■オフィス用品のカタログ販売をしているビズネットは,電子メールを使った新しい受注システムをWindows 2000で構築した。
■顧客とのやり取りや基幹システムとのインターフェースの部分で市販製品を活用し,独自に開発部分を極力少なくすることで1カ月半という短期間でシステムを完成させた。
■XMLを使うことで,人の作業を極力削減しながら,ユーザーに合わせたカスタマイズや将来の拡張も簡単にしている。

図1●ビズネットのWebサイト
 オフィス用品のカタログ販売をしているビズネットは,インターネット上の電子メールを使った受注システム「Xmail」を新たに構築した。そのプラットフォームにはWindows 2000 Server を採用している。Windows 2000の出荷後まもない4月にシステムの構築を開始したが,市販ソフトなどを活用することで,わずか1カ月半という短期間でシステムをカットオーバーさせた。

注文窓口を増やすためにメールを活用

 ビズネットは,プラスの事業部を独立させた新会社で,文具事務用品をはじめ電球といった日用品など,オフィスで使うほとんどのものをカタログを通じて販売している(図1[拡大表示])。カタログを見て注文すると,当日もしくは翌日までに品物を各部署に直接配送するというサービスを武器に,現在までに14万2000ユーザーを獲得している。

 ビズネットは,同じくプラスが出資しているアスクルとは異なり,主に中・大規模な企業をターゲットとしてビジネスを展開している。そのため,精算方式やカタログなどを各企業に合わせた形に,ある程度カスタマイズできるようにしているといったサービス面で違いがある。

 そんなビズネットで課題となっているのが受注方法の種類であった。これまでも,メーンとなるFAXに加え,WebやCD-ROM,EDI*(Electrical Data Interchange)からオンラインで注文のデータを受け取れるようにしていた。しかし,「セキュリティの観点からWebなどインターネットの利用に制約を加えている企業が多かった」(経営戦略室チームリーダーの疋田雅昭氏)。

 このため,これまで用意していた受注手段だけでは必ずしも万全ではなく,「もっとも多くのユーザーが使える通信手段は何かと考えたら電子メールだった」(疋田氏)ため,電子メールを使った受注システムの構築を決めた。

 そこで,具体的に受注システムの構築を計画。顧客の操作するユーザー・インターフェースとして広く使われているExcelを採用した。これにより,ユーザーが使い慣れた環境で操作できると同時に,計算機能を活用できると考えたからだ。さらに,「新しい製品に興味があった」(IT本部IT企画開発チームの清水秀隆氏)ことから,サーバーのプラットフォームとしてはWindows 2000を導入することにした。

AS/400の基幹システムと直接に連携

図2●ビズネットがWindows 2000 Serverで構築した新受発注システム「Xmail」の構成
XMLデータをメールに添付して,発注や受注確認の情報を基幹システムとやり取りする。商品マスタの更新もXMLで送付する。
 今回のシステムは図2[拡大表示]の構成になっている。顧客にはあらかじめExcelのマクロ*を配布してインストールしてもらう。そのマクロの上で,顧客が商品コードを入力すると,商品名が自動入力される。数量を入力し注文票が完成すると,その内容をXML(Extensible Markup Language)*に変換,電子メールに添付して送信する(図3[拡大表示])。サーバーはメール・サーバーを経由して,そのXMLデータを受け取り受注処理を実行する。

 今回の受注処理システムでは,日本アイ・ビー・エムのオフコンAS/400上にすでに存在している販売管理や在庫管理などの基幹システムと同期型で直接連携している。顧客からの注文を受けると,まずは基幹システムのデータベースを参照して在庫があることを確認。在庫が確認できた場合は出荷と引き当ての処理をしてから,顧客に受注確認のメールを返信する。もし在庫がなかった場合は,その旨を電話で連絡する。このため,受注しておきながら後で在庫がないということは発生しない。

