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ITレポート(ユーザー事例)

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【事例】Win95マシン1500台の更新期を迎え,新標準インフラを1.5カ月で一斉導入---武田薬品工業

2002/06/18

◆ユーザーの課題◆武田薬品工業では,1996年に大量導入したWindows 95搭載のノート・パソコンがリース切れの時期を迎えていた。システム環境の統一(標準化)を重要視する同社は,パソコンを一斉にリプレースする必要があった。

◆選んだ解決策◆サーバーも含めてシステムのインフラを再構築した。従来のNetWareサーバーとWindows 95クライアントの組み合わせからすべてWindows 2000へ変更し,Active Directoryドメインを構築した。新インフラへの移行を急いでいたため,91拠点のサーバーと1500台のノート・パソコンを1.5カ月でリプレースする計画を立てた。

◆結果と評価◆移行作業は10以上の拠点で並行して,急ピッチに進められた。移行当初はトラブルが発生したが,すぐに解決し,その後の作業はスムーズに進んだ。ただし,トラブルを防ぐために,事前のテスト方法に課題が残った。

図1●今回構築したシステム構成図
クライアントのノート・パソコンのリプレースと並行して,NetWareサーバーをWindows 2000 Serverに変更した。
 製薬会社最大手の武田薬品工業は2002年1月,約1500台のパソコンと90台以上のサーバーを一斉に入れ替え,Active Directoryをベースとした新しい情報インフラを構築した。

 リプレースの対象になったのは,主に医師や薬剤師を訪ねて自社の医薬品に関する情報を提供する医薬情報担当者(Medical Representative,以下MR)のWindows 95搭載ノート・パソコン1500台と全国91拠点に配置していたNetWareサーバーである。これらのマシンのリース切れが近づいていたため,すべてをWindows 2000搭載マシンにリプレースした(図1[拡大表示])。

 注目すべき点は2つある。1つは,その導入期間の短さである。武田薬品がWindows 95パソコンを大量導入した1996年には,配布だけで実質3カ月程度かかったという。それに対して,今回はサーバーやネットワーク環境の移行も含めて,1.5カ月という非常に短い期間で完了させたのだ。

 2つ目の注目点は,インフラの標準化を徹底した企業がそれを全面再構築するときの1つの見本になることだ。武田薬品は96年にパソコンを大量導入して以来,パソコンやサーバーのハードウエア,OS,アプリケーション・ソフトの標準化を徹底してきた。これを無視して生じたトラブルの修復費をユーザーの自己負担とするほど徹底している。

 これらの施策により,サポートやユーザー教育などの管理コストをずっと低く抑えることができた。武田薬品は3〜5年に1回,インフラの全面刷新を繰り返していく必要があるが,今回のインフラ刷新は国内でまだ珍しい再構築事例の1つである。

周到な準備と人海戦術で短期間でリプレースを完了

 インフラの再構築に当たり,それを請け負ったCSKに対して武田薬品が提示した要件は,(1)全社一斉に移行を実施することと(2)外回りの多いMRの都合に合わせて柔軟に移行できる体制,スケジュールを組むことだった。MRは通常,ノート・パソコンを持ち歩いて外回りをしており,CSKが当初望んでいた「パソコンを1日預かって環境を移行し,動作確認をしてから返却」という一般的な移行スケジュールは許されなかった。

 ユーザーの要望を満たすために,各拠点でのスケジュールはサーバーのリプレースに1日,クライアント用に2日の合計3日間とした。MRは2日間のうち自分の都合に合わせて3時間ほどノート・パソコンを預ければ,環境を移行した上で新しいマシンが配布される手順とした。

 移行作業は,複数の拠点で同時並行して進められた。最初は10拠点で並行して作業を始め,移行作業の手順を改善しながら徐々に数を増やし,最終的には17拠点に同時並行して移行作業を展開していった。

 移行作業を進めている1.5カ月の間,情報システム部門がある本社(大阪)と今回の移行作業の主体となる医薬営業本部営業企画部(東京本社)にCSKのエンジニアがコントロール役として常時6人待機し,各拠点での作業をバックアップした。

