米国PDC 2003レポート  続き

APIは,Win32からWinFXへ
 Avalon,WinFS,Indigoは,.NET FrameworkのCommon Language Runtime(CLR)上に実装され「WinFX」と呼ばれるLonghornのAPI群の一部として位置付けられる。ついにOSの中心的なサービスが.NET Frameworkへと移行され,開発者にとっては大きな変化が訪れることになるだろう。この変化は,MS-DOSからWin16,そしてWin32になったのに匹敵する変化である。



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図3●新しいAPI「WinFX」は「Avalon」「WinFS」「Indigo」の3分野からなる

 WinFXは大きく分けると,OSとしてのベースとなるFundamentalの上に,(1)ユーザー・インターフェースなどプレゼンテーションとしてのAvalon,(2)データ/ストレージとしてのWinFS,(3)高度なWebサービスを中心としたコミュニケーションとしてのIndigo――が存在している(図3)。基調講演では,各テクノロジについて長い時間を使って様々なデモが行われた。

・プレゼンテーションとしての「Avalon」
 AvalonではWeb,Windows,Graphics,Media,Animeなど考えられるほとんどのプレゼンテーションの要素を一元的にサポートしており,ベクター・ベースの合成エンジンを備えている。様々な入力方法もサポートしている。XAML(Extensible Application Markup Language)と呼ばれるXMLベースの構文を利用して,アプリケーションのユーザー・インターフェースを記述することが可能になっており,Webなどと同じようにプログラム・コードとデザインの分離を実現する。



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図4●Avalonのデモ

・データ/ストレージとしての「WinFS」
 WinFSでは,ファイルやフォルダ,そしてSQL Serverなどのデータベースなど様々なデータを扱う。例えば,Longhornのエクスプローラでは,物理的なフォルダを意識せずにプロジェクト単位や所有者単位で,瞬時に分類や検索ができる。ファイル間の関係性の保持など高度な機能を実現している(図4)。

・コミュニケーションとしての「Indigo」
 セキュアで高度な次世代のWebサービス技術を中心として,他のコンピュータとの高度な接続性を実現している。これによりインターネットであっても,高度なシステム間・マシン間の連携が可能となる。また,メッセージ・キューイング機能もあり,信頼性の高いメッセージング環境を実現する。

 Fundamentalに触れなければいけないシステムを除けば,ほとんどのシステム開発は基本的にこの3つの技術を使った.NETベースのプログラミング環境を使う。OSの中心的なサービスを簡単に呼び出し,再利用するといった開発形態が促進され,開発の簡素化と各ソフトウエア・システム間の連携が強まる方向に向かうだろう。

パートナによるLonghornへの取り組み
 現時点では,ベータ版の手前である段階ではあるが,以下の3社から具体的なデモストレーションが行われた。



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図5●米Adobe Systemsがデモを行った「AfterEffects」のデザイン

・Adobe Systems
 米Adobe Systemsは「AfterEffects」をAvalonのXAMLに対応させたものをデモしていた。株価表示アプリケーションにおいて,インタラクティブ性に富んだユーザー・インターフェースを実現していた(図5)。

・MERCK
 医薬品会社のMERCKは,Pocket PCと接続された脈拍計などの機器や,無線ネットワークとIndigoを用いた医師へセキュアに情報を伝達するシステムを実現した。

・Amazon.com
 インターネット通販大手のAmazon.comは,Longhornのテクノロジをフルに活用したコマース・サイトを再現した。クライアントに格納されている自分のスケジュールと,書籍などの発売日を同時に表示したり,母親の誕生日に母親が今までに参照した「Wishリスト」の情報をもとにプレゼントを自動的に提案したりするなど,セキュアな状態で今まで以上に強い連携を実現できる。

Windowsクライアント・ロードマップ (いずれも英語版)
 前述したように,Longhorn自体の製品版リリースの見込みは一切触れられなかったが,ベータ1も含めて,次のようなスケジュールが発表された。(1)2003年下半期…「Windows XP Media Center Edition」「Windows "Longhone" Developer Preview」,(2)2004年上半期…「Windows XP Service Pack 2」「Windows XP Tablet PC Edition "Lonestar"」,(3)2004年下半期…「Windows Longhorn Beta1」「Windows XP 64bit Edition for AMD」

参加者にLonghornのテクニカル・プレビューを配布
 約3時間にも及んだ基調講演は,新たな発表とインパクトのあるデモばかりだった。確かに,Longhornの登場までにはかなりの時間がある。今回紹介したものが,製品版でどのようになるのかは,現段階ではだれにも分からない。そして,現在のPCではパフォーマンス的にかなり辛いことも事実だ。この基調講演の終了後,参加者には「Longhorn Technical Preview」(ロードマップのDeveloper Previewと同一と思われる)などが配布された。

 なお,日本においては,今回のPDCから一部セッションを抜粋した「Microsoft .NET Developers Conference 2003」(該当サイト)が2003年12月に開催される。Longhornを自分の目で確認したい人は要チェックである。