わずか1カ月半でシステムを構築

図3●Xmailの商品発注画面
Excelのマクロで作成しており,注文コードから品名を自動入力したり,数量を入力すると合計金額が自動的に表示するようになっている。
 新システムの検討を始めたのは今年の3月になってから。4月に入って実際のシステム構築を開始し,5月21日にはシステムをカットオーバーさせた。

 このように,実質わずか1カ月半で構築できたのは,市販のソフトウエアを活用してソフトウエアの開発負荷を極力減らしたことが大きい。たとえば,顧客の入力環境側にiMaker Express for Excel,それを受け取るサーバー側のソフトにiMessengerを使っている。どちらもインフォテリアの市販製品で,これらを使うことでインターネット上で受注データをやり取りする部分はプログラミングせずにクリアできた。

 具体的には,iMaker Express for ExcelはExcelで作成したワークシートをXMLデータとして電子メールで送付する。サーバーのiMessengerはメール・ボックスを一定時間ごとに監視し,メールが着信していると,その中からXMLデータを抽出し,あらかじめ定義した外部のアプリケーションに渡すことができる。

 さらに,基幹システムと連携する部分には日本アイ・ビー・エムのWebSphere Application Serverを採用。このWebSphere Application Serverには,XMLデータの解析・生成や,JDBC(Java Database Connectivity)*インターフェース経由での外部データベース接続といった今回の新システムで必要な機能が揃っている。このため,Windows 2000を使ったサーバー側での開発は必要最小限で済んだ。

顧客とのやり取りにXMLを活用

 新システムでいちばん気を使ったのは,Excelのマクロで開発した顧客のデータ入力部分。というのも,ビズネットが顧客としているような規模の大きな企業では「1万2000アイテムの中から選べる品を制限するなど,メニューそのものをカスタマイズしたいというニーズがある」(疋田氏)からだ。かといって,ユーザー個別のデータをオペレータが入力するといった人手を割くことはなるべく避けたい。現在でも多い日には1日に約1万件の受注があるが,このうち「1%が利用したとしてもすでに1人の担当者では対応できなくなってしまう」(疋田氏)。

 しかし,XMLを採用することで,この問題も解決できた。XMLでは,単なる数字の羅列ではなく意味や属性をデータに付加できるため,ユーザーによって項目の数や順番が変わってもサーバー側で自動的に処理でき,人手を介する必要はない。「CSVならば仕様を変える度にサーバー側に手を入れなければならないだろう」(清水氏)と,XMLを採用した理由を語る。

 XMLが役立つのは受注の時ばかりではない。ビズネット側からも受注内容の確認情報や,商品カタログの更新情報もXMLデータとしてメールに添付して送っている。顧客は,受け取ったXMLを読み込むことでデータを更新できる(図4[拡大表示])。ちなみに,今回のシステムでは日本アイ・ビー・エムのXMLパーサーであるXML4Jを使ってDOM(Document Object Model)に準拠したデータ形式を使った。

NT感覚でWindows 2000を管理

図4●発注した内容の確認情報や商品マスタの更新情報もXMLデータとしてメールでユーザーに送付する
 ビズネットでは,これまでもWebサーバーなどでWindows NT Server 4.0を利用した経験があった。Windows 2000 Serverは,今回の新システムが初めてだが,「現時点ではNT Serverと同じ感覚で扱えている」(清水氏)と,特別な苦労はせずにNTの経験を生かして管理できている。

 現在のところはまだサービスを開始したばかりなため,それまでシステム開発に利用していたサーバー1台を転用して使っている。これはユーザーが増えてくれば増設していく予定である。

 顧客とのメールのやり取りにはExchange Server 5.5を導入している。これも将来的には「ワークフローや見積もり作成などの業務に拡張することを考えている」(疋田氏)と語る。 また,現在は前述したように基幹システムのデータベースを直接操作しているが,将来はWindows 2000 Server上にSQL Serverを搭載し,顧客情報を個別に管理できるようにしたいと考えている。これにより,認証のためのキー・ファイルの発行などを独自に処理できるようにする。

(根本 浩之=nemoto@nikkeibp.co.jp)