今から始めるWindows Server 2003(第2回) 続き

プリント・サーバーとして設定する
 次は,プリント・サーバーとして設定する例を紹介しよう。



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図4●プリント・サーバーの設定

 [サーバーの役割管理]で[役割を追加または削除する]をクリックする。[サーバーの構成ウィザード]が表示されるので,[準備ステップ]の内容を確認して[次へ]をクリックする。[構成オプション]で「カスタム構成」を選択して[次へ]をクリックする。ここまでは,前述のファイル・サーバーの場合と同じだ。

 次の[サーバーの役割]画面で[プリントサーバー]を選択して[次へ]をクリックする(図4(1))。[プリンタとプリンタドライバ]画面でクライアント用のプリンタ・ドライバを指定する(図4(2))。

 次の[選択内容の概要]画面で設定内容を確認し[次へ]をクリックすると,[プリンタの追加ウィザード]が起動する。ここで,使用する印刷装置に合わせた設定を行う。ネットワーク直結型のプリンタなどを利用する場合は,メーカーのセットアップ・マニュアルに沿って設定を行う。今回はLPT1ポートに接続されたローカル・プリンタを手動で設定する手順を例に説明を進めよう。

 [このコンピュータに接続されているローカルプリンタ]を選択して[プラグアンドプレイ対応プリンタを自動的に検出してインストールする]の選択を外し,[次へ]をクリックする(図4(3))。[プリンタポートの選択]画面では,今回はデフォルトの「LPT1:」を選択し(図4(4)),[プリンタソフトウエアのインストール]画面では,プリンタのメーカー名と機種を選択する(図4(5))。すると,プリンタ名とデフォルト・プリンタの可否を設定するダイアログが表示される(図4(6))。ここはデフォルトのままにした。



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図5●ディスク・クォータの設定が全ドライブに適用されている(ウィザードの注意点(1))

[サーバーの役割管理]後に微調整を行う
 このように,基本的な設定は[サーバーの役割管理]のウィザードで簡単に行える。しかし,それですべてが完了するわけではない。

 例えば,ファイル・サーバーとして構成するウィザードで設定したディスク・クォータの設定は,サーバーの全ドライブに対して同じ設定が適用されてしまう。前述の手順ではディスク・クォータの制限を5Mバイトに設定して,C:\Share\Docsフォルダを「Docs」として共有したが,ウィザードで設定した制限は,Cドライブだけではなく,同じサーバーのほかのドライブにも有効になってしまう(図5)。ほかのドライブではクォータを有効にしたくない場合や,別の制限を設定したい場合は,ドライブのプロパティを開き,[クォータ]タブで設定を変更しなければならない。

 アクセス権については,ウィザードでカスタマイズ可能なのは,共有フォルダに対する共有アクセス許可とNTFSアクセス許可だけである。共有フォルダ中のファイルに対するNTFSアクセス許可はエクスプローラからファイルのプロパティを開き,[セキュリティ]タブで個々に設定しなければならない。



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図6●プリンタのアクセス許可はあとから設定する(ウィザードの注意点(2))



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図7●IPアドレスは手動で設定する(ウィザードの注意点(3))

 プリンタのアクセス許可についても同様だ。ウィザードではプリンタのインストールと共有の設定しかできない。プリンタのアクセス許可を特定のユーザーにだけ与えたい場合は,設定を完了したあとで,[スタート]メニューにある[プリンタとFAX]から該当するプリンタのプロパティを開き,[セキュリティ]タブでアクセス許可を設定する必要がある(図6)。

ほかのサーバー機能もウィザードで設定できる
 ファイル/プリント・サーバーの構成だけでなく,IIS(Internet Information Services)6.0やASP.NET,SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)/POP(Post Office Protocol)3などのWindows Server 2003が,サポートするアプリケーション・サーバーやネットワーク・サービス・サーバー機能も[サーバーの役割管理]からウィザードで設定できる。設定手順の詳細は省略するが,これらのアプリケーション・サーバーやネットワーク・サービス・サーバー機能を設定する際には,TCP/IPのパラメータを手動設定する必要がある。

 具体的には次の手順で行う。[スタート]-[コントロールパネル]-[ネットワーク接続]を選択して,[ローカルエリア接続]のプロパティ画面を開き,さらに[インターネットプロトコル(TCP/IP)]のプロパティ画面を開く。ここで[全般]タブの[次のIPアドレスを使う]を選択して,IPアドレス,サブネットマスク,優先DNS(Domain Name System)サーバーのアドレスを設定する(図7)。

 ファイル/プリント・サーバーとして利用する場合は,デフォルトのままDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)クライアントとして運用しても構わないが,サーバーとして運用するコンピュータはIPアドレスが途中で変更されないように手動で設定したほうがよいだろう。

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 次回は,Windows Server 2003のドメイン・コントローラを導入し,NTドメインをWindows Server 2003のADドメインへ再構築する手順について解説する。


用語解説

*ドメイン
ネットワークでWindowsマシンを管理するための論理的なグループ。複数のコンピュータで共通に利用するユーザー・アカウントを登録するなど,セキュリティ関連の設定を統合管理する。DNSをつかうActive Directoryのドメインでは,組織構成などに基づいたツリー構造で管理する。NT 4.0までのドメインは階層構造を取ることができない。

*VSS(ボリューム・シャドウ・コピー・サービス)
Windows Server 2003から搭載しているディスクのスナップショット・バックアップを取るインフラ技術。アプリケーション・ソフトなどが利用中にもバックアップが取れるようになる。クライアントがWindows XP Professionalならば,共有フォルダ内にあるファイルの履歴をクライアントから復活できる。

*NTFSアクセス許可
NTFSアクセス権とも呼ぶ。NTFSでフォーマットしたディスクに設定するセキュリティ機能。ユーザーやグループがファイルやフォルダにアクセスして,処理できる内容を制限する。共有フォルダのアクセス権よりも細かなアクセス制御が可能になる。「フルコントロール」という種類の設定が最も自由度が高い。

*共有アクセス許可
共有アクセス権とも呼ぶ。ファイル・サーバーの共有フォルダにあるファイルの読み取りや更新,削除といった操作を制限する設定。フォルダごとに設定する。ネットワーク経由でアクセスするときにだけ有効になる。NTFSアクセス権ほど細かいアクセス制限をかけることはできない。

(編集部)

<著者紹介> 石川 祥英
1984年に日立ソフトウェアエンジニアリングに入社。1996年よりMS CTEC(マイクロソフト認定トレーニングセンター)の運営・講義に携わる。現在の主な担当分野はWindowsおよびExchange系コース。