(Mark Joseph Edwards)

 Will Harper氏という読者が私に,受け取りたくない電子メール(特にスパムやジャンク・メール)に関する考察をメールでつづってきた。彼によると,スパマーを後追いすることで,業界が間違った方向に進んでいるという。スパム送信の問題の根源である広告主を標的にすれば,広告主がいなくなりスパマーは仕事にあぶれ,効果があると考える。

 彼はいい点を突いているが,私としては,広告主が法の許容範囲に留まる限り,自分たちの選んだ方法で広告する権利があると考える。新しい「CAN-SPAM法」はスパムを規制しようとしているが,この法の効果を知るのはまだ早計だろう。

認証や課金を使うSPAM防止アイデアが
提唱されている

 いずれにしても,悪意ある電子メールとスパムの両方が,無数のインターネット・ユーザーの心の中でくすぶっている問題なのは明白だ。われわれすべてがいらだちを感じているので,電子メールの扱い方を変えようという気になる。いくつかの実体のある組織が,ラボ環境の中だけだとしても,既に新しいアプローチを試している。

 何人かは,サーバーが電子メールを受け取る前に,SMTP(シンプル・メール・トランスファ・プロトコル)によって電子メールを送った相手を認証することを望んでいる。ある人々は,電子メール・メッセージを読むのと引き換えに,受信者が送信者に対して課金できるシステムを望んでいる。さらにほかの人々は,メールの送信と受信には,みんなが料金を払うべきだと考えている。何人かのアナリストたちは,この最後のアプローチは,接続のバンド幅や接続している時間に関係なくインターネット接続料金を支払っているのが現状では一般的だが,自分たちがその接続を介して送受信したバイト数(コンテンツの種類に関係なく)に応じて料金を払うペイパービュー方式に似た形も提案している。他にもいくつかのアイデアが挙がっている。

送信者リストによるフィルタリングを使う
チャレンジ/レスポンス方式

 電子メールをフィルタすることは合理的にうまく動くように思えるし,現在の電子メール・システムに大きな変更を加える必要がない。大抵のスパム・フィルタ・ソフトはメッセージの中身で判断している。一方,あまり広く使われていないが,メッセージの送信者を基にフィルタする方法が効果的である。

 承認した送信者のリストをメンテナンスし,そのリストにない人からきたメッセージは後々まで別の場所におくか,削除することで,大した手間なしに,合法的な電子メールをすべて受け取れる。この方法は,多くの人が紙のメールを扱う方法をなぞったものだ。郵便受けから手紙の束を取り出して,重要なものをまず開けて読み,残りを後で読むのに取っておくか,捨ててしまうのである。

 チャレンジ/レスポンス方式は,送信者リストによるフィルタリングを改良した方法だ。もし,送信者が受信者によって公認されたリストにないなら,メール・システムは送信者に対してテスト・メールを送り(チャレンジ),送信者はそれに答える(レスポンス)必要がある。もし,応答が正しければ,メール・システムはその送信者を受信者の公認送信者リストに追加して,その送信者の今後の電子メールにはそれ以上干渉せず配信する。メール・サーバーはテストに対して正しく応答しない送信者のメッセージは削除する。このアプローチは,受信者の電子メール処理の負荷を減らし,スパムを大幅に減らす助けになる。

 チャレンジ/レスポンス方式はうまく動作するが,障害のある人々にはちょっと面倒をかける。例えば視覚に障害のある人は,画像データの形のテスト・メールに応答できないかもしれないし,聴覚に障害のある人は音声を使ったテスト・メールを受信するのは難しいだろう。いつかは視覚または音声情報によるテストに対してソフトウエアが自動的に応答できるようになるかもしれないが,スパマーがそのチャレンジ/レスポンスのシステムを悪用する可能性がある。

送信者に演算処理を課す
 チャレンジ/レスポンスの別方式は,送信者のコンピュータに演算処理をやらせるものだ。その演算は,大量の計算を実行するため,スパム・サーバーのようなシステムがあったとしても,大量のメールを送る場合,プロセッサのオーバーヘッドのために合理的な時間内に処理できないほどなので,スパムは実質的に送信できない。しかも,平均的なユーザーにとっては,何百万もの電子メール・メッセージを送信しないので,その演算処理のオーバーヘッドは問題にならない量だ。このソリューションは実現可能に聞こえるし,障害のある人もこれまで通り電子メールへアクセスできるようにしてくれるだろう。うまいスパム対策は,厄介ものの悪意のある電子メールのまん延を防いでくれるだろう。

IRTFの議論に参加しよう
 もし,あなたが電子メールの将来の姿に対してアイデアを提供したいなら,Internet Research Task Force(IRTF)のアンチスパム・リサーチ・グループ(ASRG)への参加を考えてみるべきだ(該当サイト)。私は,最近そのグループの討論会に行ったのだが,面白い観点が提出されたり,討議されたりしている。ASRGは,だれでも加入できるメーリング・リストを2つ提供している。トラフィックの少ないアナウンス用のリストと,トラフィックの多いディスカッション用のリストである。