日本でも注目され始めたオープン・ソースのDBMS「Firebird」　p.2

山田健一

2004.04.21

日本でも注目され始めたオープン・ソースのDBMS「Firebird」　続き

図4●未確定データを取得しない（概念図）

信頼性を確保するための機能も備える
　加えて，マルチジェネレーション・アーキテクチャを備えている点に注目したい。これは「更新が検索を待たせない，検索が更新を待たせない」そして，「未確定データを取得することがない」などの信頼性を確保するための機能である。図4では，「TEST」というテーブルに対して，INSERT文で5番目のレコードとして「XX」を追加している。その直後に別の接続先からSELECT文で「TEST」テーブルの全レコードを表示せよという処理が実行されたとしよう。このときFirebirdは，「XX」が追加されていない状態の結果を返す。COMMIT文により，「XX」のレコード追加が確定するまでは,「XX」のレコードを返すことはない。

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図5●未確定データを取得しない実行例

　応用範囲は広い。例えば，他のシステムで管理しているマスター・データを取り込むときなど，全件削除してから全件挿入という処理を安心して行えるようになる。COMMITするまでは処理途中の中途半端なデータが読み取られることがないので，業務中でも安心してマスター・データの書き換えが実行できる。その様子を実際に示したのが図5である。図5上では「SAMPLE.FDB」というデータベースに接続して，INSERT文で「XX」というレコードを追加している。COMMITを実行していない点に注目してほしい。図5下は，その後，SELECT文でデータベースの全レコードを表示させた画面だ。「K1」から「K4」まで表示されているが，「XX」がないことが分かるだろう。

本体の活用に欠かせない
多数のミドルウエアが存在する
　以上のように基本機能としては十分なものを備えるFirebirdだが，データベース管理システムを活用したシステムの構築に必要なミドルウエアが各種そろっている点も見逃せない。　具体的には，アプリケーション開発に用いるC/C++およびDelphiのためのネイティブなコンポーネント・パッケージ，クライアントとの接続に必要なODBC（オープン・データベース・コネクティビティ）ドライバ，OLE DBドライバ，JDBC（JayBird），PHPドライバ，dbExpress，.NETデータ・プロバイダ――などが存在する。それゆえ，C/C++，Delphi，VB，Java，PHP，VB.NET，C#など多様な開発環境から操作可能である。

　JDBC（JayBird），.NETデータ・プロバイダはFirebird公式サイト（該当サイト）からダウンロード・サイトにリンクされている。その他のミドルウエアの情報はFirebird日本ユーザー会（該当サイト）のリンク集ページを参照してほしい（図6）。

図6●Firebird日本ユーザー会のリンク集ページ

軽量・コンパクトで無料
　軽量・コンパクトであることの利点について細かい説明は不要だろう。ただし，Windows用Firebird 1.5のダウンロード・ファイルがわずかに3.8Mバイトであることに驚かれる方は少なくないようだ。しかも，この中にはインストーラも組み込まれている。

　無料である点については制限もない。FirebirdはINTERBASE PUBLIC LICENSE（INTERBASEパブリック・ライセンス）でライセンスされる。この中には，使用料無料の非独占的ライセンスを認可するという文がある。たとえ商用利用であってもライセンス料を支払う必要はない。

　以上のようにFirebirdはデータベース管理システムとして非常に魅力的である。FirebirdはWindowsをはじめとして様々なOS上で稼働する版があるが，Windowsで稼働するバージョンがある点はメリットとして改めて強調しておきたい。サーバーOSとしてLinuxが普及してきているが，クライアントOSとしては圧倒的にWindowsの数が勝っている。特に操作者がPCに精通していない場合は，クライアントOSは広く普及しているWindowsを選択するのが自然である。クライアントOSがWindowsならサーバーOSをWindowsにすることには以下のように多くの利点が見出せる。

・サーバーOS，クライアントOS間で文字コード変換が発生しない。
・ネットワーク障害が発生したときでもデータベース・サーバーでクライアントと同様の感覚で操作ができる。
・Windowsなら技術者が確保しやすい。

　いかがだろうか。Firebirdに興味を持たれた方は，下記にあるFirebird公式サイトからダウンロードして試してみてほしい。日本語の情報はFirebird日本ユーザー会にたくさんあるので，こちらものぞいてみることをお勧めしたい。

●FireBird公式サイト　http://www.firebirdsql.org/
●FireBird日本ユーザー会サイト　http://firebird.gr.jp/