図2●リプレース作業のスケジュール
実際の移行作業は1.5カ月で完了させた。拠点ごとに,ノート・パソコンのリプレースに2日を当て,ユーザーの都合に合わせて対応できる体制にした。

 一般に,クライアント・パソコンにはユーザーが独自にアプリケーションを追加したり設定を変更したりすることが多く,移行がスムーズにいかないケースが多い。しかし,武田薬品は標準化を徹底し,定期的にアプリケーションのアップグレードを実施していたため,この点でトラブルにつながることはなかった。

回線速度の制約でグループ・ポリシーが実行されず

 全体としてはスケジュール通りに,91拠点,1500台のノート・パソコンを1.5カ月で効率よくリプレースできた(図2[拡大表示])。しかし,移行作業を開始した初日に,ヒヤッとするトラブルが発生した。新しいノート・パソコンからActive Directoryドメインにログオンするとき,グループ・ポリシーの設定の不備によってログオンできなくなってしまったのだ。

 Active Directoryドメインにログオンできないと,移行作業の一部を完了させられない。パソコンを預けたMRから「早くパソコンを返してほしい」という苦情が相次いだという。

図3●グループ・ポリシーが反映されない
ドメイン・コントローラと拠点にあるサーバーは,128kビット/秒のフレーム・リレーで接続されている。回線速度が遅い(500kビット/秒以下)と一部のグループ・ポリシーは反映されないため,クライアント・パソコンにダウンロードされるはずのログオン・スクリプトが実際にはダウンロードされなかった。そのため,ドメインにログオンできず,移行作業がストップしてしまった。

 具体的には,ログオン時にスクリプトを実行させるグループ・ポリシー・オブジェクト(GPO)が動作しなかったために起こる現象だった(図3[拡大表示])。ドメイン・コントローラがある本社と支店/営業所間がデータ転送速度128kビット/秒の比較的遅い回線で結ばれていたことに起因していた。

 Windows 2000では,クライアント・マシンがドメイン・コントローラ(DC)との接続を確立したあと,pingコマンドで回線速度を計測する。グループ・ポリシーのデフォルト設定では,500kビット/秒以下だと低速リンクと判断して,一部のGPOを実行しない仕様になっている。そのため,DCからログオン・スクリプトがダウンロードされず,Active Directoryドメインにログオンできなくなってしまった。「不具合が起った当初はどうなることかと思ったが,すぐに原因を特定できたので,ことなきを得た。その後の作業は順調にいった」(武田薬品工業 医薬営業本部企画グループの木村資正主席部員)。

 導入作業に先だって,事前にテスト環境を作って検証していたが,LAN環境でのテストだったために問題を見付けられなかった。CSKネットサービス事業本部NS技術部の角野正札部門長は,「いくつかの拠点で先行導入して検証をしたかったが,ユーザーが短期間の一斉導入を要望していたので実現できなかった」という。

Windows XPは見えていたが,大きな仕様の変更はなしと判断

 今回のリプレースを実施した理由の1つに,OSのサポート切れが挙げられる。Windows 95は2001年12月末を過ぎると多くのサポートが受けられなくなる非サポート・フェーズに入るので,パソコンのTCO(総所有コスト)を重視して環境の標準化に力を入れている同社にとっては不安材料だった。

 OSの選択に当たっては,今回の計画を検討した2001年半ばには既にWindows XPの概要やスケジュールが見えていた。しかし,同社が重視したActive Directoryやセキュリティについては大きな仕様の変更がないことと,サーバー用OS(Windows.NET Server)の発売はさらに遅くなることが分かっていた。特に計画を延期してまで待つ必要はないと判断して,Windows 2000の導入を決めた。

 しかし,マイクロソフトはOSのサポートを最低4年としており,最短で2004年3月31日にWindows 2000も非サポート・フェーズに移行する。3年後(2005年初め)にパソコンを再びリプレースするとしても,それまでにサポートを受けられない期間が生じる可能性がある。インフラを数年おきに全面再構築する企業は,この点に十分注意しなければならない。

(茂木 龍太=mogi@nikkeibp.co.jp)

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