベガスのホテルや通りや展示場を一杯にしているだけでなく,前代未聞の数の「まとも」な人もここにきている。この手のメジャーなシヨウでは初めてのことだ。

 その結果は大騒動だ。タクシーの行列はディズニー・ワールドのそれに匹敵する。新たに再開されたモノレールの軌道はいくつかの場所では,2街路分延長されている。展示場への交通はかなり混雑しているので,車を運転している間にこの原稿を書き上げられるくらいである(もちろん,理論的にはという話だ)。実際には今年のCESは大きすぎて,面白いものはほとんどない。

松下がMicrosoftとDRMで提携
 松下電器産業はMicrosoftと提携してこのソフトウエア最大手の「Windows Media Digital Rights Management(DRM)」技術を,ポピュラなSecure Digital(SD)フラッシュ・メモリー・カードのフォーマットに取り入れることにした。

 このアイデアは,ほかのWindows Media互換のオンライン・コンテンツ・ストアからSD互換のデバイス(例えば,松下の携帯型デジタル・メディア・プレーヤ)へ,お客が音楽やコンテンツを安全に転送して利用できるようにするものだ。

 今のところSDカードは,「Copy Protection for Recordable Media(CPRM)」という複製防止のフォーマットを使っている。新しい規格案では,SDカードに複製されたWindows Media DRMエンコード済みのコンテンツは,自動的にCPRMフォーマットに変換される。ユーザーの介入なしにだ。松下は,SanDiskや東芝とともにSDフォーマットを共同開発したベンダーである。

DirecTVはDVRに独力で取り組むと発表
 TiVoの新しい「TiVoToGo」サービスが,なぜDirecTiVo以外のお客も使えるようになった。

 TiVoは衛星放送大手のDirecTVと,「DirecTiVo」製品について提携している。DirecTVはデジタル・ビデオ・レコーディングの大海原を,自社で航海することに決めた。最近DirecTVは,自社でDVR技術を開発していることを明らかにした。同社はその技術を2005年末の新製品で市場に出す予定だ。DirecTVは今後もDirecTiVoを販売するが,新しいDVRに同社中核のマーケティングとセールスの力を集中させるだろう。簡単にいえば,DirecTiVoはおしまいということだ。

「Pocket PC」と「Smartphone」のブランド使用を段階的に休止
 Microsoftのある幹部が今週同社は徐々にPocket PCとSmartphoneのブランドを使うのを止め,代わりにもっと頻繁にWindows Mobileブランドを使うよう徹底すると語った。

 MicrosoftのMobile and Embedded Devicesグループの上級ディレクタであるScott Horn氏はCESで,各デバイスが1つにまとまりつつある以上,そういった動きは自然だと語った。「われわれは複数のデバイスのカテゴリが,1つになりつつあるのでWindows Mobileを前面に出している」という。

 Pocket PC,Pocket PC Phone Editionデバイスに,Smartphoneといった異なるデバイス・タイプが,紛らわしいくらいに似た機能を備えるようになった。このため,同社はそれぞれをうまく差別化することを試みるだろう。Horn氏がいうには,将来的にはWindows Mobileデバイスは電話の機能を提供するそうだが,今すぐの話ではないという。

SmartWatchは手首だけでなく心に残るデザインに
 まあ,まさかって感じだ。しかし,われわれ2人は,スイスの時計メーカーSwatchの「Paparazzi」ブランドで「Smart Personal Object Technology(SPOT)」搭載のCES 2005特別版の時計を受け取った。

 この時計はWindowsカラーとクールなラスベガスっぽい見栄えをしているので,現在われわれはそれをチェックしている。最新のSPOTウォッチは最初の世代よりかなり小さくスリムになった。最初の世代の製品はとてつもなく大きかったから,今度のデザインはすごくいい。Microsoftは今回のシヨウで,3000個のSPOTウォッチを無料で配布していた。その数は時計を使う人のほぼ3倍に当たる。