(Mark Minasi)

 インターネットが心配になってきた。本当なら,もっと以前から心配するべきだった。私はGoogleやAmazon,Microsoftなどよく知られた大手のWebサイト以外を訪れるときは,いつも緊張している。リアルタイムで動くスパイウエア対策ソフトを,少なくとも3つは動かしている。

サイト閲覧時は細心の注意が必要
 これはちょっと誇張であるが,インターネットが非常に危険な状態になっている。私はスパイウエアの1種である「ブラウザ・ヘルパー」の餌食にならない程度の知識は備えているし,閲覧するのにActiveXコントロールのダウンロードを要求するサイトを訪問してしまったときは,さっさと立ち去るようにしている。「クローズ」ボタンのように見えるが,その実「はい,そのファイルを私のところにダウンロードしなさい」というものにだまされてクリックしないように,私は「ビジュアル・スタイル」を無効にしている。

 そのほか,自分のWebブラウザに導入されているものを調べるためにWindows XP Service Pack 2(SP2)のInternet Explorer(IE)に備わる「Add-on Manager」機能を活用している。都合の悪いソフトを一切,自動的に読み込ませないために米Sysinternalsの「Autorun」ツールも走らせている。私はオタクだから,このような対策をとっているが,一般ユーザーはスパイウエアにどう対処しているのか時々不思議に思う。

多くのマシンがスパイウエアに侵されている
 最近,数人の友人のシステムが突然遅くなってしまったので,そのトラブルを解決する手助けをした。ほとんどのマシンには,メンテナンスの悪いボートにくっついたフジツボよりも,もっと多くのスパイウエアがインストールされていた。

 私は,スパイウエア対策として,仮想マシン(VM)ソフトを利用することを提案する。怪しげなWebサイトを訪問したいと思った場合,私はすぐ米VMwareのクライアント向け仮想マシン・ソフト「VMware Workstation」を使い,その仮想マシン環境の中でXP SP2を起動する。そしてサイト閲覧を開始する前に,きれいな環境をバックアップするためVMware Workstationの「スナップショット」機能を使う。

仮想マシン・ソフトでセキュリティを確保
 Webのコンテンツを見たり,ファイルをダウンロードしたりするには,仮想マシン環境内のXP上でWebブラウザを使う。仮想環境でファイルをダウンロードした後,本物のデスクトップ上に,そのファイルをドラッグする。そして,ウイルス対策やスパイウエア対策ソフトウエアが,きちんと動いている中でそのファイルを利用する。最後に,VMを起動した時点の状態に戻す「Revert」ボタンをクリックする。そうすれば私自身が原因で忍び込んだり,その仮想XPシステムにインストールされたりしたものは,何もかも消えることが,かなり確からしく思えるようになる。

 残念なことに,この方法を使うには多少の費用がかかる。VMwareのライセンスに約200ドルとWindows XPのライセンスがもう1つ別に必要である。しかし,次のことを考慮すべきだ。Microsoftはスパイウエア対策の必要性を認識しており,対策製品を買収して,その上それを強化するために相当の金を投資してきたのだ。同社が望めば,既に手元にある技術と一緒に私が実践しているようなソリューションを開発できるはずだ。

ウイルス対策限定のVMソフトを
 もし,Windows XPにMicrosoftのVM技術である「Virtual PC」の機能限定版が搭載されたとしたらどうだろうか。

 この機能限定版Virtual PC上では,1つのVMだけが構築でき,そこではあらかじめビルドされたXP SP2のイメージだけが動作するのだ。そして,ユーザーは仮想XPシステム上でWebサイトを閲覧したり,電子メールの添付ファイルを開いたりする。VMのウインドウには「今日の作業はおしまい」というボタンを1つだけ付ける。そのボタンをクリックすると,VMは数秒で起動時のきれいな状態(イメージ)に復帰する。

 Microsoftは,スパイウエア対策ツールを無償で提供することを検討しているし,多分フリーのウイルス対策ツールも提供するだろう。同社は,VMから実際のXPデスクトップにファイルをドラッグできるようにし,そのときにウイルスやスパイウエアを自動的にチェックするというようにコードを書き換えられるはずだ。このツールを「XP Buddy(相棒)」あるいは「Surfer Shield」と呼びたい。Microsoftが,このVirtual PCのXP Buddyバージョンの機能をうまく制限すれば,通常版Virtual PCの売り上げが減ることは決してない。その上,このXP Buddyは,30ドルかそこらで販売できるはずだ。

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 コンピューティングで私が気に入っていることは,「アンドゥ」ボタンがあることだ。「XP Buddy」「Surfer Shield」は,単純にその機能を拡張するものである。Microsoftには,今回提案した仮想マシン技術を利用したセキュリティ対策ソリューションの製品化をぜひ検討してほしい。