◆ユーザーの課題◆ホテル・チェーンのグリーンズは,顧客サービス向上のため約30拠点からの営業日報をグループウエアを使って集計するシステムを導入した。しかし,本社と各店舗を結ぶネットワークが64k~128kビット/秒のフレーム・リレーだったためレスポンスが著しく遅く,改善策を検討していた。

◆選んだ解決策◆レスポンスの向上を第1の条件に,管理のしやすさと今後Windowsベースでシステムを構築していくときの親和性を考慮して検討。その結果,Windows 2000 ServerとInternet Security and Acceleration Server 2000を組み合わせたインターネットVPNによる再構築を選択した。

◆結果と評価◆3カ月弱で導入が済み,本社―拠点間の通信レスポンスは飛躍的に向上した。また,フレーム・リレーから低料金のブロードバンド回線に切り替えたことでコストが半減し,年間約600万円の費用削減を果たした。今後,この回線を利用したVoIPやカンファレンス・システムの導入を検討している。

図1●今回構築したVPN(Virtual Private Network)システムの概要図
VPN用に本社は100Mビット/秒のBフレッツ・ベーシック,各拠点は10Mビット/秒のBフレッツ・ファミリーか1.5M~8Mビット/秒のフレッツ・ADSLを使っている。本社―ホテル間はISA Server同士で,レストランなどの単独店やモバイル・ユーザーはWindows 2000のパソコンから本社に直接,接続している。
 グリーンズは,三重県を中心に関西方面で26店舗のホテル・チェーンやレストランを経営する企業だ。同社は従来,本社と各拠点をフレーム・リレーで結び,宿泊予約システムや顧客情報管理システムを運用していた。

 だが今回,グリーンズはネットワーク構成を全面的に見直し,Windows 2000 ServerをベースとしたVPN(Virtual Private Network)に刷新した(図1[拡大表示])。通信速度は飛躍的に向上し,例えば拠点側の回線速度は従来64kビット/秒だったが,これが1.5M~10Mビット/秒に高速化された。

 ADSLやFTTHなど,安価なインターネット接続サービスを利用したことにより,ネットワークの使用料も大幅に削減できた。その金額は年間で約600万円にも及ぶ。

Notes/Dominoの導入で応答が劣化

 グリーンズがネットワークの再構築に踏み切ったきっかけは,2001年8月に導入したNotes/Domino R5.0だった。顧客サービスの向上を目的に,グループウエアで成功/失敗事例を収集・共有しようと試みたのだ。

 グリーンズはNotes/Dominoの導入を計画する段階から,本社と各拠点を結ぶフレーム・リレー網の通信速度に不安を感じていたという。ところが,この点をシステムの導入を請け負ったコンサルティング会社に相談してみると,「各拠点のNotesクライアントにデータベースのレプリケーション(複製)を置くことで通信速度の問題は回避できる。データの更新は定期的に行えばよい」という回答だった。グリーンズはこの言葉を信じて,フレーム・リレーのままNotes/Dominoを導入することにした。

表1●Windows 2000によるVPN実現のメリット

 しかし,実際にカットオーバーしてみると,心配していた通りレスポンスが悪かった。しかも,レプリケーションの更新処理に時間がかかるため,Notesを起動するのに10分近くかかる使いづらいシステムとなった。また更新処理を自動化せず手動で実行していたため,同一データに対する更新が拠点間で競合することもあった。

 運用の改善策を検討したところ,MetaFrameを使ったシン・クライアント・システムの採用や,VPN専用機によるネットワークの再構築などが候補に挙がった。ただし,シン・クライアント・システムを導入すると,今後のシステム拡張時に制約が生じる懸念があり,VPN専用機では導入費用が高くなる心配があった(表1[拡大表示])。

Win 2000による安価なVPNを選択

 そんなとき,地元のシステム・インテグレータの三愛情報からWindows 2000 ServerをベースにしたVPNの提案を受けた。インターネットVPNは基本的にWindows 2000 Serverだけでも実現可能だが,ファイアウオール機能とキャッシュ・サーバー機能を備えるISA Serverを併用することで,セキュリティとパフォーマンスを向上させることができるという。三愛情報は,高価な専用線を導入できない企業向けにWindowsベースのVPNシステムを構築してきた実績があった。

 グリーンズは早速,導入計画を検討し始めた。まずは最寄りの1拠点を使ってテストを開始した。今年5月の連休前に機材を設置し,連休後の2週間を使って通常の運用と障害テストを実施した。

(茂木 龍太=mogi@nikkeibp.co.jp)

次回(下)へ続く