初歩から理解するActive Directory (第5回) 続き


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図16●[Active Directortyユーザーとコンピュータ]でOUを作成する

組織単位(OU)の設定
 続いて,必要に応じて組織単位(OU)の設定を行う。OUについては連載第3回を参照してほしい。

 この作業には「管理ツール」を使用するので,あらかじめ起動しておく。

(1)「管理ツール」から[Active Directoryユーザーとコンピュータ]を起動する。
(2)ドメインを右クリックし,[新規作成]-[組織単位(OU)]を選択する( 図16)。
(3)[新しいオブジェクト−組織単位(OU)]画面でOUの名前を指定する( 図17)。


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図17●ポップアップした画面で,OU名を指定する

コンピュータ・アカウントの作成
 Active Directoryの全機能を利用するには,クライアント・コンピュータのために「コンピュータ・アカウント」(または「コンピュータ・オブジェクト」)を作成する必要がある。

 ドメイン・コントローラの場合は「Active Directoryのインストール・ウィザード」を実行することでコンピュータ・アカウントが作成され,「Domain Controllers OU」に配置される。

 ドメイン・コントローラ以外のコンピュータの場合は,以下の手順でコンピュータ・アカウントを作成する。ここではクライアントのOSがWindows XP Professionalの場合を例にとるが、Windows 2000やWindows Server 2003でも基本的な手順は同じである。


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図18●クライアントPC側でもログオン先のドメインを設定する

(1)[コントロールパネル]−[システム]で[システムのプロパティ]を起動する(Windows XPスタイルの場合は[コントロールパネル]−[パフォーマンスとメンテナンス]−[システム])。[コンピュータ名]タブで[変更]ボタンをクリックする(図18-1)。
(2)[コンピュータ名の変更]画面が表示される。[次のメンバ]で[ドメイン]を選択し,ドメイン名を指定した後,指示にしたがって再起動する(図18-2 )。

 以上の操作で,このコンピュータ・アカウントが[Active Directoryユーザーとコンピュータ]の[Computers]コンテナに登録される。なお,Computersコンテナは、オブジェクトの登録先であるがOUではない。

 続けて,必要に応じてコンピュータ・アカウントを適切なOUに移動する。通常は,コンピュータ・アカウントを右クリックし[移動]を選択して,移動先を指定する。なおWindows Server 2003では,ドラッグ&ドロップでも移動できるようになった。


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図19●[Active Directoryユーザーとコンピュータ]の[Users]コンテナで右クリックして[新規作成]−[ユーザー]を選択

ユーザー名の設定
 Active Directoryのインストールとコンピュータ・アカウントの設定が終わったら,次はユーザーとグループを設定する。

 実際にユーザーを登録する前に,ユーザーの名前付け規則(ネーミング・ルール)と属性を決定しておきたい。Active Directoryは階層管理ができるが,ログオン時に指定するのはユーザー名とドメイン名だけである。OUによる階層は指定できない。そのため,ユーザー名はドメイン内で唯一に識別できる必要がある。ユーザー名が衝突しないように,事前に名前付け規則を定義しておくべきである。

 ユーザーの登録や変更には,管理ツール「Active Directoryユーザーとコンピュータ」を使う。このとき,事前に適当なOUを作っておいてもよい。以下の手順で行う。


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図20●[新しいオブジェクト−ユーザー]画面でユーザー情報を入力する

(1)「Active Directoryユーザーとコンピュータ」を起動し,適切な場所を右クリックし[新規作成]−[ユーザー]を選択する( 図19)。新しいユーザーが作成される。
(2)[新しいオブジェクト−ユーザー]画面で,姓,名,フルネーム,ユーザーログオン名を入力する(図20-1)。ログオンに使うのはユーザー・ログオン名であり,他は検索対象となる。イニシャルはミドルネームのイニシャルであり,日本では普通使わない。[次へ]ボタンをクリックする。
(3)パスワードに関する情報を入力する(図20-2)。[次へ]ボタンをクリックする。
(5)[完了]ボタンをクリックすると,ユーザーが登録される(図20-3)。

 また,[ユーザーのプロパティ]で検索対象となる項目を設定しておけば,Active Directoryをさらに効率的に利用できる。設定は以下の手順で行う。

(1)作成したユーザーをダブル・クリックする。
(2)[全般][住所][電話][組織]タブで,可能な限り多くのプロパティに値を指定する(図21)。これらのタブにある項目は,検索時に指定できるだけで特別な意味は持たないので,できるだけ多くの値を指定するとよい。

 Ctrlキーを押しながらクリックすると,複数のユーザーを選択できる。ここでプロパティを表示させれば,複数のユーザーの属性を一括変更することも可能である。これは,Windows Server 2003からの追加機能である。


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図21●[Active Directoryユーザーとコンピュータ]画面のユーザーのアイコンをダブル・クリックすると,詳細な情報が設定できる

グループの登録
 ファイルのセキュリティ設定を行う場合など,複数のユーザーを1つにまとめることができれば便利である。Active Directoryでは,ユーザーを「グループ」のメンバーにすることで効率の良い管理が可能である。

 グループには以下の種類があり,それぞれ目的が異なる。単一ドメイン環境であればグローバル・グループだけを使うのが最も簡単だろう。

・ドメイン・ローカル・グループ
 有効範囲はドメイン内の全ドメイン・コントローラ。Windows 2000ネイティブ・モード以上ならドメイン内の全コンピュータ。メンバーとして任意のドメイン階層のユーザーとグローバル・グループ,およびユニバーサル・グループが所属可能。

・グローバル・グループ
 有効範囲はドメイン階層全体,メンバーとして自ドメインのユーザーが所属できる。

・ユニバーサル・グループ
 Windows 2000ネイティブ・モード以上でのみ利用可能。有効範囲はドメイン階層全体,メンバーとして自ドメインのユーザー。任意のドメイン階層のユーザーとグローバル・グループが所属できる。

 いずれの場合も、Windows 2000ネイティブ・モード以上なら、同じ種類のグループをメンバーにできる(入れ子構造)。

 さらに非ドメイン・コントローラーだけで有効なローカル・グループも利用できる。有効範囲は(1)そのコンピュータだけ(2)メンバとして任意のドメイン階層のユーザーとグローバル・グループ(3)ユニバーサル・グループが可能である。

 グループの作成も[Active Directoryユーザーとコンピュータ]を使う。Windows 2000ネイティブ・モード以上であれば,ドメイン・ローカル・グループとユニバーサル・グループ,グローバル・グループとユニバーサル・グループの相互変換が可能である。

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 以上で,Active Directory構築方法の解説を終わる。最初に解説したように,Active Directoryの構築では,あらかじめDNSとドメイン階層について理解しておくことが大切である。今までの連載も参考にして,理解を深めておいてほしい。